アルゼンチンメディアの『TyCスポーツ』などは11月30日、コパ・リベルタドーレス2024の得点王に輝き、チームの優勝に貢献したボタフォゴ所属のブラジル人FWジュニオール・サントスの経歴を紹介した。
現在30歳のJ・サントスは、かつてJリーグでプレーし、柏レイソル、横浜F・マリノス、サンフレッチェ広島に所属していた。2022シーズン途中で広島を離れて母国に復帰。2023年3月にボタフォゴへ完全移籍すると、主力として躍動した。11月30日に行われたコパ・リベルタドーレス決勝ではゴールを決めて優勝に貢献。大会通算10ゴールで得点王にも輝いた。
ブラジルメディアの『グローボ・エスポルチ』によると、J・サントスはブラジルのバイーア州で生まれ育ったが、20歳でレンガ職人の助手として働くために故郷から約100キロメートル離れたサルバドール市に移住。スーパーのレジ打ち係としても働いたという。
J・サントスは当時を振り返り、「田舎の出身だと、自分がサッカー選手になれるなんて、想像すらできないんだ。それはとても遠い話で、テレビの中だけのことだった」と説明し、「サルバドールに行ってアマチュアとしてプレーを始め、1試合の出場で50レアル(現在のレートで約1300円)を手にした。その後、非常に良いプレーを見せて、名を上げることができたから、1試合あたり300レアル(約7500円)を稼げるようになったんだ」と、レンガ職人助手などの仕事の合間にサッカーで副収入を得られるようになったことを同メディアで明かした。
その後、「アマチュアサッカー界のスター」になったJ・サントスは、レンガ職人の仕事を辞めることになる。ただ、プロ契約を結ぶことはなく、アマチュアでのプレーを継続。「サッカーを趣味として考えていた。プロからのオファーも2回受けたけど、彼らは当時の最低賃金である800レアル(約20000円)しか払おうとしなかった。一方で、アマチュアだった自分は月に約3000レアル(約75000円)稼いでいたんだ」と、その理由を明かした。
しかし、ある日、教会で「君はサッカーをしながら世界中を旅するだろう」という預言を受ける。さらに同時期に、ある男性から「アマチュアでプレーするなんて時間の無駄だ。君は素晴らしい選手になれるはずだ」と言われたことで一念発起。冷蔵庫など所持品を全て売り、単身サンパウロへ向かったようだ。
そして、クラブの下部組織に所属したことがない身ながら、23歳にして初めてサンパウロ州の一番下のカテゴリーのクラブとプロ契約。アマチュア時代よりも少ない給料でプレーしながら、少しずつステージを上げ、2018年にはカンピオナート・ブラジレイロ・セリエB(ブラジル2部)で34試合に出場して8ゴールを記録。2019年には柏レイソルへと移籍し、その後、横浜F・マリノス、サンフレッチェ広島でプレーした。
2022年にブラジルへ帰国した後、「もう復帰できないと思った」と感じるほどのケガを負ったが、すべてを乗り越えてコパ・リベルタドーレス2024で得点王に輝き、チームの優勝に貢献。同大会の決勝後には涙を流しながら「このタイトルを父に捧げたい」と語り、紆余曲折を経て南米王者に輝いた喜びを噛み締めた。