日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』。統合失調症の姉と彼女を閉じ込めた両親、20年にわたる家族の記録!
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『どうすればよかったか?』評点:★4点(5点満点)
「不可侵にして無謬であるはずの『家』」という呪い
一般に家族というのは、そこに「家」があることで奇妙な単位となる。
名目上、成人した子供は「独立した個人」のはずだし、「家」の外ではそう扱われるにもかかわらず、いったん「家(実家)」に戻ると、親子、兄弟、親戚の関係性の網に搦め捕られて、基本的には幼少期と同じ所定の位置があてがわれてしまう。
親についても同様で、たとえば本作に登場する両親のように、互いを「パパ」「ママ」と呼び合うようなカップルは「独立した個人同士」というより、「家」の中における所定の位置を相互にアイデンティティ化しているとみなすことができる。
本作は、若くして統合失調症を発症した監督の姉を、両親が二十数年間にわたって家に軟禁、適切な医療を受けさせず症状が悪化するがままにした年月を収めたドキュメンタリーである。
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端的に事象だけをみれば、それはネグレクトあるいは虐待の一種としか言いようがないわけだが、その背後に横たわるのは「不可侵にして無謬であるはずの『家』」という不気味な幻想である。
この幻想は程度の差こそあれ、どんな「家」にもあまねく遍在するものであるがゆえに、「どうすればよかったか?」という問いにも普遍性が付与されるのである。
STORY:ドキュメンタリー監督が20年にわたって撮影した、自らの家族の記録。面倒見が良く優秀で、医学部に進学した姉に、ある日統合失調症の症状が現れる。父と母は玄関に南京錠をかけ、彼女を閉じ込めるようになってしまう
監督・撮影・編集:藤野知明
制作・撮影・編集:淺野由美子
上映時間:101分
全国公開中
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