19日(木)に行われた有馬記念の枠順抽選会は、主役不在ながら序盤から大いに盛り上がった。
主役とはもちろん武豊騎手のこと。JRA通算4553勝(先週末時点)を誇る競馬界のレジェンドは、同日に名古屋競馬での騎乗があったため、会場には駆け付けられなかった。しかし、1番人気が予想される相棒ドウデュースは見事に1枠2番を引き当てた。
あとはいかにしてドウデュースが有終の美を飾るか……。そう思いを巡らせていた20日(金)午後。突然入ってきたのは大本命馬の「出走取消」の一報だった。
ドウデュースの回避で今年の有馬記念は一転、混戦ムードとなりそうだ。
18日(水)に公開した記事では、東大卒の競馬予想家・鈴木ユウヤ氏にレースの見解を伺い、ドウデュース、ダノンデサイル、ベラジオオペラ、アーバンシックの4頭で予想を組み立てる決意を固めていた。
ドウデュース回避の一報が入るまでに予想も終わり、原稿も書き終えていたのだが、それもボツに……。再度、鈴木氏に話を伺った。
(取材日=12月20日)
◆ドウデュース回避で混戦ムードに
——ドウデュースが右前肢ハ行のためまさかのラストラン回避。イチから予想をやり直しです。
鈴木:ドウデュースがいなくなったことで、ペースが若干流れることになるかもしれません。最後方を進むドウデュースを各馬が気にしながらの競馬で超スローを想定していましたが、本命馬不在で色気を出して前に行く馬、もしくは早めに仕掛けていく馬が増えるかもしれません。
——ミドル〜ハイペースまでありますかね?
鈴木:さすがにそこまではないかと。流れてもミドル寄りのスローくらい。もともとドウデュースに次いでダノンデサイルとベラジオオペラを高く評価していましたが、その序列は変わりません。4番手に名前を挙げていたアーバンシックもそのままスライドさせて3番手評価でいいかと。
——たしかに名前が挙がった3頭は絶好の内枠をゲット。当日の馬場がどうなるかはわかりませんが、ラチ沿いのグリーンベルトを通ればその3頭で決まりそうな気はしますね。
鈴木:展開としては、ベラジオオペラがハナを切るとみています。
◆1番人気の可能性が出たアーバンシックは?
——シャフリヤール陣営が逃げ宣言していますが。
鈴木:あれは“三味線”ですよ(笑)。やはりテンが速いベラジオオペラが行くでしょうね。それをスターズオンアースかスタニングローズがマーク。ダノンデサイルは内の3番手が理想のポジションです。そうなれば、ゴール寸前でベラジオオペラを差してくれるはず。
——1番人気の可能性が出てきたアーバンシックは中団から後方ですかね?
鈴木:スタートがまともなら好位を進むダノンデサイルの背後につけたいでしょうね。ゲートに不安を残していますが、たとえ後手を踏んでも枠の並びを見る限りそれなりの位置は取れそうです。
◆3強に割って入る可能性のある穴馬は?
——となると、ベラジオオペラもそこそこ人気を集めそうですし、堅い決着になると……。穴馬を1頭だけでも挙げられますか?
鈴木:うーん。強いて“3強”に割って入る馬を挙げるとすれば、ジャスティンパレスですかね。
——去年の有馬記念で1番人気4着だった。あの時も最後はいい脚を使っていました。ただ、その後の成績を見ると頭打ちでは?
鈴木:前走のジャパンCは5着に負けていますが、内容は悪くなかったですよ。後方から差し切ったドウデュースは別として2〜4着はいずれも前に行った馬。そんな中、ジャスティンパレスは中団から切れ負けしての敗戦でした。そういう馬が有馬記念では来るんですよ。前走はドウデュースに次いで2番目に強い競馬をしていたと思っています。
——ちょっと人気が読めないですが、4番手はジャスティンパレスがオススメということですね。
鈴木:強いて挙げるとすればこの馬です。
―――わかりました。心は決まりました!
◆東大卒の頭脳を借りて勝負
話は逸れるが、私、中川大河は競馬観戦歴約35年の“ベテラン”。しかし、予想下手であり、大の馬券下手である。
基本的には大穴狙いで、上位人気馬を疑うところから予想を始める。今年のJRA・G1で的中したのは日本ダービーの三連複と宝塚記念のワイドくらいで、この秋はスプリンターズSから朝日杯FSまで連戦連敗の大スランプ(平常運転)に陥っている。
そこで、意を決して借りることにしたのが、私の“2倍近い偏差値”を持つ東大卒・鈴木氏の頭脳だ。普段の私ならディープボンドあたりに「◎」を打つだろう。
しかし、今回はこの秋のG1で絶好調の鈴木氏に乗ってみる。本命ダノンデサイルを1着に固定した三連単フォーメーションで大勝負することにした。
12月22日(日)15時40分発走となる第69回有馬記念。果たして、どんなドラマが生まれるのだろうか。
【鈴木ユウヤ氏 プロフィール】
東京大学卒。編集者を経てライターとして独立。中央競馬と南関東競馬をとことん楽しむために日夜研究し、Xやブログ『競馬ナイト』で発信している。好きな馬はショウナンマイティとヒガシウィルウィン。
取材・文/中川大河
【中川大河】
競馬歴30年以上の競馬ライター。競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。競馬情報サイト「GJ」にて、過去に400本ほどの記事を執筆。