ダビド・シルバやカカなど欧州サッカーのレジェンドたちが日本に集結 元日本代表たちを相手に華麗なプレーで魅了

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2024年12月04日 07:30  webスポルティーバ

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DIAMOND CUP OF LEGEND 前編

マッチレポート

【レジェンドたちの夢の競演】

 サッカーファンにとって、まさに夢のような一夜だった。

 11月27日、『DIAMOND CUP OF LEGEND』がニッパツ三ツ沢球技場で開催された。クラブや各国の代表、欧州選手権などで優勝を経験した者に限定される世界のトッププレーヤーたちと、日本のレジェンドが相まみえた。いわゆる"レジェンドマッチ"は世界中で行なわれてきたが、日本での開催は初の試みだ。

 当日、会場には約7000人が訪れたが、やはり欧州サッカーファンが目立った。多くがレジェンドたちのユニホームを着て、グッズを持って"推し"に声援を飛ばす。特にカカとダビド・シルバの人気は絶大で、彼らの技術に観客は酔いしれた。この日、最も観衆を沸かせて主役となったのは、レアル・ソシエダで久保建英と共に中盤を担ったダビド・シルバだった。

「ワールド・レジェンズ」は、キャプテンを務めたミチェル・サルガド(スペイン)をはじめ、以下の選手も含めて計14名が来日した。

 カカ(ブラジル)、ロベール・ピレス(フランス)、ハビエル・サビオラ(アルゼンチン)ダヴィド・トレゼゲ(フランス)、マルコ・マテラッツィ(イタリア)、フェルナンド・モリエンテス(スペイン)、エステバン・カンビアッソ(アルゼンチン)、リカルド・カルヴァーリョ(ポルトガル)、クリスティアン・カランブー(フランス)、エドガー・ダーヴィッツ(オランダ)ジョアン・カプデビラ(スペイン)、ダビド・シルバ(スペイン)、ジーダ(ブラジル)と、豪華すぎるメンバーだ。

 一方の「Jクラシック」は岩本輝雄が主将を務めた。そのほか松井大輔、福西崇史、岡野雅行、名良橋晃、久保竜彦、李忠成、柏木陽介、中西哲生、坪井慶介、南雄太、佐藤勇人、田中隼磨、梁勇基、太田宏介、那須大亮、大久保嘉人、鈴木啓太、森岡隆三、大久保哲哉ら、多くの日本代表経験者が名を連ねるなど、こちらの20名も一時代を築いた名手が揃った。

【試合は徐々に本気モードに】

 前日会見で、試合の本気度を問われたミチェル・サルガドは「本気で勝ちにいく」と宣言。一方でピレスは「正直、トレーニングをしていない(笑)」と打ち明けた。

 11歳の時にサンパウロFCのジュニアチームの一員として初来日し、2002年の日韓W杯、ACミラン時代に2度、日本を訪れていたカカは「日本に来るのはいつも楽しみ。みなさんも楽しめるような試合をしたい」と語った。さらに、報道陣に久保について聞かれたシルバは、「プレーもすばらしいが、彼の人柄がすばらしい」と称賛した。

 エキシビションなだけに、本気度は問うべきではない――。記者会見場でもそんな声が聞こえたが、内実は違ったという。今回のレジェンドカップの企画者であり、ワールド・レジェンズの一員として試合に出場した株式会社ワカタケ代表の稲若健志氏は、こう話す。

「ミチェル(サルガド)は、Jクラシックが20名なことに対して、『こちらは14人しかいない。不公平じゃないか!』と抗議していました(笑)。負けたくなくて、実は体を作ってきていたレジェンドも少なくなかった」

 試合はローテンポでスタートしたが、前半の半ばから徐々に熱を帯び始める。シルバがエリア外からブレ球のシュートでゴールを脅かす。Jクラシックが大久保を中心に攻めるところに、マテラッツィが激しいタックルを浴びせどよめきが起きる。こぼれ球は、カルバーニョが鋭い読みで、ことごとく拾ってピンチを逃れた。

 ピレスが左サイドから右足のアウトサイドでトラップし、細かいタッチを見せてショートパスの連携で崩せば、カカは懐の深いドリブルにスルーパスをDFラインの裏に通す。サルガドは右サイドを激しく上下動し、ダーヴィッツは51歳とは思えない運動量で攻守に躍動していた。往年のサッカーファンからすると、"らしい"プレーの連続である。

 そして前半28分、ポケットに入り込んだシルバの折り返しをピレスが流し込んでワールドクラシックが先制。その2分後には、モリエンテスのパスを受けたシルバがワンタッチでディフェンダーを交わし、追加点を挙げた。

 後半は一転して、Jクラシックが攻勢に出た。太田と柏木、現役引退から時間がそれほど経っていない2人を起点に、左サイドからチャンスメイク。太田、李、大久保が立て続けにゴールを叩き込んだ。

 運動量が落ちてきたワールドクラシックは万事休すかと思われたが、カカの20m近いグラウンダーのロングスルーパスが流れを変えた。オフサイドラインギリギリに走り込んだサビオラが、左足を振り抜き同点に追いつく。さらに、カカを起点にゴール前でフリーになったシルバが鋭い切り替えしをみせ、プレゼントパス。トレセゲが右足で押し込んで逆転した。一連の流れは非常に美しく、シルバには会場から大きな拍手が送られた。

【いまだ色あせない高い技術】

 レジェンドたちには往年のスピード感はなく、華麗なドリブルで抜き去る、という派手なシーンは試合を通してほぼ見られなかった。一方で、「ボールを止めて蹴る」という技術は恐ろしく正確だった。トラップの際のボールの置きどころや体の向き、うまく腕を使った体の使い方、スペースがなくてもあっさりターンする、といった根幹技術は、体に染みついたものなのだろう。

 筆者はこれまで、レジェンドたちに何度か取材する機会があったが、「ボールは疲れない。だから早く動かす」「正しいポジショニングで正しいプレー選択をする」ことの重要性を何度も聞いた。年齢を重ね、フィジカル面での衰えはあるなかで、その言葉の意味を自らのプレーで表現し、日本のファンに見せてくれた気がしている。

 3得点に絡んだシルバの活躍もあり、試合は4対3でワールド・レジェンズが勝利した。会場では誰もが"シルバ劇場"に目を奪われていた。観客席から「まだ現役でプレーできるんじゃないか」という声が上がっていたのも大袈裟ではない。試合後にはJクラシックの選手たちも、「マジでうまいです。半端ない」と本音をこぼした。

 だが、「実は、こぼれ話しがあって」と前出の稲若氏は言う。

「シルバは2023年7月に引退してから、サッカーをしたのは1年4カ月ぶりだったと言っていました。試合後も『全然思うようにいかない』『疲れた』と悔しそうにしていたのが印象的でしたね」

 試合終了後も、観客たちは一向に帰路につこうとしない。スタンドの前を周回する選手の名前を叫び、ユニホームを手渡す人も多く、レジェンドたちはサインや写真撮影に応えていった。特にカカやジーダ、サビオラら南米組、シルバにピレス、トレセゲらは30分近くファンサービスを行なっていた。

 ダーヴィッツは「とても疲れました(笑)。激しく、いい試合ができました」と満足そうに話し、ジーダは「すばらしいゲームを見せられて喜んでいます。日本のみなさん、ありがとうございました」とメッセージを送るなど、レジェンドたちは晴れやかにピッチを去った。

 試合会場を後にするレジェンドたちを乗せたバスでは、「カンピオーネ(イタリア語で「チャンピオン」)」の大合唱が行なわれるなど、お祭り騒ぎだったという。

 訪れたファンにとっても、レジェンドたちにとっても、深く記憶に刻まれる一日となった。

(後編:カルヴァーリョとカンビアッソが語る「最高の監督、選手」とは? インテルでプレーした長友佑都は「怪物」>>)

■取材協力:株式会社ワカタケ

公式HP>>
https://www.wakatake.group/

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