Q. 一人暮らしの母の元気がない。それだけで病院を受診させるべき?
Q. 「実家で一人暮らしをしている母がいます。年に1、2回ほど帰省するのですが、久しぶりに会うと、普段よりも元気がなさそうでした。母本人は、『何も困っていない』と言っており、話していても認知症を疑うほどの言動はありません。元気がないだけで病院に行くよう促したほうがいいのか、高齢者なら自然なことなのか、アドバイスをいただきたいです」
A. 認知症だけでなく、うつ病などの可能性も。様子を見て
久しぶりの帰省をきっかけに、離れて暮らす家族の異変に気付く人は少なくありません。「元気がない」というだけで、どのような病気が考えられるか挙げるのは難しいのですが、認知症を除外すると、高齢者に多い「うつ」も見逃してはいけないものの1つです。うつ病は珍しい病気ではありません。人口のおよそ5〜8%の人が、人生で一度はうつ病を発症すると言われています。注意すべきなのは、誰でもなる可能性があるという点です。「長い人生で色々なことがあったけれど、心の病気になったことはない」という人でも、例外ではありません。
「うつ病」の場合、精神的な落ち込み以外にも、さまざまな変化が起こります。
・それまで楽しめていたことや趣味を楽しめなくなる
・食欲がない。または、反対に食欲がありすぎる(体重の減少や増加)
・寝つきが悪い、早朝に目が覚める、眠りすぎるなどの睡眠障害がある
・不安、焦燥感が強い
・自責の念が強くなる
・頭の回転が遅くなり、記憶力が低下する
・物事の決断をするのが苦手になる
・疲れやすく、日中の活動量も低下する
もしこれらの異変が見られるなら、注意が必要です。人間には気分の浮き沈みがありますから、一時的な落ち込みということも考えられます。しかし、うつ病の場合は通常の落ち込みとは異なり、放っておいてもよくなることはなく、悪化していきます。
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中嶋 泰憲プロフィール
千葉県内の精神病院に勤務する医師。慶応大学医学部卒業後、カリフォルニア大学バークレー校などに留学。留学中に自身も精神的な辛さを感じたことを機に、現代人の心の健康管理の重要性を感じ、精神病院の現場から、毎日の心の健康管理に役立つ情報発信を行っている。(文:中嶋 泰憲(医師))