社会人野球マネジャーらが輪島に結集 被災地支援に懸ける思い

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2024年11月29日 17:16  毎日新聞

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仮設住宅の被災者にスーパーもとやの仮オープンのチラシを手渡す西田健志さん(右)=石川県輪島市町野町で2024年11月28日、青山郁子撮影

 能登半島地震に加え、9月の豪雨災害でも被災した石川県輪島市で28日、社会人野球のマネジャーら約30人がボランティア活動をした。その中心となったのが、地震被災地の一つ・富山県高岡市に本拠地を置く伏木海陸運送の西田健志(けんし)・マネジャー兼外野手(37)だ。東日本大震災(2011年3月)でも、当時の所属企業があった宮城県でボランティアを経験。「少しでも復興の力になりたい」と仲間とともに被災者を励ました。


 能登半島北部の石川県輪島市町野町粟蔵地区。西田さんらは、9月の豪雨災害で休業を余儀なくされ、30日に仮オープンする町唯一のスーパーマーケット「スーパーもとや」に集まった。周辺には、地震で倒壊したままの家屋も残っている。


 同店は震災当日から開店して被災者を力づけたが、9月の豪雨で再び被災、流木が店のガラスを突き破り、店内が泥で覆われた。地震後、初めて能登入りした西田さんは「思った以上に復興が進んでいない。今後も社会人野球関係者が継続的に力になれたら」と話す。


「人間ってすごい」


 西田さんは、被災地支援に特別な思いがある。熊本県八代市出身で、九州学院高(熊本市)、横浜商科大を経て10年に社会人野球のバイタルネット(新潟市)に入社。2年目に向けたキャンプ目前に東日本大震災が発生した。


 宮城県名取市に同社の医薬品を扱う物流基地があったことから、3日後に監督を含めて部員4人で現地に向かい、停電の中、医薬品の緊急配布や支援物資の配給などにあたった。寝泊まりした社の保養所(同県富谷市)には温泉があったため、風呂を求めて被災者が連日長蛇の列をなした。結局、被災地には約1週間ずつ2回赴いた。「被災者はつらい経験をしたにもかかわらず、元気で明るくこちらを気遣ってくれた。人間ってすごいと感じた」


 熊本地震(16年4月)では、自宅は無事だったが熊本市内の友人宅が被災した。そして伏木海陸運送に移籍して4年目の今年、能登半島地震が発生。震度5強を観測した高岡市の伏木地区周辺は大規模な液状化現象が発生し、同社付近の道路や取引先なども地割れなどで大きな被害を受けた。実家に帰省中だった西田さんは、3日に高岡市に戻りその惨状に息をのんだ。


 今回の輪島ボランティアは、27日に金沢市で開催されたJABA全国マネジャー会議がきっかけだった。事前打ち合わせで、他のマネジャーと「せっかく石川県に集まるのだから、何か被災地の力になれないか」と現地入りを決め、参加者を募集。28日は古巣のバイタルネットをはじめ全国のチームマネジャーが協力してくれた。


 当初は駐車場の泥かきを予定していたが、スーパー側の要望もあり仮設住宅などへのチラシ配布などに変更した。スーパー社長の本谷一知さん(46)は大学まで投手として活躍、次男も高校球児だったという野球一家だ。ボランティア活動を見守り「野球の神様っているんですね」と感謝。西田さんは「また被災地に来て、今度は少年野球教室など野球で元気を届けたい」と話した。【青山郁子】



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