実に額面金額の80倍以上で落札されたわけですが、一体なぜこのような高額落札となったのでしょうか?
高額落札された五千円札の特徴3つ
今回落札された五千円札の記番号は、最初がA、最後がAとなっています。いわゆる「AーA券」と呼ばれるものです。AーA券だけであれば数多く存在しますが、さらに注目したいのは、番号部分。落札された五千円札は、なんと「000010」、つまり10番目に発行されたAーA券なのです。マニアにはたまらない、“AーA券かつ若い番号”のものであり、非常に高値になることが知られています。
しかし、「えっ? 10番などの若い番号は関係各所に収納されるのでは?」と思う人もいるかもしれません。確かに、新紙幣の発行の際には、紙幣に描かれた人物に由来する場所に寄贈されるため、まずAーA券の若い番号は入手不可能です。
今回のポイントはもう1つあるのです。それは、記番号が茶色(褐色)であること。実は紙幣には、発行時期によって異なる色の記番号が印字されています。樋口一葉の五千円札は2004年11月1日に発行が開始されましたが、最初に発行された記番号は黒色でした。そして、ホログラムの形状が楕円形でした。
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今回落札された五千円は、AーA券ではあるものの、2004年発行ではなく後から発行された2014年発行の初期のものとなります。そのため、関係各所にて保管されている2004年発行のものではないため、市場に出回ったと考えられます。
番号が若いほど高額になる傾向が
今回の銀座コインオークションでは、同じく記番号が茶色(褐色)の五千円札で、AーA券の「000056」も出品されました。こちらも若い番号である56番。しかしながら落札価格は18万円(落札手数料含め20万9700円)でした。これでも十分額面から見れば高額落札ではあるものの、若い番号であればあるほど高額となる傾向があります。仮に後で発行されたものであっても、番号が1番のものなどがもし出回ったとするならば、さらに高額になることでしょう。
さすがに、10番や56番は相当運がよくないと見つけることはできないものの、新紙幣の「AAーAA券」は探せる可能性があります。もしも、新紙幣のAAーAA券で、かつ若い番号のものが入手できたとしたら、“宝くじ並み”になる可能性があります。
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<参考>
・第36回銀座コインオークション「Lot番号:417 樋口一葉5000円 茶番 1桁 A000010A 平成16年〜(2004〜)」
・第36回銀座コインオークション「Lot番号:418 樋口一葉5000円 茶番 1桁 A000056A 平成16年〜(2004〜)」
伊藤 亮太プロフィール
慶應義塾大学大学院商学研究科修了。一般社団法人資産運用総合研究所代表理事。ファイナンシャルプランナーとして、家計・保険等の相談、執筆、講演、大学講師を主軸に活動。大学院時代の専門は社会保障で、経済・金融に関する解説も得意。コイン収集マニアの一面も。(文:伊藤 亮太(株式・ファイナンシャルプランナーガイド))