GPファイナル2024プレビュー 女子シングル編
【坂本花織が圧勝劇を見せるのか】
フィギュアスケートのGPファイナル女子シングルが、12月5日に開幕する。
2026年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪のプレシーズンとなる今季。GPシリーズ女子シングルは、昨季GPファイナル2位のルナ・ヘンドリクス(ベルギー)が今季は全戦欠場し、世界選手権2位のイザボー・レヴィト(アメリカ)はスケートアメリカ3位のあと、出場予定だったフィンランド大会を欠場した。
韓国勢もシーズン開幕前のゴタゴタが影響したのか、全体として元気がない。GPシリーズ全6戦で表彰台に上がったのは、中国杯3位のキム・チェヨンのみ。結局、GPファイナル出場は6人中5人を日本人選手が占めることになった。
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そんななかで優勝候補筆頭となるのは、大会連覇がかかる坂本花織(シスメックス)だ。スケートカナダは日本勢表彰台独占のなか優勝したものの、合計得点は201.21点。「4分間走り続けているようなハードなプログラム」と坂本が説明するフリーは2回転倒し、フリーでトップだった松生理乃(中京大)に10点以上も及ばなかった。
それでも坂本は帰国後、トレーナーと話すなかで不調の原因に気づいた。肩甲骨まわりの凝りが蓄積している状態で練習を続けていたため、ジャンプ時の腕の使い方が以前とは違っていたのだ。
調整して臨んだ11月のNHK杯は、本来の坂本らしいダイナミックな滑りが復活。SP(ショートプログラム)では、完璧な演技で78.93点を獲得すると、フリーでも攻めの滑りをして合計231.88点で圧勝した。
「今は試したいことを試している最中。今回だけの成功ではなく、次も、その次も成功してこそだと思うので、試合を重ねるごとにどんどんよくなったと言ってもらえるようにしたい」と坂本は振り返った。
順当にいけば勢いに乗ってきた坂本が、GPファイナルでも圧勝劇を再現するはずだ。
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【日本勢に立ち向かう急浮上のスケーター】
そんな坂本を追いかける存在として今季急浮上してきたのが、坂本よりひとつ年上の25歳アンバー・グレン(アメリカ)だ。2023年から2年連続で世界選手権に出場しているが、12位と10位。昨季の全米選手権はフリーにトリプルアクセルを入れて210.46点で優勝しているが、公認記録では2022年四大陸選手権の190.83点が自己ベストだった。
それが今季は、SPにもトリプルアクセルを入れ、他のジャンプのミスも減らして9月のロンバルディア杯では坂本らを抑え、212.89点で優勝。フランス杯はSPで自己最高得点を出し、フリーは崩れたが210.44点で優勝。そして、中国杯は自己最高の215.54点をマークして優勝している。
まだ全体的に荒さのある滑りで波はあるが、220点台中盤まで出す実力は見せている。初出場のGPファイナルでいい結果を残して自信をつければ、さらに進化しそうだ。
坂本、グレンに続くのが、NHK杯と中国杯で2位を堅持し、GPファイナル初進出を決めた千葉百音(木下アカデミー)だ。
夏場に右足甲を痛め、9月のネーベルホルン杯はジャンプの回転不足も多く193.37点で4位。NHK杯はミスをわずかに抑えて212.54点。そして、中国杯でもSPとフリーでそれぞれミスはあったが、合計を211.91点にしている。
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小さなミスを解消すればもう少し得点を伸ばせる。昨季の四大陸選手権は214.98点の自己最高得点で優勝しており、大舞台での強さがある選手だ。NHK杯と中国杯とGPファイナルは過密日程で、日本と中国はほとんど時差がないが、GPファイナルはフランス開催で8時間の時差がある。彼女にとっては初体験になるが、乗り越えられるかにも注目したい。
【樋口新葉は7年ぶりのGPファイナル出場】
樋口新葉(ノエビア)も表彰台争いに食い込む可能性を見せてきた。北京五輪4位、世界選手権2位と実績のある選手だが、GPファイナルは今回が2017年以来の2回目。
スケートアメリカはレヴィトらを抑えて優勝したが、ミスもあって196.93点だった。フランス杯はSPで小さなミスがあり3位発進。フリーでも3要素で細かいミスがあったが、2021年に出した自己最高得点に迫る139.10点を出し、合計を206.08点にしている。ミスを最小限にできれば表彰台に近づけそうだ。
吉田陽菜(木下アカデミー)は、自己最高得点がジュニア時代の2022年に出した208.31点にとどまっている。今季の最高は優勝したフィンランド杯の199.46点。SPはブノワ・リショーの振り付けで、「自分にないものを磨いてくれる」とトリプルアクセルを入れないで自己最高の67.87点を出している。
フリーではトリプルアクセルの転倒もあって得点を伸ばしきれなかったが、昨季のGPファイナルではトリプルアクセルで減点されながらも他のジャンプを完璧にして自己最高の142.51点を獲得。今回もそんな滑りを再現できれば、自己最高得点の更新もできるだろう。
また、2試合とも2位で初のファイナル進出を果たした松生理乃は、スケートカナダではSP10位からフリー1位の139.85点で総合2位になるジャンプアップを見せた。そしてフィンランド杯でも、SP4位からフリー1位で巻き返して総合2位の199.20点。タイムオーバー減点1がなければ、2022年四大陸選手権以来の200点台に乗せられた。
シニア移行の2021−2022年シーズンに注目されながらも、体調不良もあってなかなか結果を出せなかった松生。GPシリーズ2戦のSPはともに転倒もあって得点を伸ばせずにいるが、克服すれば200点台も安定して出せる実力がある。
男子シングル編へつづく>>