22日に中山競馬場で行われる第69回有馬記念(3歳上・GI・芝2500m)。ファン投票で断トツ1位となり有終の美を狙うドウデュース(牡5、栗東・友道康夫厩舎)、2連勝で菊花賞を制覇したアーバンシック(牡3、美浦・武井亮厩舎)、日本ダービーで世代の頂点に立ったダノンデサイル(牡3、栗東・安田翔伍厩舎)、昨年の有馬記念2着馬スターズオンアース(牝5、美浦・高柳瑞樹厩舎)らが集結した。
この豪華メンバーのグランプリをプロ予想家はどう見るか。レース質予想のパイオニア・立川優馬氏による展望をお届けする
(文=立川優馬)
◆先行集団を形成するのが内枠勢か外枠勢か
今年も有馬記念の季節がやってきました。毎年、有馬記念の枠順抽選会では関係者の悲喜こもごもが見られます。有馬記念の枠順の有利不利については多くの予想家が触れるはずなので、ここではレース質から見る有馬記念の脚質面の有利不利について見ていきます。
過去10年の有馬記念の脚質面の有利不利をまとめると以下のとおり。
〇先行有利 2023年、2017年、2016年、2015年、2014年
〇差し有利 2022年、2021年、2020年、2019年、2018年
年によって馬場状態のばらつきがありますが、近年の有馬記念は先行差しが五分五分。この差を生み出している原因の一つが、「逃げ先行馬の枠順」です。
「先行有利」だった5年のうち、2015年を除く4年全てで内枠勢が先行集団を形成する隊列、「差し有利」だった5年のうち、2021年パンサラッサの大逃げや2020年バビットの離し逃げを例外とすると、全5年で外枠勢が先行集団を形成する隊列でした。
中山芝2500mのもつレース質は「内枠・先行・スローペース」。外回りの3コーナー出口付近から発走して、坂を下りながら約192mと短い中で先行争いをしながら最初のコーナーに突入します。レースにおける最加速地点はテン2F目ですから、そこでちょうどコーナーを迎えるため、基本的にペースが緩んで内枠先行有利に傾きやすいレイアウトをしています。
このとき、外枠の馬が先行するためには内枠の馬よりも速い速度で坂を下りながら押して出していく必要があります。そのため、外枠に先行馬が入るとペースが上がりやすく、先行馬の負荷も高くなりやすいのがコースの特徴です。
ペースの緩む下級条件ならまだしも、GI馬がしのぎを削るグランプリ・有馬記念、しかも暮れの馬場状態が微妙な中で外枠から先手を主張する馬が多くなるとペースが上がって前が苦しくなり、差しが届くというメカニズムが有馬記念の脚質面の偏りを誘発しているのです。
今年は明確な逃げ馬がおらず、出走馬の中で先行しそうなのはスターズオンアース、スタニングローズ、ダノンデサイル、ディープボンド、ベラジオオペラ辺りでしょう。先行有利だった4年(2017年除く)は内枠の馬が先行したことでテン500mが30.1秒以上掛かる緩い流れ。例年以上に馬場状態がよい今年は、内枠勢が主張すればスローペースによる内枠先行決着濃厚と見ます。
今年の枠順抽選会では、多くの人が枠の有利不利に気を取られる中で、ぜひ逃げ先行馬の枠に注目してみてください。