2024年、反響の大きかった記事からジャンル別にトップ10を発表。危険な運転は許さない「あおり運転」部門、仰天のエピソード第9位の記事はこちら!(集計期間は2024年1月〜10月まで。初公開2024年7月15日 記事は取材時の状況、ご注意ください) * * *
ニュースなどで頻繁に取り上げられる「あおり運転」。被害者の精神的苦痛は深刻であり、トラウマにもなりかねない。
自動車損害保険を扱うチューリッヒ保険は今年、『2024年あおり運転実態調査』を実施。あおり運転をされたことがあるドライバーは72.5%であった。昨年の53.5%よりも大幅に上昇し、この半年間でも24.1%と多くのドライバーがあおり運転に遭遇していることがわかった。
今回は、あおり運転の加害者に訪れた悲劇を紹介する。
◆交番を過ぎた途端に猛スピードで“あおり運転”
加藤優紀さん(仮名・30代)は、夜の道を運転していたときに、あおり運転に遭遇した。目的地までの道には大きなバイパスがあり、スピードを出す車が多いようだ。
「その日もスピードを出す車が多いなか、雨が降っていたこともあり、いつもより慎重に運転していました。すると、後方から車間距離を詰めてくる車がいたんです。なるべく平常心を保ち、スピードを上げずに運転していたのですが……」
バイパスには交番があり、後方の車はその手前からスピードを落としたそうだ。車間距離をあけて走行していたので「これで、あおられる心配はなさそう」とホッとしたのも束の間……。交番を過ぎると、猛スピードでピッタリと後ろにつけてきたという。そして、次の瞬間……。
「目前に赤信号が迫っていたので一時停止しようとすると、急に私の車を追い越して止まりました」
突然の追い越しに“ヒヤッ”とした加藤さんだが、「青信号になればスピードを上げて走り去ってくれるだろう」と安堵していた。しかし……。
「スピードを上げるどころか蛇行運転をして、今度は私の走行を妨害してきたんです!」
加藤さんは、さすがに憤りを覚えクラクションを鳴らしてしまったそうだ。
「それが相手の思うツボだったようで、余計におもしろがって蛇行運転を続けてきたんです。進路変更してその場から離れることもできたのですが、目的地まで3分ほどの距離だったので我慢しました」
◆突然現れた救世主「警察に通報させてもらいました」
すると、後方からパトカーのサイレンが聞こえ、あっという間にあおり運転の車を取り締まってくれたのだとか。
「警察から路肩に停止を求められて運転手は焦ったのか、縁石ブロックに乗り上げていました。その状況をみて、正直“スカッ”としました。
当初は“交番の警察官が異変に気づき、取り締まってくれたんだな”と思っていたんですが、車から降りると、1人の男性が近づいてきました。『さっきは大丈夫でしたか? 執拗にあおり運転されているのをみて、警察に通報させてもらいました。無事でよかったです』と話してくださいました」
突然の救世主の登場に、加藤さんは「感動したのを覚えています」と、当時の心境を教えてくれた。
◆デートの帰り道に遭遇した速度100キロ超の車
当時、彼女と遠距離恋愛をしていた田中良治さん(仮名・40代)は、デートの日は、自宅から50キロほど離れた場所にある彼女の家まで送り迎えをしていた。深夜であれば道が空いていて、片道1時間ほどだったそうだ。
「この日もいつものように彼女を送ったあと、自宅に向かって国道を走っていました。深夜3時ごろだったので交通量は少ないですし、大半の信号は点滅信号に変わるので、信号で止まることもありません」
前方にはトラックが走っていたという。田中さんは、そのあとをのんびりと走っていた。すると……。
「後方から勢いよく車が近づいてきたんです。スピードは、おそらく100キロ以上出していたと思います。私の車に追いつくやいなや、車間距離数メートルの距離に張りついてきました」
法定速度で走っていた田中さんは、前方にトラックが走っており、速度を上げることができなかったと振り返る。しばらくして、道路はカーブの多い区間に入ったという。
「カーブに入ると、トラックがスピードを落としたからか、あおり運転の激しさが増しました。そして、車体を大きく左右に振りはじめたんです。センターラインはオレンジだというのに、そんなこと関係ないとばかりに、対向車線にはみ出してあおってくる始末です」
◆追い越した瞬間、畑に突っ込んで…
「“変な車に捕まったな〜”と思いながら走っていると、カーブ地帯を過ぎて追い越し可能になりました。『待ってました!』と言わんばかりに、私の車を追い越そうとしたんです」
しかしその瞬間、田中さんは“悲劇”を目撃することになる。
「道幅の狭い道路と交差点に差しかかり、対向車線をトラックが走っていました。対面通行がしづらい道路だったためか、あおり運転をしていた車はトラックから幅寄せされるかたちになり、反対車線側にある畑へと突っ込んだんです。事故後、運転手がすぐに車から出てきたので、大きなケガはなかったようでしたけど……」
ただし、車はバンパーが傷み、運転は不可能な状態だったという。田中さんは、“あおり運転なんてするもんじゃないよな〜”なんて思いながら、現場をあとにしたそうだ。
<取材・文/chimi86>
【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。