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東京のホテル価格が高騰している。RevPAR(1日に販売可能な客室当たりの売り上げ)は、2019年の1万円前後からコロナ禍で暴落したものの、2023年末に1万4000円を突破。今年の11月は1万8308円となった(東京ホテル会調べ)。
地方の旅行者や出張族がホテル選びに苦戦するという話も聞かれる。インバウンドの増加が主要因とみられるが、どのようなメカニズムが働いているのか。業界関係者に取材した。
●都内で1万円未満はレア 週末にいたっては相場が倍に
都内ホテルのRevPARはコロナ禍の2020〜21年こそ5000円以下まで下落したが、2022年末に1万円を突破。以降も上昇を続け、今年の3月には1万5000円を超えた。8〜9月は1万3000円台まで下落したが、再度急上昇し、11月には1万8308円となった。11月の客室稼働率も91.6%と高水準である。
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12月18日からオンライン予約サイトで1泊のホテルを探すと、23区内の一般的なビジネスホテルは1人1万円を超える。1万円以下で泊まれるのはカプセルホテルか、半分民泊のような施設、評価の低いホテルが目立つ。
休日はさらに高騰する。21日の宿を探したところ、カプセルホテルでも1万円を超え、ビジネスホテルは軒並み2万円超だ。高級ホテルではないにもかかわらず、1泊3万円以上の宿も見られる。OTA(オンライン旅行会社)関係者は次のように話す。
「昨今は、都内の大手ビジネスホテルで1万円を下回ることはありません。インバウンドに人気の山手線沿いが特に価格を引き上げています。国内出張者が多く泊まる日本橋界隈も、運が良くない限り1万円以下で泊まれることはありません」
●数は少ないが“太客”なのがインバウンド
ホテル価格高騰の主要因はインバウンドの増加とされるが、具体的にはどういうメカニズムで値段が決まるのだろうか。
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「近年の高騰はインバウンド急増による実需に伴った動きですが、2つのパターンが見られます。1つは、官公庁が公表しているインバウンドに関連する統計や国当たりの消費額データを基に、価格を決定するものです。もう1つが、周りのホテルに合わせる手法で、インバウンドをメインターゲットにしないホテルはこちらの要因で値上げする傾向が見られます」(OTA関係者)
都のデータを見ると、2023年度の旅行者数は日本人が4億7456万人、外国人が1953万人で、日本人がケタ違いに多い。一方、宿泊数では日本人の多くが「2泊以下」なのに対し、外国人は2泊以下が15.4%に過ぎず、3泊が16.9%、4泊が18.1%。7泊以上も25.9%で、数が多いのは日本人だが、外国人の方が“太客”であり、ホテル価格への影響もそれなりにあると考えられる。
価格高騰が著しい2024年度はインバウンドが月300万人ペースで推移し、10月までの累計で3000万人を突破。コロナ禍前の水準を既に超え、同月までの累計で3000万人を超えたのは過去最速だという。
円安の影響も大きいとみられる。単純計算で、2019年度より1.3倍も円安となっている。インバウンドの国別では韓国などアジア圏が多いが、購買力の高い欧米の観光客は長期で泊まる傾向があるとされる。
●「1万円の壁」どうすれば安く出張できるのか
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そんな昨今、出張族が1万円以下で「都内」に泊まりたい場合、どうしたらいいのだろうか。前述のOTA関係者によると、やはり23区内は難しく、都心から離れなければならないという。
「当たり前ですが、価格を抑えるには需要の大きいエリアを避けなければなりません。特にインバウンドが泊まらないエリアを選ぶ必要があります。東側では葛西や小岩、西側では府中や八王子当たりが狙い目です。加えて、前々から予約を取るか、連泊にすることで少しは安くできるでしょう」
筆者が調べたところ、小岩近辺は平日なら1万円以下で泊まれるようだ。八王子でも、平日・土日問わず1万円以下で泊まれる。都内から外れ、新幹線停車駅であり都心部へのアクセスもほどほどな、埼玉県・大宮駅周辺の宿でも、平日は1万円以下の宿も多いが、休日は1万5000〜2万円以上に高騰している。とはいえ出張で、オフィス街のある都心部から往復1時間以上かかる場所に泊まるのは現実的ではない。悩ましいところだ。
●1泊2万、3万円も非現実的ではない
都内でも特に混雑している浅草・上野界隈を見ると、これ以上、増え続けるインバウンドを受け入れる余地はあるのかと疑ってしまう。しかし、政府は2030年までのインバウンド目標を6000万人に設定し、今後も積極的に誘致する方針だ。
目標の達成に向けて、価格以外にもホテル業界では供給面の課題が多い。建築費の高騰で着工床面積は年々減少しており、アパホテルも国内全体で2024〜26年の開業件数(直営)を2021〜23年度より4割減らす計画だ。
昨今は人材不足が進み、人件費の高騰もホテル価格を押し上げている。供給不足にインバウンド需要のさらなる増加が加わった結果、都内ホテルの平均単価が2万円、3万円とさらに上昇するのは容易に想像できる。円安で輸出産業と観光産業を支えるという国の方針は当分、変わりそうになく「東京への出張は都心から1時間の場所で宿を取る」という妥協が求められそうだ。
●著者プロフィール:山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。
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