◆ 来年から「7回制」の本格議論がスタート
高校野球のイニング数を「7回制」に短縮するかの議論は、来年中に結論が出されることになった。
日本高野連が「7イニング制等高校野球の諸課題検討会議」を新設し、7回制についての対応策を来年12月に開催される理事会までにまとめると発表したのだ。
この対応策の中身について同連盟の井本亘事務局長は「何らかの方向性は出したい」と言及しており、7回制導入の可否は来年12月までに決着することに決まった。
なぜ、7回制の議論が始まったのか。
現在の高校野球は、部員数減少や酷暑、肩肘についての障害予防などの課題解決が急務となっている。そこで日本高野連は、U18ワールドカップなど高校生世代の国際大会で採用されている7回制を導入した場合に、どのような効果が生まれるかを調べることに決めた。
まず、同連盟内に「高校野球7イニング制に関するワーキンググループ(WG)」を設置した。同グループでは同連盟の北村雅敏副会長を座長、U18高校日本代表監督の小倉全由氏ら計11人を委員とし、導入した際に生まれる長短所を話し合った。
井本事務局長は「日本の高校野球は、大きな転換点に立っているのではないかと思う。広い視点で高校野球の普及にどうつながっていくかを検討する」と説明。前例に縛られずに議論することの重要性を強調してきた。
WGは4度開かれ、同制度のメリットとデメリットを今年12月の理事会で説明した。
メリットは「障害予防の推進」、「熱中症リスクの減少」、「安全重視のメッセージの発信」、「国際基準への習熟」など、デメリットには「試合を楽しむ時間の減少」、「出場機会の減少」、「上部カテゴリー(大学、プロ)などとの連続性の喪失」、「過去大会との記録比較不可」、「歴史的価値の減少」などが挙げられた。
長短所の整理を目的としたWGは今年限りで終了し、来年から実際に導入するかを検討する「7イニング制等高校野球の諸課題検討会議」に議論の場を移すことになる。
決して、7回制は導入を前提に検討されてきたわけではない。
日本高野連の宝馨会長は、来年から始まる本格議論を前に以下のようにコメントしている。
「高校野球に限らず野球界全体の試合時間が長く、時間短縮は大リーグでも工夫されている。まずは試合時間短縮に向けて最大限の努力をする。短縮できれば、議論の方向も変わってくるだろう。時間がかかりすぎるとなれば、7回制導入もあり得るかとは思う。様々な諸課題をトータルに考え、7回制をどのように考えていくかだと思います」
この発言からも「試合時間の短縮」が7回制導入の大きなポイントになる。つまり酷暑での試合時間を短くする熱中症対策の一環として、7回制の導入を検討していると考えられる。
日本高野連は、クーリングタイムや2部制を導入するなど酷暑対策を前進させ続けてきた。
そして、熱中症対策のためには7回制の導入を避けて通れないと判断すれば、来年中に大きな決断を下すことになる。反対に、別の方法で暑さ対策を改善できるとなれば、7回制導入は見送る方向に進むだろう。
宝会長は「議論の行く末には、かなりの時間がかかると思っている。3カ月に1度ぐらい(の話し合い)では結論まで至らない。頻度高く話し合う」と言及した。
日本高野連は決着のメドをあえて設けることで、導入可否を先送りしない姿勢を示した。慎重かつスピード感を持った議論の末に結論が出されることになる。
文=河合洋介(スポーツニッポン・アマチュア野球担当)