1億円売れた“宇宙服素材”布団 厚さ「3センチ」で真冬越せる性能 どう開発した?

0

2024年11月30日 08:20  ITmedia ビジネスオンライン

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ITmedia ビジネスオンライン

宇宙服にも使われる断熱素材「エアロゲル」を採用

 冬の到来とともに、私たちの生活に「寒さ」という切実な課題が立ちはだかっています。この時期ならではの市場動向や消費者ニーズの変化に、経営者やマーケティング、商品開発担当の注目が集まっているのではないでしょうか。


【画像】たった3センチであたたかい。モリリンの掛布団を見る(全4枚)


 今回は、「寒さ」や「睡眠」という身近な課題に革新をもたらした事例をご紹介しながら、ヒット商品の背景にある考え方をひもといていきます。


 寒い冬の夜は、羽毛布団に毛布を重ねて寝るのが一般的です。しかし、分厚い寝具は収納スペースを圧迫し、重いと寝苦しさの原因にもなります。この「かさばる」「重い」という課題に挑んだのが、繊維商社モリリン(愛知県一宮市)の掛け布団です。


 この商品は、宇宙服にも使われる断熱素材「エアロゲル」を採用し、たった3センチの薄さで高い保温力を実現しています。「羽毛布団+毛布+カバー」以上の暖かさを1枚で提供し、自宅で洗濯できる手軽さも備え、省スペースを好む現代のライフスタイルに適応しています。発売初年度から反響を呼び、Makuakeでは過去3年連続で売り上げ1億円を超えました。


●著者プロフィール:松岡宏治


株式会社マクアケ プロジェクト推進本部 執行役員


1992年生まれ。2015年早稲田大学卒業後、ITベンチャー企業を経て、2016年に株式会社マクアケへジョイン。マクアケ関西支社二人目の社員として、立ち上げに参画し事業拡大に貢献。その後福岡、名古屋、広島、金沢に拠点を立ち上げ、全地方拠点の管轄を務める。現在は東京本社でプロジェクト推進本部全体の管轄をしつつ、自らも各地方へ足を運んでいる。過去、国内メーカーのプロジェクトを中心に2000件以上のプロジェクトを担当。


●生活者の課題に寄り添う商品開発


 寒さや睡眠に対する悩みは、誰もが抱える身近な課題です。モリリンはこれらに着目し、単なる「暖かい布団」ではなく、現代のライフスタイルに合わせたソリューションを提示しました。


 注目すべきは、製品力だけではなく「これが欲しかった」と思わせる明確な訴求ポイントを設けた点です。「収納に困らない」「洗濯機で洗える」「軽くて暖かい」といった具体的なベネフィットが、従来の冬用布団のイメージを刷新し、購入を後押ししました。


 実際、応援コメント欄には「マンションの収納スペースが限られているので助かる」「軽くて扱いやすいのに暖かい」といったコメントが多く寄せられています。これは、単に暖かさを提供するだけでなく、都市部の住環境に合わせた実用性を重視した商品設計が、現代の生活者の課題解決につながったといえるでしょう。


●「テクノロジー×生活者目線」が生むイノベーション


 モリリンには繊維商社として積み重ねてきた知見と、先端素材エアロゲルにアクセスできるネットワークがありました。しかし、それだけではヒット商品は生まれません。成功の鍵は、「生活者の日々の暮らしをどう豊かにするか」という視点を徹底して追求した点にあります。


 どんなに優れたテクノロジーも、それを使う人々の感情や日常に寄り添わなければ、真価を発揮できません。商品開発において重要なのは、業界の最前線に触れつつ、生活者としての目線を失わないことです。これにより、単なる技術の紹介にとどまらず、消費者の「面倒」や「不便」を解決する製品へと昇華させることができます。


 これらを踏まえて、商品開発の際には次の3つのステップを意識すると良いでしょう。


1. 日常の不満や不便を見逃さず記録する:生活者の視点で具体的な課題を洗い出す。


2. 最新テクノロジーをキャッチアップする:最新のテクノロジーを常に学び、生活者目線でその価値を理解する。


3. 1で洗い出した課題の中から、2でキャッチアップしたテクノロジーで解決できる可能性のあるものを選び出し、商品企画につなげる。


 モリリンの商品企画は、こうした日々の取り組みがあってこそ実現したといえるでしょう。



    ニュース設定