次期エネルギー基本計画原案に原発を最大限活用する方針が示され、産業界からは「当然」(大手商社幹部)、「やむを得ない」(流通大手)と支持する声が上がった。人工知能(AI)普及や半導体の製造拠点拡大などで電力需要の増大が見込まれており、供給不安で調達コストが重くなることへの懸念が強いためだ。
経済同友会の新浪剛史代表幹事は17日の記者会見で、「日本のエネルギー事情を考えた上での判断。地元の理解を得て原発を再稼働させる仕組みができてきたことを前提としている」と指摘。2040年度の電源に占める原発の割合を2割程度とすることを評価した。
安価で安定的な電力の確保は、ものづくりの生命線と言える。自動車大手は「政府にはどのような手段であっても電力を安定的に供給してもらいたい」と要望。日立建機の先崎正文社長は「日本のエネルギーコストは高い。バランスを修正すべきだ」と語り、原発への依存度が極端に低い現状を見直すよう訴える。
人件費負担に悩むサービス業でも同様だ。「これ以上の電気代上昇を抑えられるなら原発回帰もやむを得ない」(流通大手)と切実。ただ、各社とも「安全性が確認された原発の再稼働」(大手商社)を求めており、あくまで安全第一の姿勢を強調する。
再生可能エネルギーが40年度の最大電源に位置付けられたことには賛否が分かれる。工場を連続操業させる化学大手は「電力や熱の確保という観点から再エネは必ずしも有効ではない」(技術・研究担当)との見方を示す。商船三井は「再エネ化で低・脱炭素船舶燃料の入手が容易になれば、海運業界の脱炭素化に資する」(サステナビリティー担当)と期待している。