こんにちは! refeiaです。
今日はiPad対応「TourBox」の夢を見ていきます。TourBoxは登場時から現在まで、継続的なハードとソフトのアップグレードによって「高級左手デバイス」という分野ながら、じわじわとポピュラーな存在になってきています。
そのような中で、これまではPCには対応するもののモバイルOSには対応しておらず、特にiPadのユーザーからはセルシスの「CLIP STUDIO PAINT」やSavage Interactive Ptyの「Procreat」といった、クリエイティブアプリで使いたいという声も聞こえていました。
そして2024年、従来の最上位機「TourBox Elite」にiPad対応を追加した、「TourBox Elite Plus」が12月下旬に発送予定となっています。今回は一足先に、iPadでの動作を中心としたミニレビューという形で見ていきましょう。
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ネタバレですが、TourBox Elite PlusのiPadモードは実質「キーボードデバイス」で、PCで使うほどの利便性は期待できない、という結論になります。
●シリーズ最新モデル「TourBox Elite Plus」とは?
まずは、TourBoxシリーズについて少しおさらいしておきましょう。2020年に初代TourBoxが発売され、現在は
・初代の後継機「TourBox NEO」
・廉価版の「TourBox Lite」
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・無線接続や高機能ダイヤルを追加した上位版「TourBox Elite」
の3モデルが発売されていたところに、Elite Plusが追加されたわけですね。上の2モデルがUSB接続、EliteがUSBとBluetooth接続に対応しています。
既に、Eliteは2023年にレビューをしています。ハードウェアの作りの良さや、高速に操作しているときの快感、集中を助けるような感触は素晴らしいものの、イラスト用途においてはダイヤルやマクロの優位性が薄まるため、キーボードでショートカットを使いこなしている状態を超えるのは困難、という結論になっています。
●本体と接続をチェック
それでは本体をチェックしていきましょう。基本的には先代のTourBox Eliteとほぼ同じ、ボディーの剛性やボタン類のシッカリ感も同じです。
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Bluetooth接続は2台までペアリングでき、背面のボタンで接続先を切り替えます。動作はトグル式ですが、どちらが有効になったかはLEDの色で見分けることができるので、混乱することはありません。
2台ペアリングできるのは、PCでもiPadでも使いたい人にはちょうどよい仕様ですね。
●iPadでの動作をチェック
それでは、iPadでの動作を見ていきましょう。記事の執筆時点ではCLIP STUDIO PAINTとProcreateのプリセットを選ぶことができます。
接続するとソフトウェアキーボードの自動表示が解除され、ボタンやダイヤルを動かすと文字入力が発生します。つまり、iPadから見ると「キーボードデバイス」です。動作はアプリのキーボードショートカットに依存するわけですね。ドライバなどでシステムの深くに関与できないiPadでは、妥当な仕様です。
また、Procreate用には現状β版の「ジェスチャーシミュレート」機能も実装されていて、ズームや回転がタッチ操作をしたかのように利用できるとアピールされています。
これはOSの制約の中どうやっているんだろうと不思議だったのですが、実際には「トラックパッド」のフリをしているようです。TourBoxの設定アプリから離れたときなどにマウスカーソルが表示されるのを見ることができますし、実際にダイヤルで回転やズームを使ったときにもマウスカーソルが表示されます。
こういうのを見ると、「よく考えたな」「がんばってるな」という気持ちになりますが、問題もあります。「本物のトラックパッドと動作や設定が競合する」のです。
iPadの設定でトラックパッドの速度をカスタマイズしていたり、iPadの操作にマウスやトラックパッドを利用していると、TourBoxが想定している位置にカーソルが行かず、端の方でズームや回転が発動したり、発動に失敗することもあります。
●PC版の利便性は期待できない
TourBox Elite Plusは、iPadのようなOSの制限の強いデバイスに対応するために、キーボードやトラックポイントのフリをする能力を身につけました。とはいえ、先にEliteをレビューしたときにも述べた通り、本機のすごさと利便性のキモはドライバアプリにあり、iPad上ではその多くを享受できません。
ざっと試した限りですが、iPadで使う上での現状の制限を挙げると
・HUD表示ができない
・マクロを利用できない
・プリセットの自動切り替えがない
・Procreateのスポイトなど、キーボードショートカットに割り当てがない機能は利用できない
・設定のインポート/エクスポートがない
・上記のトラックパッド動作の制限
といったところです。アプリやファームウェアの更新で改善することもあるでしょうが、キーボードやトラックパッドの枠の中でしか動けないことの限界が高くないのも確かでしょう。HUDなどは最近のPC版アプリのアップデートでずいぶん便利になって、チートシート的にも使えるレベルになっていると思うので、なかなか残念な点です。
また、CLIP STUDIO PAINTのようなPC版と同等のアプリを使っていると忘れがちですが、iPadではキーボードショートカットがPC版ほど豊富でないアプリも多く、割り当てたくても割り当てられない機能が出てくるのも注意を要します。
●キーボードデバイス枠の手ごわいライバル
上記のようにドライバアプリの優位性の多くが封じられている状況では、キーボードデバイスそのものや、キーボードのフリができるゲームパッドなどが手ごわいライバルになってきます。
特に、以前レビューした「8BitDo Micro」は、iPadアプリからマッピングをカスタマイズでき、iPadと一緒に持ち歩きやすいサイズと軽さ、その割に多い16キーと、なかなか見どころがあります。
一方で、もしPCでの作業をTourBoxで最適化していて、iPadでも慣れた操作を利用したいならば、TourBox Elite Plusが唯一の選択肢です。
●ダイヤル好きにも覚えてほしいショートカット
少しレビューとは離れますが、CLIP STUDIO PAINTやPhotoshopなどで回転/ズーム/ブラシサイズ変更をするときには、ダイヤル以外にも便利なショートカットがあります。全面的に優れているわけではないですが、多くの場合こちらの方が素早く直感的に操作でき、ダイヤルを他の機能に割り振る余地もできるのでおすすめです。
TourBoxシリーズを導入するにしても、キーボードショートカットを学んでいたかそうでないかで設定の上手さや作業効率は変わってくると思います。効率化の初手でTourBoxを検討している人も、ぜひ学んでみてください。
●まとめ
それではまとめていきましょう。TourBox Elite Plusは、TourBoxシリーズで初めてiPadに対応したデバイスです。しっかりした作りの本体と、機能が更新され続けているPC用ドライバソフトウェアによって、効率化とカスタマイズへの高い要求に答える出来になっています。
一方で、iPadで利用するときにはドライバソフトウェアの恩恵は享受できません。OSの制限により、基本的には「カスタマイズ可能なキーボード」として動作します。キーの二度押しや同時押しに対応してはいるものの、現状ではHUDやマクロなどのドライバが必要な機能を利用できないだけでなく、モバイルアプリの多くはキーボードショートカットをPCほど手厚くサポートしないために、利便性が制限されています。
iPad版CLIP STUDIO PAINTに限れば、素早く操作できるように設定したり、PCとiPadでおおむね共通の操作性になるよう設定したりすることもできるでしょう。もしそれ以外のクリエイティブアプリや一般的な効率化ツールとしてiPadで主に使うことをもくろんでいるならば、価格に対して得るものが少なかったという感想になる恐れがあります。
あくまでPC主体、iPad対応はプラスαとして本機を検討するのが良いでしょう。
モバイルOSの制限があるので仕方ないですが、価格を考えると少々残念としか言いようがない「iPad対応」というのが現状です。ファームウェアや設定アプリの機能改善も進んでいくでしょうし、アプリの開発者にも声をかけているようなので、状況が変わるのを待っても良いでしょう。
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