篠塚和典が語るCS 後編
(前編:巨人のCS敗退の原因 大きかった吉川尚輝の離脱、戸郷翔征に足りなかった「エース」の姿>>)
リーグ3位のDeNAが下剋上での日本一を達成したことを受け、クライマックスシリーズ(CS)の制度に対する議論が再び活発化。リーグ優勝のチームに与えられるCSのアドバンテージについてなど、さまざまな意見が飛び交っている。
長らく巨人の主力として活躍し、引退後は巨人のコーチを歴任した篠塚和典氏にこの問題に対する見解を聞いた。
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【現行のCSの制度は「見直すべき」】
――報道によると、リーグ優勝のチームに与えられる1勝のアドバンテージを、「ゲーム差によっては2勝に増やすべきじゃないか」という意見も挙がっているようです。
篠塚和典(以下:篠塚) 以前から私の周りでも、ゲーム差がある程度離れたらリーグ優勝のチームのアドバンテージを変えてもいいんじゃないか、という話は出ていました。やはりリーグ優勝は最も価値があるものですし、1位と2位、3位のチームの差が10ゲームぐらいつく場合もあるので。
――篠塚さんはアドバンテージを見直したほうがいいと考えていますか?
篠塚 そうですね。やはりゲーム差がついた場合はアドバンテージを増やしてもいいと思います。個人的には、下位チームと10ゲーム以上の差がついた場合はCS自体、やらなくていいんじゃないかとも思いますよ。
――ゲーム差によって、CS開催の有無やアドバンテージの内容を決めるということですか?
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篠塚 そうですね。プロ野球は興行ですし、経済効果などいろいろなメリットもあるので簡単に解決できる問題ではありませんが、個人的には見直したほうがいいと思います。
一方で、日本シリーズは以前のようにリーグ優勝チーム同士での戦いとし、日本シリーズとは別にカップ戦などを開催することもひとつの手です。そのカップ戦にいくつのチームが出場できるのかとか、どういう方式で戦うのか、といったことはさておき、日本シリーズと分けるアイディアがあってもいいのかなと思います。そうすればリーグ優勝の価値も下がりませんし、興行収入もある程度は維持することができるんじゃないかと思います。
【シーズン終了からCSまでの期間をどうするか】
――シーズンの終わりからCSまでの期間が間延びすることも、たびたび議論されています。特にリーグ優勝したチームは、CSファイナルステージまでかなり空くので、実戦感覚が鈍るという指摘もあります。
篠塚 そういう問題は、CSがなかった時代からあったんです。シーズンの終わりから日本シリーズまでの期間もそうだった。例えば9月の上旬や中旬にリーグ優勝が決まってしまうと、日本シリーズを迎えるまでかなり間が空きますよね。
僕が現役時代の1990年シーズンでは、9月8日に巨人がリーグ優勝を決めたのですが、日本シリーズの第1戦が行なわれた10月20日までかなりの期間がありました。ゲーム差うんぬんでアドバンテージを変えるよりも、シーズンの終わりからポストシーズンまでの間隔を空けないスケジュールにするほうが大事かもしれませんね。特に野手は間隔が空くと調整が大変ですし、本当に不安ですから。
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――菅野智之投手はCSファイナルステージが始まる前に、リーグ優勝チームのCSまでの間隔について「空きすぎると思うので、見直しは必要だと思います」と提言していました。
篠塚 ピッチャーも調整が難しくなると思いますが、野手ほどではないのかなと。野手はいろいろなピッチャーのボールに対応しなければいけませんし、バッティングにしろ守備の際の打球への反応にしろ、いろいろな"速さ"を体感しておかなければ対応が難しくなります。なので、実戦感覚が鈍ってしまうと、どうしても不安が生じます。今に始まったことではなく、昔から出ている話なんですけどね。
――МLBの場合は、シーズンの最終日をあらかじめ設定し、シーズン中に中止になった試合はダブルヘッダーとして組み込んで消化していきます。
篠塚 NPBでそれができるかといえば、いろいろな問題があると思いますが、ダブルヘッダーなどをやりながら「この日までには全試合を終わらせる」という予定にしてもいいと思います。最終日は両リーグともに同じ日にして、間隔を空けずにCSを始める形式ですね。
――実戦感覚だけでなく、気持ちの持っていき方も難しそうですが、篠塚さんが現役時代やコーチ時代、リーグ優勝後の期間はどういう心境でしたか?
篠塚 やっぱりホッとしちゃいますよね。ただ、しっかりと気持ちを保っていないと、ちょっとした油断からケガにつながってしまうこともある。実戦感覚が鈍ることもそうですが、気が抜けた時のケガのリスクも頭に入れてプレーしなければいけません。シーズン最終日からポストシーズンまでの間隔がそれほど空かなければ、リーグ優勝をしたあとでもある程度の緊張感は維持できますからね。
アドバンテージの問題にしても日程の問題にしても、さまざまな意見があるでしょうし、興行面と勝負事のバランスも考えなければいけません。日本シリーズはやはり両リーグの1位同士の対戦をファンも観たい部分もあると思いますし、日本シリーズとは別にカップ戦などを設けるのがよいのか。今後も議論を重ねていい方向へ改善していってほしいですね。
【プロフィール】
篠塚和典(しのづか・かずのり)
1957年7月16日、東京都豊島区生まれ、千葉県銚子市育ち。1975年のドラフト1位で巨人に入団し、3番などさまざまな打順で活躍。1984年、87年に首位打者を獲得するなど、主力選手としてチームの6度のリーグ優勝、3度の日本一に貢献した。1994年に現役を引退して以降は、巨人で1995年〜2003年、2006年〜2010年と一軍打撃コーチ、一軍守備・走塁コーチ、総合コーチを歴任。2009年WBCでは打撃コーチとして、日本代表の2連覇に貢献した。