ホンダの「V8エンジン」搭載モデルに乗ることができた。写真を見て「いやいや、NSXはV6でしょ?」と思われた方は、その隣を見ていただきたい。こちらの縦長の物体、実はV8エンジンを搭載するホンダ最新の船外機「BF350」なのだ。これを積んだ船に乗ってきた。
ホンダのマリン事業は60周年! 状況は?
ホンダが「船外機」(船の外に取り付けるエンジン)を初めて発売したのは1964年のこと。同社の「マリン事業」は今年で60周年を迎えた。
船外機の累計生産台数は2024年10月時点で219万台。現在は2馬力から350馬力まで計25のモデルを取り扱っている。
一般人が乗れる唯一のホンダ謹製V8エンジン
船外機の市場では大馬力化と低燃費化のニーズが高まっている。それを受けてホンダは、2024年12月にV型8気筒エンジン搭載の大型船外機「BF350」を発売した。
ホンダにV8エンジンを搭載するクルマはない。歴史を振り返っても、一時期の「F1」にV8エンジン搭載マシンがあったくらいだ。つまり、BF350は一般人が乗れる唯一のホンダ製V8エンジン、ということになる。もちろん、乗れるといってもクルマではなく船なのだが……。
V8エンジン搭載の船に試乗! V6搭載モデルと比べると…
ホンダのV8エンジンはどんな乗り味なのか。250馬力を発揮する3.6L V6エンジン搭載の「BF250」と乗り比べてみると、海(船)の素人でもはっきりとわかるほど静粛性が向上しており、揺れも少ないように感じた。
クルマはどんどん電動化していきそうな情勢だが、船が受ける水の抵抗は舗装された道路を走るクルマの比ではないらしく、観光地をゆっくりと航行する小規模な船舶でもない限り、動力源をバッテリーとモーターに置き換えるのは至難の業だという。つまり船の世界では、今後もまだまだ内燃機関が活躍することになる。クルマについては2040年までに新車販売の全てを電気自動車(EV)/燃料電池自動車(FCEV)に置き換えると「脱エンジン宣言」を行ったホンダだが、「エンジン屋」としての技術は海の上で残り続けていくのかもしれない。
ホンダでは今後、BF350の技術を水平展開し、2030年までに新モデルを順次投入していく予定だ。(藤田真吾)