元セクシー女優でフリーライターの「たかなし亜妖」がお届けする連載コラム。2016年に「ほかにやることがなかったから」という理由でセクシー女優デビュー。女優生活2年半で引退を決意し、ライターへ転向。現在は鳥越アズーリFM「たかなし亜妖のモザイクストリート」で冠番組を持つなど、メディア出演も積極的に行っている。
◆「セクシー女優の面接事情」の変化
昔は「お金がなかったらセクシー女優になれば全て解決!」のような考え方があったように思う。セクシー女優と言えば、貧困に苦しむ人々の最後の砦と言わんばかりの職業扱いだったため、今でも「脱げば簡単に稼げる」と勘違いされがちだ。
覚悟を決めて業界の扉を叩けば簡単にデビューできる、なんて甘い考えを持つと100%痛い目を見る。なぜなら今はプロダクションに所属するハードルも高く、面接落ちが当たり前に存在するからだ。
昔は自ら志願する女性がほぼ皆無だったせいで、見た目と素行が相当ヒドくない限り面接で落とすことはなかった。もちろん最低ラインはあれど、とりあえず所属させれば何かしらの仕事は見つかり、月に一本もオファーが回ってこないようなことは考えにくかったという。
特に数を確保したい大手プロダクションは友達同士の紹介で所属を希望する人や、1本限定の単発お小遣い稼ぎの人も、幅広く受け入れていた。要するに、みなさんご存知の通りの“割となんでもアリ”な業界だったのである。
◆所属のために全力でオトしにかかる時代も
以前はハイレベルな女性が少なく、志願者は本気で困窮するギリギリの人だらけ。ルックスが良くても内面に問題が大アリの困ったちゃんがいっぱいだと、S級クラスかつメンタルが健康な未来のエースが現れるだけで、プロダクションは飛びついた。
有望株が自ら望んで面接に来てくれたり、スカウトが連れてくれば良いものの、そんなうまくいくわけがない。S級クラスの人材はマネージャー陣が路上やら、夜のお店やら、誰かの紹介で出会うパターンが多かったので、彼らがスターを執拗に追い回すのが昔のやり方だった。
口説くために本腰を入れるのは今もある風習だけど、とにかく粘り方が尋常じゃなかったらしい。
私が聞いた話だと、まずは話を聞いてもらいたいので事務所に来てもらうべく現金を渡したり、夜のお店に勤めていた有望株の女性のために高額シャンパンを卸し続けたりと、ひたすらお金と時間をかけてスターを掴むことに命をかけていたようである。
今となっては1人逃してもまた新星がすぐに現れるので、1人だけを追い回すようなケースは滅多にない。当時のマネージャーたちのしつこさは、プロダクションの新人獲得がいかに困難だったかをよく表しているだろう。
◆“エキストラ枠”で採用される女性も
平成後期より、セクシー女優を夢見て業界の扉を叩く人が増えたため、どこのプロダクションも来るもの拒まずの姿勢を取らなくなった。スカウトが連れてきても面倒を見切れないと思ったら断るし、やる気があっても容姿レベルが足りていないとあっさり面接で弾かれてしまう。少数精鋭のプロダクションに関しては所属者が多すぎても手が回らないため、時期によっては採用基準が上がる場合もある。
大手プロダクションだと人員を確保したいがために、数合わせとして女性を迎え入れるパターンが多い。大手はメイン出演ではなくエキストラといった細かい仕事が舞い込んでくるので、“エキストラ枠”のような人材が必須だからだ。
ただし、妥協して所属させるような人は高確率で売れない。メインどころの仕事が回って来づらいし、エキストラやチョイ役から上り詰めるには相当な努力が必要。たとえ運よく所属できたとしても、満足のいく案件が来なくて泣く泣く業界を去るという何とも言えない結末を迎えるのがオチだ。
◆現在は選ばれし人だけが輝ける業界に
全員採用がないからこそ高いクオリティを保てるが、志願者からすると「扉の向こう側にさえ行けない」のはなかなかシビアな話である。仮に扉を開けられたとしても、奥まで進めず引き返す可能性も考えられるので、現在のセクシー業界は良くも悪くも在り方がガラリと変わったと言えよう。
簡単に言ってしまえば見た目と顔が大前提なので、「脱げば誰でもOK」は完全なる間違いである。もはやセクシー業界は困窮した者のセーフティーネット的な役割ではなく、選ばれし人間だけが輝ける狭き門と化したのだ。
ビデオ出演が困り果てた女性たちの救済措置とはならなくなったのは、悩ましいことと言えるだろう。しかしユーザー目線で考えるとしたら、可愛い女優だらけになったのはありがたいことかもしれない。
文/たかなし亜妖
―[元セクシー女優のよもやま話]―
【たかなし亜妖】
元セクシー女優のフリーライター。2016年に女優デビュー後、2018年半ばに引退。ソーシャルゲームのシナリオライターを経て、フリーランスへと独立。WEBコラムから作品レビュー、同人作品やセクシービデオの脚本などあらゆる方面で活躍中。