今季2024年のレースプログラムが終了し、クリスマスの休暇を目の前にして2025年シーズンに向けてのドライバーラインアップが少しずつ確定しつつあるヨーロッパのモータースポーツ界。WEC世界耐久選手権では、アストンマーティンのハイパーカー参戦をはじめ、今季デビューしたばかりのランボルギーニの活動休止発表、JOTAスポーツがポルシェからキャデラックにメーカーをスイッチするなど話題には欠かない。
そんななか、例年ではポルシェのモータースポーツ年間表彰式“ナイト・オブ・チャンピオンズ”と前後して、BMWモータースポーツが招待メディア向けのディナー会を毎年開催しその中で新シーズンのドライバーのラインアップとワークスドライバーのアクティビティについて発表されるのだが、今年はそのディナー会がまだ開催されていない。
内部に詳しい人物からの情報によると、まだ契約交渉中のドライバーがおり、例年のように次年度の体制を一斉に発表することができないという事情があるようだ。
アブダビで開催されたF1の最終戦で計9シーズンのF1のキャリアを終え、来年はBMWのワークスドライバーとしてスポーツカーレースに参戦することが発表されているケビン・マグヌッセンは大きな話題を集めたひとりだが、BMWはもうひとり大物との交渉をしているという。その名は今季のF1で彗星のごとく現れた若きアルゼンチンドライバーのフランコ・コラピントだ。
第16戦イタリアGPからウイリアムズのローガン・サージェントに代わり古豪チームのシートを仕留めた21歳。しかし、来季のウイリアムズはアレクサンダー・アルボンとカルロス・サインツを起用することがすでに決定しているため、コラピントの将来は宙に浮いている状態であり、彼のマネジメントサイドは他のチームとの交渉を続けているとコメントしている。
そんななか、BMWがコラピント側とLMDhのシートにつて交渉中であるとの情報を得た。とはいえ、コラピントはあくまでF1残留を希望しており、現時点で残っているとされるレッドブルやRBとの最終交渉が精力的に行われているものと思われる。
したがってF1の2024年のシーズンが終了し、レッドブルとRBの最後の“椅子取りゲーム”が本格化しているいま、BMWはコラピントの動向待ちをしているようだ。
そのBMWでは、2025年はアキュラへと移籍しメイヤー・シャンク・レーシング(MSR)からIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権にフル参戦することが発表されたニック・イェロリーが同社を去り、バレンティーノ・ロッシのよきコーチ役であり公私ともに親交が深かったGTドライバーのマキシム・マルタンが12月9日付けで2度目のBMWワークス離脱を選んだように、今後他のワークスドライバーのラインアップにも変化があるのか気になるところだ。
WECのリデビューイヤーとなった2024年は必ずしも輝かしいシーズンではなかったBMWだけに、『BMW MハイブリッドV8』を駆るマグヌッセンのチームメイトとしてコラピントを迎えることが叶うのならば、話題性だけではなくドライバーのポテンシャルアップの引き上げにも期待がかかる。
コラピントは2021年にAsLMSアジアン・ル・マン・シリーズとELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズ、さらにル・マン24時間レースにGドライブ・レーシングからLMP2クラスへの参戦経験がある。F1でも見せた早い順応性で即戦力になる可能性は充分あるのではないだろうか。