三笘薫の「縦抜け」が激減しているのはなぜか プレミアリーグ日本人対決は鎌田大地に軍配

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2024年12月16日 11:20  webスポルティーバ

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 三笘薫対鎌田大地。プレミアリーグ第16節は後半15分から日本人対決が実現した。ブライトン対クリスタル・パレスの一戦である。

 ここ最近、ファビアン・ハーツラー監督の采配が冴えず、格下相手に勝ち点を思うように積み重ねることができずにいるブライトン。最高位4位から順位を3つ下げ、7位でこの試合を迎えることになった。対するクリスタル・パレスは開幕から8戦勝ちなしと、スタートダッシュに失敗したが、ここ数試合で持ち直し、17位まで順位を回復していた。

 前節、ブライトンのハーツラー監督は、最下位のレスター相手に2−1とリードして最終盤を迎えると、三笘を下げ、ブラジル人CBイゴール・ジュリオを投入。純然たる5バックスタイルで逃げ切りを図ろうとしたものの、後半のアディショナルタイムに同点弾を浴び、白星を逃すという失態を演じていた。その前のフラム戦では左右非対称な3−4−2−1を採用。森保ジャパンよりは5バックになりにくい3バックだったが、4−2−3−1が大半を占めた従来と、方向性は変わりつつあった。

 クリスタル・パレス戦。注目された布陣は4−2−3−1だった。一方、オリバー・グラスナー監督率いるクリスタル・パレスは3−4−2−1。5バックになりやすい守備的な3バックで受けて立った。

 試合は布陣の特性どおり、ブライトンが試合を押し気味に進める。

 開始3分にはジョアン・ペドロ(ブラジル代表)からのパスを受けた三笘が決定的なシュートを放っている。クリスタル・パレスのGKディーン・ヘンダーソン(イングランド代表)に好セーブを許したが、このシュートが決まっていれば結果は違っていたと思われる。

 ブライトンは27分、CKから先制点を許すと33分にもセットプレーの流れから追加点を許す。ここ数試合の悪い流れは続いていた。

 前半を終えて0−2。するとブライトンのハーツラー監督は、ここ最近の試合がそうであるように布陣をいじった。前々戦では5バックになりにくい3バック。前戦では5バック同然の3バック。このクリスタル・パレス戦はどうだったかといえば、採用したのは数ある3バックのなかでも超攻撃的といわれる中盤ダイヤモンド型の3−4−3だった。逆転を懸け、一発勝負に出た感じだった。

【三笘らしさを発揮したシーン】

 言わずと知れたアヤックススタイルである。ジョゼップ・グアルディオラがバルセロナ時代、たびたび使用したヨハン・クライフ譲りの3バックとしても知られるが、この布陣でアヤックスを欧州一に輝いたルイス・ファン・ハールに言わせれば「あらゆる布陣のなかで最もパスコースが多い布陣」となる。

 日本では、超攻撃的サッカーを標榜する一部の監督を除き、ほとんど浸透していない3バックでもある。日本代表戦でいえば、オシムジャパン時代のガーナ戦(2006年10月)で披露された。 

 この中盤ダイヤモンド型3−4−3は、4列表記に直せば3−3−3−1、3−3−1−3、3−1−3−3で、ブライトンの中盤にはフリオ・エンシソ(パラグアイ代表)を1トップ下に、左ヤシン・アヤリ(スウェーデン代表)、右ジョルジニオ・ルター(元U−21フランス代表)、アンカーにカルロス・バレバ(カメルーン代表)が座った。

 森保ジャパンとの最大の違いは、三笘がウイングバックではなく純然たるウイングに収まったことだ。ウイングバックのいない3バックである。サイドアタッカーの枚数は1.5人(ウイング1と、サイドハーフを0.5に見立てる)になる。4−2−3−1は2人(ウイングとSB各1)なので、0.5人分減ることになったが、クリスタル・パレスはサイドアタッカーが両サイド各ひとりの3−4−2−1である。ブライトンがサイドで数的不利に陥ることはなかった。

 攻めるブライトン、守るクリスタル・パレスの構図は鮮明になる。その流れで迎えた後半9分。三笘がこの日、彼らしさを最も発揮したシーンが訪れた。ブライトンはクリスパレス陣内でこれでもかとパスをつなぎ、その15本目にあたるパスがバレバ経由で三笘の足下に収まった。

 対峙する相手の右ウイングバック、ダニエル・ムニョス(コロンビア代表)と1対1になると、三笘は仕掛けた。そして後ろ足に当たる右足のインサイドでボールを押し出すように縦に出た。ムニョスのタイミングを外し、ゴールライン際の最深部に進出。すかさず左足でマイナスの折り返しを敢行した。

 ジョアン・ペドロのシュートはゴールの枠の前で構えた相手DFに跳ね返されたが、ウイングらしいプレーとはこのことである。ここ数試合、三笘から拝むことができなかったプレーでもあった。

【ブライトンのサッカーは多彩だが...】

 ただし、この試合でも縦抜けはこのプレーが最初で最後だった。三笘がウインガーの象徴的なプレーにあたる縦抜けにトライする数は、ここにきて確実に減っている。その一方で、増えているのは右のアウトを使っての横パスだ。最深部を深くえぐらずに浅い位置から折り返すプレーである。受ける側がシュートに持ち込みやすいのは断然、マイナスの折り返しだ。

 相手のタイミングをずらし、縦抜けを敢行するためにはフェイントにキレがなければならない。プレーの難易度は高い。だが、それを決めればウイングとしての価値は大きく上がる。最近の三笘はそれができずにいる。ウイングとして決定的なプレーを発揮できずにいる。気持ちが守りに入っている印象だ。それがブライトンの攻撃に微妙な影響を及ぼしている。勢いを与えることができていないのだ。安定はしている。貢献度も高い。しかし、ここ数試合の三笘には真の怖さがない。

 鎌田は後半15分から、3−4−2−1のシャドーのポジションでプレーした。だが、ベンチからの指示なのだろう、構えたポジションは真ん中寄りではなく、サイドアタッカー然と左サイドに近い位置を取った。サイドアタッカーの数を1.5(ブライトン)対1(クリスタル・パレス)と先述したが、鎌田を開き気味に構えさせることで、サイドにおける数的不利を解消しようとした狙いを感じる。

 三笘と鎌田はこの時、ピッチの対角で構え合う感じになっていた。その影響だろうか。一方的だったブライトンのペースは徐々に鈍っていく。

 後半37分、クリスタル・パレスは、イスマイラ・サール(セネガル代表)のダメ押しゴールで3点目を挙げると、ブライトンの反撃を後半追加タイムに許した1点に抑え、1−3のスコアで勝利した。

 ブライトンは、3−1で勝ってもおかしくない試合を落とした格好だ。ハーツラー監督は前任のロベルト・デ・ゼルビのような一貫した哲学の持ち主ではない。守備的サッカーもすれば攻撃的サッカーもする。3バックにも幅がある。多彩と言えば多彩。テクニカルだ。サッカーをよく知っている監督に見える。だが、言い換えれば、それは器用貧乏にも見える。

 チームに勢いをもたらすことができずにいる。こじつけるわけではないが、それが三笘のプレーにも影響を与えている気がする。昨季より縦抜けにトライする数は激減した。大胆なアタッカーというより、小器用なMF的プレーになっている。イケイケな感じがしないのだ。

 とはいえ、この試合でも三笘は先発フル出場を果たしている。10点満点の採点なら7は十分に出せるだろう。一方、30分+アディショナルタイムの出場に留まった鎌田は6.5か。今後に向けて楽観的になれるプレーぶりだった。

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