フィギュアスケート全日本で鍵山優真が新時代の扉を開く「おもしろい試合になる」

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2024年12月20日 10:10  webスポルティーバ

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【ガッツポーズができるように】

 12月19日、大阪。フィギュアスケートの全日本選手権男子シングルは、群雄割拠の様相を呈している。各選手の実力は伯仲だ。

 もっとも、鍵山優真(21歳/オリエンタルバイオ・中京大学)は頭ひとつ抜けた存在と言えるだろう。昨年の全日本選手権で鍵山は、史上稀に見る激戦の末に、宇野昌磨に次ぐ準優勝だった。

「今日は練習してみて、初日から思った以上に動けているなっていういい感触です。明日(のショートプログラム)で、このままの気持ちを持っていけるように!」

 鍵山が、新時代の扉を開く。

 開幕前日練習で鍵山は氷の感触を確かめるように、丁寧に滑っていた。小さな体を大きく弾ませ、柔らかくしならせ、小さな"爆発"を繰り返すことによってダイナミズムをつくり出す。トーループ、サルコウ、アクセルなどジャンプを次々に成功。フリップは、最初こそ氷の感覚が合わなかったようだが、すぐにアジャストさせた。

 曲かけ練習は、フリーの『Ameksa』を選択。スパニッシュギターが叙情的に弦をつまびく音を拾いながら、軽やかにステップを踏む。ジャンプを跳ばずに、コースと振り付けを丹念に確認していた。GPシリーズのフィンランド大会でフリーは苦戦し、2位だったGPファイナルも本人は満足できなかったようだが......。

「ファイナル後、あまり時間はなかったですけど、ジャンプ、スピン、ステップと課題を見つめ直して、調整できたかなって。全日本でその成果を発揮できたらと思っています」

 鍵山はまっすぐな目で語っている。当然ながら、彼を囲む記者の数は際立って多かった。

「自分自身、僕ひとりでエースを名乗るほどでないと思っています。今の日本はすごく選手の層が厚い。僕だけじゃなくて、一緒に滑っているメンバーも、みんな優勝できる技術を持っていて。昨年の(全日本の)ようなおもしろい試合になるんじゃないかって思いますね。そうさせるためにも、まずは自分に集中し、自分自身に勝てるように。もちろん優勝という気持ちは強いし、僕も負けていられないなって」

 そう語る鍵山は結果以上に、プロセスを重視しているようだった。

「練習どおりの気持ちで、落ち着いて滑ることができるか。技術的にはいい感じでできているので、緊張している試合でも練習でやっている技術を出せるか。そこが大事ですね。自分の優先順位としては、結果よりもやるべきことに集中して。ショートで落ち着いて自分の演技をして、フリーではガッツポーズができるように」

【負けてられないと切り替えた気持ち】

 昨年12月、長野での全日本は、フリーでどんどん順位が更新されていく戦いで白熱した。今年も、近い展開になる公算が大きい。切磋琢磨の中で真価を発揮した選手が、表彰台の一番高いところに立つはずだ。

「(総合優勝もフリーでは5位だった)フィンランド大会後は、メンタルが死んでいました。でも自分がずっと落ち込んでいても、他の選手は1分1秒、練習頑張っているんだなって。その差で結果が変わってきてしまう。負けていられないなって切り替えて、(全日本まで)前向きに来られていると思います」

 前日練習のリンクサイド、全日本特有のひりつくような空気があったという。それぞれ集中し、決意に満ちた表情があった。独特の空気感は、鍵山を強く刺激した。

「全日本ならでは、という空気でした。それを不安と捉えず、楽しんでいけたらいいなって思います。(今シーズンは)気持ちの面で、緊張や不安を抱えてやることが多かったので、強い気持ちで"絶対に勝つ!"って」

 全日本初優勝に向けて、鍵山は虎視眈々だ。カロリーナ・コストナーコーチのアドバイスもあって、悪い時は悪いなりに滑れるようにもなった。準備に余念はない。

「今シーズンは、やりたい演技がなかなかできないので......なんでだろうって考えた時、やっぱり練習から(自分の演技を)信じていかないと、本番でも信じていられないって思いました。だから全日本では、1ミリたりとも弱いところを見せてはいけない。自分ならできる、という滑りを練習からつくれてきたと思います。フィギュアスケートって、結局は自分との戦いだと思っているんで、まずは自分に勝てるように落ち着いて!」

 12月20日、ショートプログラム。鍵山は『The Sound Of Silence』で決戦に挑む。王者のライバルは己だけだ。

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