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ノルウェー科学技術大学に所属する研究者らが発表した論文「Handwriting but not typewriting leads to widespread brain connectivity: a high-density EEG study with implications for the classroom」は、手書きとタイピングにおける人間の脳への影響を調査した研究報告である。
この研究では、36人の大学生を対象に、デジタルペンによる手書きとキーボードによる文字入力時の脳活動を、256個の電極を備えた高密度脳波計(EEG)で詳細に測定・分析した。
実験では、参加者に画面に表示された単語を、デジタルペンで手書きする場合とキーボードで入力する場合の2つの条件で記録し、それぞれの脳活動パターンを比較した。
その結果、手書き時には頭頂葉と中心部の脳領域において、シータ波とアルファ波の範囲で、広範な神経ネットワークの結合を観察できた。一方、キーボード入力時にはこのような活発な脳の結合パターンは観察できなかった。
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これらの脳波帯域での活動は、学習と記憶形成に重要な役割を果たすことが知られている。具体的には、アルファ波帯域の活動は長期記憶の形成に関連し、シータ波帯域の活動は作業記憶と新しい情報の取り込みに関連していることが、これまでの研究で示されている。
研究チームは、手書き時に見られる複雑な神経ネットワークの活性化について、以下のように説明している。手書きでは、文字を形作る際の精密な手の動きの制御、視覚情報の処理、運動制御、指や手からの触覚フィードバックが同時に必要とされる。これらの情報が統合されることで、脳内に複雑な神経ネットワークを形成する。
対照的に、キーボード入力では同じキーを押す単純な動作の繰り返しのみが必要とされ、このような複雑な情報処理は必要とされない。
Source and Image Credits: Van der Weel FR and Van der Meer ALH(2024)Handwriting but not typewriting leads to widespread brain connectivity: a high-density EEG study with implications for the classroom. Front. Psychol. 14:1219945. doi: 10.3389/fpsyg.2023.1219945
※Innovative Tech:このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。X: @shiropen2
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