女子SPA!で大きな反響を呼んだ記事を、ジャンルごとに紹介します。こちらは、「恋愛」ジャンルの人気記事です。(初公開日は2023年12月22日 記事は取材時の状況)
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好意を抱いていたはずなのに、そんな気持ちが一気に吹き飛んでしまうような許せないことがあなたにはありますか?
今回は、そんなこだわりのおかげで恋を逃してしまった女性のエピソードをご紹介しましょう。
◆ルームメイトの友達とホームパーティー
唐沢千夏さん(仮名・30歳/会社員)は、女友達の桃代さん(仮名・29歳/美容師)とルームシェアをして一年になります。
「桃代とは、家賃を節約してちゃんと貯金をしていきたいという思いが合致して一緒に住み始めました。
どちらかに彼氏ができて、同居を解消することになっても恨みっこなしねという約束もして、結構いい感じに楽しく暮らしていたんですよ」
そんなある日、桃代さんが「以前働いていた職場の美容師仲間(男性2人)を部屋に招いてもいい?」とホームパーティーを提案してきました。
「桃代は気さくな性格で男友達も多いんですよ。久しぶりに連絡を取ったら盛り上がってしまったみたいなので、それならいいよとOKしました」
◆こっそりLINEを交換
そしてパーティー当日、遊びにきた美容師の翔太さん(仮名・27歳)健治さん(仮名・30歳)とホットプレートを囲みお好み焼きをしながら、桃代さんは積もる話をしつつ楽しんでいたそう。
「私は2人のことを知らないので、店員さんにでもなった気分でおもてなしをしていればいいかなと思っていたのですが、その2人が私に当時の桃代との関係性やエピソードを面白おかしく説明してくれて、楽しませてくれたんですよね」
そして特に翔太さんの方が、千夏さんにひんぱんに話しかけてくれたりと気を遣ってくれているのを感じました。
「そして帰り際に皆んなで片付けをしながらバタバタしている時、翔太さんと2人きりになる瞬間があって『話していて本当に楽しかったからLINE交換してもらえない?こんなのバレたら桃代さんに殴られそうで怖いんだけど…』とこっそり話しかけてくれたのが可愛らしくて、桃代と健治さんにバレないように交換したんです」
そのこっそり感が楽しくなってしまった千夏さんは、毎日のように何回も翔太さんとやり取りするようになったそう。
「そしたら翔太さんの好物がビーフシチューだというので、だったら私が作りに行くよという話になり、休みの日が合わないので大変でしたがなんとか調整して初めてのデートをすることになったんです」
◆初デートは「もう付き合っているかのようないい雰囲気」
デートの当日、2人は待ち合わせをしてスーパーに行き食材を調達し、翔太さんの部屋に向かいました。
「まるでもう付き合っているかのようないい雰囲気でしたね。ちょっといきなり家に行くのはどうかな?という不安もありましたが、桃代の友達ということで、まぁ大丈夫だろうと思いました」
幸いビーフシチューは千夏さんの得意メニューだったので、圧力鍋を持参して腕を振るったそう。
「翔太さんは『おいしい、おいしい!』と大喜びで食べてくれました。そしてあっという間に平らげて、おかわりすると席を立ったので、私は食事を続けながら微笑(ほほえ)ましい気持ちで彼の後ろ姿を見守っていたんです」
◆幸せな空気が一変
そしてテーブルに戻ってきた翔太さんを見て、千夏さんは「えっ?」と思わず声をだしてしまいました。
「翔太さんがよそったビーフシチューは、お肉がゴロゴロ入っていて…ていうか肉しかないというか、鍋の中のお肉が全部入っている感じだったので、つい『どうしてそんな自分本位なよそいかたをするの?』と聞いてしまったんですよね」
ですが翔太さんはキョトンとして、何がいけないのか分かっていない様子だったそう。
「なので『ちゃんとお肉、じゃがいも、にんじん、玉ねぎをバランス良くよそわないと、残りのシチューが野菜しか入ってなくなるでしょ?自分が好きなだけ肉を食べられれば、後はどうでもいいの?』とたたみかけたら、あからさまに機嫌が悪くなり舌打ちされたんですよ」
◆舌打ちする彼「これまで非難されたことはなかった」
翔太さんが言うには、今までお母さんや歴代の彼女の料理をこの調子で食べてきたけど「美味しそうにいっぱい食べてくれて嬉しい!」と感謝されるばかりで、非難されたことなど一度もなかったそうで…。
「お母さんならまだしも、歴代の彼女はよほど母性の強い人だったのか…とにかく私には信じられませんでした。だって全く相手のことを考えていないってことですよね?
もし私がおかわりしたくなって、お肉が残っていなくて悲しんだらどうするの?そういう想像力はないの?って不思議で」
そのような翔太さんの振る舞いを見ても、さほど気に留めない女性も一定数いると思いますが、千夏さんはどうしても許せませんでした。
◆父は“食べつくし系”…トラウマが呼んだ災難
「実は私の父がいわゆる“食べつくし系”で子供の頃から、私や母親のメインディッシュを平気で横取りしたり、よそからいただいた高級なケーキを独り占めされたりして、とても哀しい思いをしてきたんですよね」
その度に“父はこうやって自分の立場が上なことを誇示して、気持ちよくなっているに違いない。結局私や母には何をしてもいいと軽く見ていて、つまりはバカにされているのだろう”と絶望的な気持ちになっていたそう。
「そんな家庭環境だったので、翔太さんのしたことに過剰に食いついてしまったのですよね…でも、どうしてもゆずれない部分だったし、私のこだわりなので、相性が悪かったんだと諦めることにしました」
それ以来、翔太さんとは連絡をとるのをやめました。
「別れ際、翔太さんに『残りの肉なしビーフシチューどうするの?』と聞いたら、味気(あじけ)ないから捨てると言うので持ち帰りました。
付き合う前に合わない相手だって気がつくことができて良かったですが、なんか虚しい気持ちになってしまいました」とため息をつく千夏さんなのでした。
<文&イラスト 鈴木詩子>
【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop