ダイハツ工業が国内で生産・開発する全28車種の認証不正の発覚を発表してから、20日で1年を迎える。同社は完成車を生産する国内4工場全てを停止。生産再開後も販売台数は振るわず、業績立て直しへ道は険しい。一連の問題では親会社のトヨタ自動車やホンダ、マツダなど5社でも同様の不正が見つかり、日本の自動車産業の信頼性を揺るがす事態に発展した。
「現実路線に沿った生産技術や原価低減が必要だ」。ダイハツの井上雅宏社長は10月中旬、同社が掲げる「良品廉価」に改めて取り組むことで、事業を再建する決意を表明した。
ダイハツが国内全4完成車工場の生産を再開したのは生産停止から約4カ月後の今年5月。ダメージは大きく、同1〜11月の国内新車販売台数は33万3594台と前年同期の6割にとどまり、主力軽自動車「タント」は43%の大幅減。11月には認証不正の影響で新保安基準への対応が遅れた一部車種の生産も停止し、影響は長期化している。
ダイハツは、2023年4月に海外市場向け4車種で国土交通省が定める「型式認証制度」に関し不正行為があったと発表した。同12月20日に発表された第三者委員会の調査では、対象は国内で生産・開発する全28車種に拡大。年始の書き入れ時を控えた発表に系列販売店から「築いた信頼が一瞬で崩れた」と悲鳴が上がり、影響は車両供給先のトヨタやSUBARUなどにも広がった。
ダイハツは一連の原因について迅速な開発を重視するあまり、認証手続きの順守がおろそかになったと総括。開発期間の延長や認証担当者の増員といった再発防止策を打ち出したが、不正で開発も一時中断したことから事業計画は大幅に停滞した。24年中は新車を全く投入できず、同年春までの発売を予定していたトヨタ、スズキとの共同開発による商用電気自動車(EV)は年末を迎えても生産開始のめどが立っていない。
6月にはトヨタやマツダなどの看板車種でも不正が発覚し、「認証制度軽視」の批判は業界全体に向けられた。東海東京インテリジェンス・ラボの杉浦誠司シニアアナリストは「日本の自動車産業が国際的に事業を拡大する中で、見落とされていた暗部が浮き彫りとなった。信頼回復に3〜5年の期間を要するのではないか」と指摘した。
操業を再開したダイハツ工業の本社工場=5月7日、大阪府池田市