<フィギュアスケート:全日本選手権>◇第2日◇21日◇大阪・東和薬品RACTABドーム◇男子フリー
ショートプログラム(SP)首位の鍵山優真(21=オリエンタルバイオ/中京大)が、7度目の出場で悲願の初優勝を果たした。
SPを92.05点で首位発信の鍵山は、フリーで205.68点をマークし、合計297.73点で首位を守った。
2010年の小塚崇彦以来史上2度目となる、91年から3連覇した父正和コーチとの父子優勝を達成した。過去12年間、続いてきた羽生結弦、宇野昌磨の2強時代から移ろい、名実ともに鍵山時代の到来を告げた。
前日20日のSP。3本目のトリプルアクセル(3回転半)で転倒し、今季自己最低となる92・05点での滑り出しとなった。演技直後の取材エリア。待機イスに座ってジッと一点を見つめていたが、インタビューが始まると顔つきが変わる。時折、笑顔を見せながら「転倒はあったけど、その後のステップでも感情を出せた」と、最後まで報道陣へは弱気な姿は見せない。「ネガティブな部分は、ささいなことで一気に広がる。そういうところは1ミリも出さずに、最初から最後まで強い意識を持って」と、すぐに気持ちを切り替えていた。
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気持ちの弱さが課題だった。11月のグランプリ(GP)シリーズ第5戦フィンランド大会、今月上旬のGPファイナルとミスが続くなど、今季の前半戦は思うような演技が続かなかった。
気分が沈み込むこともあったが、カロリナ・コストナー、正和両コーチからの「取り組むのは1つずつでいい」との後押しもあり「調子が悪くても、全部が調子悪いっていうわけではない」と、できていることに目を向けるように努めてきた。
転倒しても、ステップアウトしても「大丈夫、大丈夫」。周囲の選手たちには裏で「昨日もすごくダメだったから、今日ダメだったら、もう本当に無理だわ」と冗談めかしながらも「自分ならできる」と己を信じ抜いた。
22年北京オリンピック(五輪)で銀メダルなど数々の輝かしい実績を残しながらも、全日本では過去12年間、羽生と宇野の壁は高かった。「たぶん皆さん『(大きな大会では)この人ずっと銀メダル取ってる』って思われてる」と自虐気味に話すこともあった。
2人がプロに転向した後も「僕1人が引っ張っていくわけではない」と“エース”と呼ばれることを避けてきた。しかし、大会前にポツリとつぶやいた本心がある。
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「僕は負けず嫌い。負けたくない」
常々、口にしてきた「自分に勝つ」とは、表彰台の1番、高いところに立つこと。初の栄冠も通過点。日本の新エースは、これからも自身の可能性に挑み続ける。【勝部晃多】
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