Core UltraになったタフネスPC「TOUGHBOOK FZ-G2N」の実機をアレコレ試して分かったこと

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2024年11月29日 17:11  ITmedia PC USER

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10.1型WindowsタブレットとしてTOUGHBOOKラインアップを支える新モデル「TOUGHBOOK FZ-G2N」は、拡張性と野外での使い勝手を強化したのが特徴だ

 パナソニック コネクト(以下、パナソニック)のタフネスPC「TOUGHBOOK」シリーズに加わった「FZ-G2N」は、10.1型ディスプレイを搭載した着脱タイプの2in1 PCだ。TOUGHBOOKは複数のモデルを展開しているが、FZ-G2は「CF-33」と同様、Windowsタブレットの本体とキーボードベースを組み合わせた形態だ。


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●フィールドワークだからこそ着脱式の2in1 PCが役立つ


 Windows PCの2in1は、ディスプレイが360度開くフリップタイプとキーボードとPC本体が分離する着脱式がほとんどだ(ディスプレイが垂直軸を中心に回転するタイプはほとんど見なくなった)。


 製品点数的には着脱式が多いが、その場合でもキーボードベースがディスプレイカバー“シート”のように薄く、軽量である代わりに本体を支えることはできず、PC本体の背面に仕込んだキックスタンドで自身を支えるモデルが多い。


 この場合、キーボードを含めた重さは軽くできるものの、移動中の利用スタイル、特に電車で座った状況やテーブルのないカフェの座席で利用する状況で、膝にのせて使う場合に本体が安定しないことが多い。


 このようなとき、キーボードベースがPC本体を支えるスタンドとして機能するモデルは、クラムシェルのノートPCと同様に安定して使えるが、ある程度の強度を持たせたヒンジ機構とタブレット本体を載せたスタンドとして安定できる重さ(軽いと見やすい角度に開いた状態で背面側にひっくり返ってしまう)を持たせる必要があるため、クラムシェルのノートPCとしては重くなってしまう傾向がある。


 これは筆者の個人的見解ではあるもの、以上のような特性を思うとき、「2in1 PCって使いにくい」と感じてしまうのが正直なところではある。


 しかし、これがTOUGHBOOKとなると話は変わってくる。フィールドワークで使う状況もPCとしてキーボードを必要とする状況もそれぞれに多く、かつ、現場に持ち込める機材の数が限られる場合、(経験を基にした個人的意見としては)重さを二の次にしても快適にタイプできる安定性を優先することになる。


 なお、TOUGHBOOKの着脱式2in1 PCラインアップにはFZ-G2Nの他に12型でデタッチャブル式のCF-33もあるが、タブレットとしての現実的な取り回しを考えるとタブレット本体が2kgを切るFZ-G2Nを選択することになるだろう。ただし、FZ-G2Nのキーボードベースはオプション扱いなので、導入コストの(心理的な)問題は出てくる。


●2024年のTOUGHBOOKはやっぱりCore Ultraでなくちゃ


 今回評価するFZ-G2の最新モデル「FZ-G2N」では、従来モデル「FZ-G2E」(2023年7月発表)から次の点が強化された。


・CPU:第12世代CoreプロセッサのCore i5-1245U→Core Ultra 5 135U


・メモリ:LPDDR4x SDRAM 8GB→LPDDR5x SDRAM 16GBに


・リアカメラ:有効画素約800万画素15fps→約1260万画素(静止画)/約940万画素(動画)30fps対応。F値も従来の2.4→1.8に(フロントカメラは約200万画素/30fps)


・Bluetooth:v5.1→v5.3


 CPUとメモリの変更は処理能力に直結する大きな変更だ。従来モデルは第12世代Coreプロセッサシリーズだったが、新モデルではCore Ultra(シリーズ1)となる。世代でいうと「2世代前?」とそれほど時間を感じさせないのに、「従来モデルはAlder Lake(開発コード名)だったのが新モデルではMeteor Lake(同)になった」というと不思議なもので「お、けっこう間が空いたのね」と不思議に感じてしまう。


 それはともかく、Core Ultra(シリーズ1)とそれ以前のCoreプロセッサシリーズとではCPU内部の構造がだいぶ進化している。処理能力重視のPコアと省電力を重視したEコアが第12世代と同様ながら、Core Ultra(シリーズ1)からは低消費電力動作により特化した低電圧(LP)コアが追加され、消費電力の改善とそれを起因とするバッテリー駆動時間の延長を実現したという。


 また、PコアもEコアも1クロック当たりの実行命令数が向上するなど処理能力が高まっている。


●“UltraなTOUGHBOOK”はどこまで使えるのか


 とはいえ、従来モデルからCPUの世代は更新されたものの、それは2024年第3四半期における最新世代(Core Ultra V200シリーズ/開発コード名:Lunar Lake)ではない。なお、処理能力に関するシステム構成を確認してみると、メモリの容量は16GB(LPDDR5-6400)、ストレージは512GBのSSDを採用している。接続バスはPCI Express 4.0 x4(NVM Express 1.4)で、レビューした評価用機材には、Phison Electronicsの「PHPML512GEPTK-TB-PM0001」が搭載されていた。


 そのようなFZ-G2Nの処理能力を、ベンチマークテストでチェックしてみよう。今回評価機材の構成は以下の通りだ。


・CPU:Core Ultra 5 135U(12コア14スレッド/vPro対応)


・メモリ:16GB


・ストレージ:512GB NVMe SSD


・ディスプレイ:1920×1200ピクセル(タッチ操作対応)


・OS:Windows 11 Pro


PCMark 10


 PCの総合性能をチェックする「PCMark 10」の結果は以下の通りとなった。


・総合:5731ポイント


・Essentials(日常利用):1万50ポイント


・Productivity(仕事利用):7702ポイント


・Digital Content Creation(コンテンツ作成):6602ポイント


 本機が採用するCPUは、TDP 15Wの省電力を重視したCore i5シリーズのミドルレンジクラスだが、それでも、2023年に登場した省電力タイプの第12世代Core i5搭載ノートPCを上回るスコアを出している。TOUGHBOOKシリーズがカバーする用途を考えると、必要十分な性能を備えているといえる。


CINEBENCH 2024


 レンダリングを通してCPUの性能をチェックする「CINEBENCH 2024」では、マルチスレッドのスコアが439ポイント、シングルスレッドのスコアが93ポイントとなった。


 こちらを第12世代Coreプロセッサファミリーと比較すると、その上位クラスで、かつ処理能力を重視した“P”タイプのCore i7-1280Pのスコアを上回っている。


CrystalDiskMark 8.0.5


 最後に、内蔵ストレージの性能を「CrystalDiskMark 8.0.5」でチェックした。


 シーケンシャル(SEQ1M Q8T1)の読み出しは毎秒3524.97MB、書き込みは3157.81MB、ランダム(RND4K Q32T1)の読み出しは毎秒419.71MB、書き込みは356.67MBとなった。


 PCI Express 4.0 x4接続のSSDとしては、ミドルレンジモデルなのを考えると妥当なスコアといえるだろう。


 バッテリー駆動時間は、従来モデルのFZ-G2Eでは標準バッテリーで動画再生時が約7時間、アイドル状態で約18時間だったのが、FZ-G2Nの標準バッテリー(50Wh)ではそれぞれ約9時間と約20時間に延びている。


 また、FZ-G2Nで大容量バッテリー(68Wh)を搭載した状態では動画再生が約12時間、アイドル状態で約27.5時間の連続動作が可能だ。なお、キーボードベースを装着した場合、標準バッテリーで動画再生時もアイドル状態でも30分駆動時間が短くなるという(いずれもJEITAバッテリ動作時間測定法Ver.3.0)。


 今回の評価では、実際のバッテリー駆動時間を調べるために標準バッテリーの構成でキーボードベースを装着した状態で、電源プランをバランス、ディスプレイ輝度を10段階の下から5段階にセットしてPCMark 10のBattery TestのModern Officeで測定したところ、6時間5分(Performance:5424)となった。


●数値や規格で表せないTOUGHBOOKだけが持つ価値


 FZ-G2シリーズの“2024年モデル”としては、ここまで紹介してきたCPUとシステムメモリの強化、それに伴うバッテリー駆動時間の延長とリアカメラの有効画素数の増加が主な変化となる。それ以外の部分においては、従来のFZ-G2シリーズが有していた「フィールドワークに求められる使い勝手を十分に取り入れた堅牢タブレット」の特性を継承している。


 リアカメラの強化については、フィールドワークで現場の様子をデジタルカメラで撮影して、作業検討や業務報告、さらには現場からのリアルタイム報告にWeb会議ツールを利活用するケースが増えている。


 このとき、今回のモデルで強化されたリアカメラからの画像は現場の状況を正確に伝えるために非常に有用といえる。また、F値が1.8と“明るいレンズ”となったことで、フィールドワークでありがちな「日が十分差さなくて暗めの写真が量産される」といった事態も減るはずだ。


 フィールドワークの特殊事情という意味では、大音量スピーカーも意外な必須アイテムといえる。TOUGHBOOKは、工場であったりプラントであったりと、大きな騒音が発生している現場で活躍することも多い。


 加えて、現場とバックアップオフィス(サポート拠点やコントロールセンター、開発室など)とのやりとりを音声チャットやビデオチャットで行うことも増えている。そのような現場だからこそ大音量スピーカーは必須条件といえる(本機の音圧レベルは88dB)。


 本体に実装するインタフェースも、従来モデルと同様だ。使用していないときはロック機構を備えたカバーで多い防じん/防水を維持する。また、観測機器や測定機器、非接触タイプセンサーなど多種多様なデバイスの利用が想定されることもあって、モジュールタイプのインタフェースを必要に応じて組み込むことも可能だ。


 パナソニックでは、デバイスの改良や進化に伴って対応インタフェース規格が変更してもモジュールを交換すれば本体の買い替えは発生しないとそのメリットを訴求している。


 TOUGHBOOKの存在理由でもある頑丈さについては「MIL-STD-810H準拠の耐衝撃性能」「IP65準拠の防じん/防水性能」といった規格的な基準は当然として、「衝撃を受けてもフラットケーブルコネクターが抜けないように(製造過程では手間のかかる)バックフリック式コネクターを導入する」「衝撃を逃がして破損を防ぐために抜き差し部分を固定しないフローティングコネクター構造」など、実情を知っているからこそ実装できる頑丈PCのノウハウを惜しみなく投入している。


 数値や規格に着目しがちなPCの評価だが、それだけでなく、現場を熟知しているからこその信頼を重視するユーザーにとって、FZ-G2Nは頼りになる道具であり続けるはずだ。


 今回は標準構成のモデル(FZ-G2NBMBXAJ/直販価格は33万6490円〜)を取り上げたが、他にもワイヤレスWAN(LTE)モデルや、LTE/5G両対応ワイヤレスWANモデル(2025年1月〜3月に発売予定)も用意されているので、用途に応じて選ぶといいだろう。



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