「画期的で同性カップルの希望をつなぐ判決だ」。同性婚を認めない現行制度を憲法違反と断じた13日の福岡高裁判決。札幌、東京に続く高裁での3件連続の「違憲」判断が示されたうえ、幸福追求権を定めた憲法13条に反するとまで言及したことに、原告らから歓迎の声が上がった。
「憲法13条に違反するものといわざるを得ない」。午前11時過ぎ、福岡高裁の101号法廷。岡田健裁判長が判決要旨を読み終えると、原告で福岡市在住のまさひろさん(37)=フルネームと漢字表記は非公表=と、パートナーのこうすけさん(35)=同=は互いに涙を浮かべて喜びあった。閉廷後、傍聴席からは拍手がわき起こった。
「婚姻する権利があると言われたことで、救われた」。2人は判決後の記者会見で、喜びを語った。高裁判決は「法制度を設けず、法的な保護を与えないことは、同性の者を伴侶として選択する者が幸福を追求する道を閉ざしてしまうことにほかならない」と指摘。実際、2人はさまざまな不条理と向き合ってきた。
「ふうふ」として2018年3月に自宅を購入した際には、収入を合算したローンは組めなかった。自宅名義もこうすけさんになっているため、亡くなった場合にまさひろさんがそのまま住み続けられる保証はない。受取人を同性パートナーにできる保険は、契約する際に2人の関係を証明する第三者の署名も求められた。
まさひろさんは「私は彼と死ぬ間際まで一緒に過ごしたい。ただ、突然の事故で家族でないために死に目に会えない可能性もある。日々小さな不安を抱えている。自分として生きていくということが当事者にとっては簡単ではない。法制化されれば、ありのままで生きていける」と話す。
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高裁判決はさらに、1審・福岡地裁判決が「同性婚を婚姻と似た別の制度で認める余地もある」と言及したことにも「それでは憲法違反は解消しない」として「ノー」を突きつけた。
こうすけさんは「ネット上ではいまだに中傷に近い意見が飛び交っている。何度も何度も傷つきながら私たちが訴えているのは、特別な権利ではなく、異性愛者と同じように結婚がしたいだけだ」と強調。「別制度にすれば、同性カップルは異性カップルとは別の存在とされ、差別的構造を残すことになる。明確に否定した高裁判決は納得できるしありがたい」と評価する。
ただ、同種訴訟で最高裁が統一判断を出すにはまだ時間がかかるとみられ、国の法制化が進まない現状が固定されることに、原告らは警戒感を募らせる。原告のなかには、法制化を夢見ながら亡くなった人もいる。
福岡訴訟の原告で熊本市のゆうたさん(41)=同=は、パートナーの遺影をリュックに入れて同種訴訟の傍聴に来た「仲間」の姿が忘れられない。その人は愛する人が亡くなる前、病院で病状を聞こうとしたが「親族ではない」として拒否された。ゆうたさんは「いちはやく多くの人が幸せになるようにしてほしい」と訴えた。【志村一也、宗岡敬介、栗栖由喜】
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