アメリカの大手ファミリーレストランチェーン「IHOP(アイホップ)」で働く女性スタッフが、空腹を訴えるホームレスの男性に食事と水を提供したところ、突然解雇されるという出来事が起きた。彼女の行動に対し、店舗マネージャーは「客の安全を脅かす可能性がある」と激怒。そのわずか2日後、彼女は職を失った。
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「IHOP」の公式ウェブサイトには、次のようなメッセージが掲げられている。
「私たちは65年以上にわたり、温かくフレンドリーなサービスとともにお食事を提供しています。どうぞ堅苦しい服装を気にせず、普段着でお越しください。」
このような「温かさ」を掲げるチェーン店で、いったい何が起きたのか。
■自腹で買ったパンケーキが問題に
ビクトリア・ヒューズさん(Victoria Hughes)は2013年からフロリダ州レイクランドのIHOPで働いていた。11月24日、店舗を訪れた空腹のホームレス男性に同情した彼女は、自分のポケットマネーでパンケーキと水を購入し、それを男性に渡した。その後、彼女はこの行為をマネージャーに報告した。
だが、予想外の反応が返ってきた。マネージャーは「ホームレスが不法滞在者である可能性や、他の客の安全を脅かす可能性がある」として激しく怒り、彼女の行為を問題視。ヒューズさんは驚きながらも、職場での規則を破ったのかもしれないと一度は自らを納得させた。
■ホームレス男性の再訪と突然の解雇
その後、ホームレス男性は家族とともに再び店舗を訪れ、今度は自分で支払いをして食事を楽しんだ。しかし、これで状況が好転することはなかった。2日後、ヒューズさんはマネージャーから突然「会社の方針」を理由に解雇を告げられた。
■地元メディアの報道が状況を一変させる
この出来事が地元フロリダ州のニュース番組『News Channel 8』で報じられると、事態は急展開を見せる。IHOP本社はヒューズさんに直接連絡を取り、職場復帰を提案。さらに、解雇中の日数分の給与を欠勤扱いとして補償すること、ヒューズさんが選ぶ慈善団体への「かなりの金額」の寄付を申し出た。
また、IHOPのフランチャイズ展開を担当する「Sunshine Restaurant Partners」の責任者ダン・エニア氏は、「今回の件を徹底的に調査し、食糧不安に直面する人々への支援を行う」と声明を発表した。
さらに報道を受けて、SNSやオンラインフォーラムで大きな議論が巻き起こった。多くの人がヒューズさんの行動を称賛する一方で、企業の判断や社会的背景についての意見も飛び交った。
「彼女はヒーローだよ! 自腹で食事を買って与えただけなのに、解雇なんてありえない。」(アメリカ・カリフォルニア州のユーザー)
「IHOPは『フレンドリーで温かいサービス』がモットーだと言うけど、これがその結果ならブランドの価値が疑われる。」(イギリス・ロンドンのユーザー)
「ヒューズさんのような人が増えれば、世界はもっと優しくなるはず。解雇ではなく表彰すべきだ。」(オーストラリア・シドニーのユーザー)
「企業としての規則は必要。ホームレスに食事を与えることがトラブルを招く可能性もあるのでは?」(アメリカ・テキサス州のユーザー)
「マネージャーは店内での安全や秩序を守る責任がある。感情だけでは判断できない。」(カナダ・トロントのユーザー)
「根本的な問題は、アメリカでホームレスが増えていること。今回の出来事は、社会全体が抱える問題の縮図だ。」(アメリカ・ニューヨーク州のユーザー)
「企業だけを非難するのではなく、困窮者を支援するためのシステムを作るべきだと思う。」
■「後悔はない」―ヒューズさんの決意
ビクトリア・ヒューズさんは、解雇される結果になったとしても、ホームレス男性に食事を与えたことは全く後悔していないと語る。
「あの時の選択は間違っていない。同じ状況なら、私は再び同じことをするでしょう。」
現在、彼女はIHOPからの職場復帰の提案を辞退している。
画像は『The Independent 「IHOP worker fired for feeding a homeless man gets offered her job back」(screengrab/GoFundMe)』より
(TechinsightJapan編集部 八田理子)