世界のどこかが朝を迎えるとき、また別のどこかでは夜を迎えているーーー。旅に出ると、そんなあたりまえのことに気づかされるものです。
一段と寒くなってきた今日このごろ、出かけるのが億劫ならば、ソファに座ったまま世界旅行へ出かけませんか? 朝から夜へ、そして夜から朝へ。先日逝去された谷川俊太郎さんの代表作『朝のリレー』を彷彿とさせる、静かで満ち足りた78分間に身をゆだねましょう。
毎週金曜は各配信サイトで観られるオススメ作品を紹介する日。
今週もよく頑張った……週末はおうちでゴロゴロしながら、ドキュメンタリー映画『場所はいつも旅先だった』を観て、カウチポテトになっちゃお〜!
【あらすじ】
旅の始まりの地はアメリカ・サンフランシスコ。主人公・Yataroが出歩くのは、決まって早朝か深夜です。
|
|
Yataroが初めてサンフランシスコを訪れたのは18歳のとき。少しだけ大人になったいま、再びこの地を訪れ、しんと静まり返った朝7時のカフェでカリカリのベーコンと目玉焼きの朝食を楽しみました。
次に外に出たのは、夜明け前。レインボーフラッグを掲げる24時間営業のダイナーでは、仲の良い友人だという若者と老人が政治の話をしています。我が家のように落ち着けるこの場所には、今日もさまざまな人々がやってきては羽を休めているようです。
【ココが見どころ!】
<その1:深夜〜早朝の世界を旅するドキュメンタリー>
本作は、主人公・Yataroの視点をとおして世界5カ国の早朝と深夜を旅していくドキュメンタリー。
ドラァグ・クイーンのヴァネッサと過ごすサンフランシスコの夜、スリランカの小さな町・シギリアの早朝に吹く心地よい風、夜勤明けの警察官がコーヒーをすするメルボルンの朝……どの時間帯も夢と現実のあわいのように美しくきらめいています。
旅行先にもよるかと思いますが、外国で早朝〜深夜に出歩く機会ってなかなかないと思うので、新鮮な気分を味わえること間違いなし! よく見知った場所であったとしても、知らない一面を垣間見たような気持ちになれることでしょう。
|
|
<その2:ゆったりとした時間の流れが心地よい…!>
わたしたちの知らないところで、だれかの朝がはじまり、だれかの夜が終わっている。そうしたことをしみじみと感じさせてくれる本作は、わずか78分間とは思えないほど、ゆったりとした時間が流れています。
海外旅行だからといって、せかせかと予定を決めることもなく、ただ思いつくまま時を過ごす。そんなひとときがこの上なく贅沢に思えて、おのずと満ち足りた気分になるのです。
映像を眺めているだけで、風のにおいや温度まで伝わってくるかのよう! Yataro=自分自身として旅を楽しめるところが本作における最大の魅力といえるかもしれません。
<その3:主人公の声を担当するのはあの人! 監督もすごい>
本作のもうひとつの魅力は、主人公であり旅のガイドでもあるYataroの声。耳に心地よいあたたかな声を聴いているだけで、自然と安心感を覚えます。
実はですね、Yataroの声を担当しているのはあの小林賢太郎(こばやし けんたろう)さんなんですよ。
|
|
劇作家・演出家として活躍している小林さんは、元ラーメンズとしてもおなじみ。どこかで聞いたことがある声だとは思っていたけれど、今なおカリスマ的な人気を誇る小林さんだったとは〜〜!!
ちなみに、本作の監督を務めているのは『暮しの手帖』元編集長の松浦弥太郎(まつうら やたろう)さんです。松浦さんの自伝的エッセイ集を自ら監督して映画化した作品らしく、本作に関わっている人すべてが「通好み」って感じがするわ……!!
【どこからでも「旅」を再開できる】
フィクションとノンフィクションが交錯するかのように進行してゆく『場所はいつも旅先だった』。車窓に流れる景色を眺めるように楽しめるので、何度もリピートしたくなるし、飽きることなく延々と観ていられます。
最初から最後までずっと心地よい空気感ゆえに、うとうとする瞬間もあることでしょう。でも、眠ってしまってもいいんです。目が覚めたら、またそこから旅を始めましょ。
■今回ご紹介した作品
『場所はいつも旅先だった』
Amazonプライム・ビデオなどで配信中
※カウチポテトとは:ソファや寝椅子でくつろいでポテトチップをかじりながらテレビやビデオを見て過ごすようなライフスタイルのこと。
参照元:映画『場所はいつも旅先だった』公式サイト
執筆:田端あんじ (c)Pouch
Photo:企画・製作/配給・宣伝 株式会社ポルトレ