ロッテ・中森俊介「毎年になっちゃうんですけど、悔しいシーズン」高卒5年目の来季は「覚悟と責任を持ってシーズンに臨みたい」

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2024年12月22日 09:02  ベースボールキング

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ブルペンで投球練習するロッテ・中森俊介(撮影=岩下雄太)
 「毎年になっちゃうんですけど、悔しいシーズンになっている。毎年悔しいといっているので、なんとか自分も本当に次5年目になりますし、同級生の大卒の子も入ってくる。しっかり覚悟と責任を持ってシーズンに臨みたいと思っています」。

 ロッテ・中森俊介はプロ4年目の今季、5試合・24回を投げ、1勝1敗、防御率2.63と数字を見ると安定しているが、今季先発ローテーション入りを期待されながらも定着できず、悔しい1年に終わった。

◆ 2024年シーズンに向けて

 昨年のシーズン終了後に、オーストラリアのウインターリーグに参戦し、「中6日、もしくは中5日で投げる機会は今までなかったので、そのスパンの中で球数をしっかり80球以上投げるというのを上からも言われていた。そのプラン通り投げられるようにと思っていました」と先発での経験を積んだ。

 「右バッターのインコースの精度というのは、去年の被打率も右の方が高い(昨季の左打者被打率.214、右打者被打率.267)ですし、自分の中でもうちょっと高めたいなと思っていました。自分の球質的にスライド気味に動くので、右バッターは踏み込んで切るイメージがあった。そこのアウトコースの目付けが結構、目をつけているなというイメージが終盤結構あった。右バッターのインコースの精度を高めることで、ゾーンを広く見せられる思いでそこの精度は試すというか、キャッチャーの人にも言って、なるべく右バッターの時はインコースの真っ直ぐ、ファストボールを構えてもらうようにしました」。

 先発で長いイニングを投げるだけでなく、“右バッターのインコース”の精度を高めることを意識して取り組んできた。

 2月13日から始まった対外試合では「結果が全てだと思いますし、その結果を出すための準備をしっかりして、いい結果を出せるように頑張っていきたい」とその言葉通り、13日の楽天戦、20日の楽天戦、3月2日の西武戦ともに2回を無失点に抑えた。

 3月9日のソフトバンクとのオープン戦では3回・4失点だったものの、3月16日のオリックスとのオープン戦では「ソフトバンク戦でやらかしているので、オリックス戦は修正できたのかなと思います」と、3回・49球を投げ、1安打、2奪三振、無失点に抑えた。

 オーストラリアのウインターリーグで“右バッターのインコース”の精度を磨いてきたが、3月16日とのオリックスのオープン戦では、中川圭太を1ボール2ストライクからインコースの148キロストレートで見逃し三振に仕留めた。本人も「あれはいい球だったなと思います」と納得の1球となった。

 では、練習試合、オープン戦を通じて、“右バッターのインコース”にしっかり投げ込めている感覚は自身の中であったのだろうかーー。

 「オリックス戦はあの1球しか投げていないですけど、確率を高めていけるように。まだまだなので、インコースの精度はもうちょいですね」。

 中川への1球はいい球となったが、本人の中ではこの時点で、右打者のインコースの精度はまだまだ満足いっていなかった。

 変化球は昨季開幕直後、落ち球にフォークを投げていたが、昨年8月23日のソフトバンク戦以降はフォークを投げず、チェンジアップを投げる割合が多かった。春季キャンプの取材では「(フォークを)完全になくすというのはないですね。消すつもりはないですし、去年もフォークばかり投げて、チェンジアップを完全に消してしまっていた。それは逆もあると思うので、チェンジアップばかり投げてフォーク、また同じ過ちを繰り返してしまうかもしれない。そこは完全に消さずに調子の良いものを、良いパフォーマンスができるようにと思っています」と話していた中で、オープン戦ではフォークとチェンジアップの両方を投げた。

 3月9日のソフトバンクとのオープン戦では、近藤健介に対し1ボール2ストライクからの4球目にフォークボール、5球目にチェンジアップを投げていた。中森はフォークとチェンジアップの両方を投げるようになった理由について訊くと、「どうなんですかね、今はフォークが安定して投げられているなというのはあるので、フォークの割合が増えていますけど、そこはその日の調子と言いますか、極力全部の球を投げたいと思っている。何かを消すというよりかは、全部の球種の精度を上げていけるようにと思います」との考えを示した。


◆ 開幕をファームで迎える

 オープン戦に2試合に登板したが、開幕をファームで迎えた。4月2日の巨人戦で3回を投げ9失点するなど、4月終了時点で防御率11.25だったが、5月の月間防御率は0.69。

 5月19日のDeNA二軍戦では「真っ直ぐは感覚がすごく良かったですし、空振りもまっすぐで取れていたのでそこはいい状態の証なのかなと思います」と、5回・58球を投げ、ストレートが46球。初回は14球中13球がストレートで、3回も8球中7球がストレートと力で押し、7奪三振中7奪三振、全てが勝負球はストレートだった。特に2−0の2回先頭の松尾汐恩に1ボール2ストライクから空振り三振に仕留めた5球目の145キロインコースストレートが素晴らしかった。

 中森は「あの球は厳しく投げられたと思いますし、今はインコースのまっすぐを意識しすぎずにあそこに投げられるというのはわかっているので、配球の組み立て方でインコースも使えるんだというのは相手バッターたちにも印象づいていると思うので良い傾向かなと思います」と、昨年参加したオーストラリアでのウインターリーグで課題として取り組んできた“右打者のインコース”を意識することなく、投げ切れるようになっている。

 DeNA二軍戦で気になったのはカットボール。これまであまり投げていない印象を受けたが、中森によると「去年から投げていますね。カットボールはいいんじゃないかなと思います」と好感触。

 「スライダーが大きいぶん、膨らんじゃうのでいいバッターになればなるほど見極められる。変化球もそうですけど、いかにまっすぐの軌道に乗せられるかだと思うので、そこを求めていったらカットボールが有効なのかなと現時点ではそういう考えに至っていますね」。

 6月5日の日本ハム二軍戦で3回・39球を投げ、1失点に抑え、1−1の3回に先頭の平田大樹から空振り三振を奪った126キロのチェンジアップの抜けが非常に良かった。本人も「前回の試合から握りを変えていい変化してくれたので、良かったと思います」と手応えを掴んだ。


◆ 今季初先発

 6月12日のDeNA戦で「今シーズン初先発ですが、いただいたチャンスをしっかりものにできるように。気を負うことなくいつも通りのピッチングをしたいです」と今季初先発のチャンスが巡ってきた。

 初回、先頭の梶原昂希に対して1ボール2ストライクから、6月5日の日本ハム戦で握りを変え好感触を掴んだチェンジアップで空振り三振。そのチェンジアップについて「いい球もありましたけど、ちょっと引っ掛け気味だったので、そこは反省点ですね」と課題を口にした。

 二死走者なしでオースティンに1ボールから投じた2球目の137キロスライダー空振りも良かった。「速いスライダーというか、今までは曲がりの大きいスライダーになっていたので、カット気味というか、真っ直ぐの軌道に乗せるイメージで投げていますね」と振り返った。

 初回を三者凡退わずか14球で片付ける最高の立ち上がり。その裏、打線が2点を奪い2点のリードをもらった2回表も先頭の牧秀悟を三ゴロ、筒香嘉智をオールストレートで最後は「首振ってインコースの真っ直ぐを投げられたので、いいところに決まって良かった」と、インコース高めのストレートで空振り三振。山本祐大も右飛で2回も三者凡退に抑えた。

 3回は二死走者なしから森敬斗にこの日初安打となる二塁打、梶原に死球を与えたが、井上絢登を一飛に打ち取った。続く4回、先頭のオースティンに内野安打で、この日初めて先頭打者の出塁を許す。牧にライトへ二塁打を打たれ、二、三塁。筒香をストレートで捕邪飛に仕留めたが、山本にセンターへの犠牲フライで1点を失う。

 3−1となった5回も先頭の度会隆輝に内野安打、一死後、梶原の投ゴロを中森がファンブルし一、二塁としてしまう。それでも続く井上を中飛に打ち取りピンチを脱し、勝利投手の権利を得た。

 5回終了時点で球数80球だった中森は6回もマウンドに上がる。先頭の牧秀悟に142キロのストレートで四球を与える。初回は148、9キロのストレートを投げ込んでいたが、イニングを重ねるごとにストレートの球速が落ちたことについて中森は「体力不足ですね」と反省。続く筒香をチェンジアップで空振り三振、山本を二直で2アウトとする。ここを踏ん張り6回を投げ切りたかったが、佐野恵太に四球を与えたところで降板。後を受けて登板した坂本光士郎が、度会隆輝に適時打を浴び、この日の中森は5回2/3・102球を投げ、4被安打、4奪三振、3与四死球、2失点。中森が投げ終えた時点で勝利投手の権利はあったが、7回にリリーフ陣が打ち込まれ、勝ち負けはつかなかった。

 今季初登板を終え、課題点と収穫点について訊くと、「まずは自分の守備でピンチになってしまっているので、日々の練習をしっかりやらないといけないですし、あとはシンプルにどんどん投げて体力をつけないといけない。そうですね、そこですね」と反省の言葉が並んだ。

 序盤は球数少なくいっていたが、中盤以降球数が増えていったのも、体力不足も関係しているのだろうかーー。

 「そうですね、1巡目は真っ直ぐでどんどん押していって、2巡目変化球でカウントを整えるというところで、その変化球が決まらない。悪いカウントになってしまって、真っ直ぐを打たれるケースがよくあるので、変化球の精度をいかに高められるかだと思いますし、尚且つ真っ直ぐももっと球威があれば2巡目以降も押せると思うので、そこはまだまだ課題だなと思います」。

 「6回を投げきりかったですね」と悔しさを滲ませた。


◆ 今季2度目の先発で今季初勝利

 2度目の先発となった6月26日の楽天戦、「調子はそこまでよくなかったんですけど、勝てて良かった」と、5回2/3・89球を投げ、5被安打、3奪三振、0与四球、1失点で先発投手では初勝利を手にした。

 ただ、2度目の登板でも“6回の壁”を乗り越えることができなかった。4−1の6回に先頭の辰己涼介を投ゴロ、続く浅村栄斗を遊ゴロに打ち取り簡単に2アウトとしたが、2安打されていた鈴木大地を迎えたところで降板となった。

 中森は「代える代えないの判断はベンチ。僕はそこで代えられるようなピッチングをしていただけなので、圧倒的なピッチングというか、しっかり投げていれば代えられることはない。そこは自分の力不足なので、そこはどんどん補えるように頑張っていきたいと思います」と“代えられないような投球”することを誓った。

 投げる体力については、「球速帯的にはそこまで最初から出ていなかったので、大幅に落ちることはなかったんですけど、もう少しまっすぐで押せた方がピッチング的には楽に進めていける。そこはメカニック、フォームのところもありますし、投げる体力、どんどん投げて根本的な体力をつけないといけないですし、やることがたくさんありますね」と課題点を挙げた。

 今季初勝利も反省の言葉ばかりが並んだ。

 今季3度目となった7月7日の西武戦、序盤から援護に恵まれ、中森も3回まで36球と省エネピッチングを披露していたが、突如4回にボールが先行し25球を要すると、4−0の5回に野村に犠飛、二死一、二塁から岸にレフトへ適時二塁打を浴び、勝利投手まであとアウト1つのところで降板。

 7月17日のソフトバンク戦では3−2の4回から登板するも、3回2失点で今季初黒星を喫した。翌18日に一軍登録を抹消され。ファームで再調整となった。

◆ ファームで再調整

 ファームに降格した後、8月6日の西武二軍戦で7回2/3・101球を投げ、8月13日の巨人二軍戦、9月17日の楽天二軍戦では6イニングを投げた。一軍で投げていた時は、試合中盤にストレートの球速が落ち課題を口にしていたが、“投げる体力”に関して、9月19日の取材で「投げる体力は、(9月17日の)楽天戦はそこまで良くなかったんですけど、(9月10日の)鎌ヶ谷はだいぶ状態が上がっていたと思うし、最後まで球威のある球で押せていたと思うので、その調子を続けられたらなと思います」と自信を見せた。

 9月10日の日本ハム二軍戦、1イニング目の2回が16球中12球がストレート、9月17日の楽天二軍戦でも初回9球中8球がストレートと、立ち上がりは力で押す投球が目立った。その中でストレートについて中森は「一時期また落ちていたので、それに比べて良くなってきたと思います」と手応えを掴んだ。

 続く楽天二軍戦では、0−0の2回二死走者なしで吉野創士に1ストライクから投じた2球目のインコース146キロストレートが良かった。「あれはいい球だったと思うんですけど」としながらも、「その後、外の真っ直ぐが抜けてインコースを捉えられているので、そこは精度を高めたいなと思います」と、1ボール2ストライクからセンター前に運ばれた148キロのストレートは納得がいかなかったようだ。

 フォークも良い。9月10日の日本ハム二軍戦、0−0の2回先頭の有薗直輝を1ボール2ストライクから空振り三振に仕留めた4球目の138キロフォークはストライクゾーンからボールゾーンに落ちた。本人も「鎌ヶ谷の時はまっすぐも走っていましたし、いい軌道で落ちてくれたと思います」と振り返った。

 落ち球でいうと、縦に落ちるスライダーも投げた。9月17日の楽天戦の3−1の5回先頭の吉野に1ボール2ストライクから空振り三振を奪った127キロの縦に落ちるスライダーはストライクゾーンからボールゾーンに良い落ちだった。中森は「以前投げていたスライダーですけど、ここ2試合は大きいスライダーを多めに投げていました。それまでは速いカット気味のスライダーを投げていたので、どちらもいい感覚で投げられていると思います」と明かした。

 「この前の楽天戦もスライダーで空振りを取れたり、打ち取れているので、調子が良いからこそ大きいスライダーばかり投げるのではなくて、満遍なくバッターの的を絞らせないように、満遍なくいろんな球種を投げられたらなと思います」。


◆ 10月4日のソフトバンク戦で先発

 9月24日の巨人二軍戦で6回・96球を投げ3失点にまとめ、9月30日に昇格。10月4日のソフトバンク戦に先発し、「ストレートの精度はあまり良くなかったと思うんですけど、逆にそれがバッターの手元で曲がってくれて、打ち損じたので結果的に良かったのかなと思います」と5回・75球を投げ、4被安打、4奪三振、無失点に抑えた。

 0−0の2回一死一、三塁の場面では、甲斐拓也を3ボール2ストライクから7球目の134キロ縦スライダーで空振り三振、続く川村を1ボール2ストライクから135キロのシンカー系フォークで空振り三振でピンチを脱した。

 「フォークで三振を取ったんですけど、最近は自分の中で感覚が良かったので、いいところに落とせたなと思います」。

 川村を三振に仕留めたシンカー系のフォークは意図的に投げたのだろうかーー。

 「あれは意図してそっちに投げたわけじゃないんですけど、普通にゾーンだけ低めにしっかり高さだけ間違いないようにと思って投げました」。

 シーズン最後の最後で5回無失点と最低限の結果を残した。ただ、期待された中で先発登板は4試合だった。「全然全くチームに貢献できなかったですし、結果を残せなかったのは悔しいですけど、自分の実力がなかったことなので、しっかり課題と向き合っていきたい」と唇を噛んだ。


◆ 来季に向けて

 シーズン終了後にZOZOマリンスタジアムで行われた秋季練習では「オフシーズンに向けて、もう1度真っ直ぐを極めたいと思ったので、そこの土台作りを行なっています」と、“ストレート”に課題を持って取り組んだ。

 中森は「毎年オフシーズンに空振りとれる変化球を磨きたいというところで、そこを一つの軸に考えてやっていたんですけど、変化球を生かすも殺すも真っ直ぐ。どれだけ良い変化球を投げても、真っ直ぐがきてなかったら、弾かれますし、そういう意味でも真っ直ぐの重要性を感じたました。そこはもう1度体からしっかり作り直して取り組んでいきたいと思っています」と説明した。

 中森はシーズン中、試合の中盤以降ストレートの球速が落ちる原因について体力不足を挙げていた。試合の中盤以降にスピードが落ちていることも、ストレートにこだわることに関係しているのだろうかーー。

 「そこもそうですけど、全体的な出力もそうですね。球速もそうですし、スタミナ、投げる体力もそうです」。

 来季は同級生の大卒の投手たちがプロの舞台に入ってくる。「同級生の投手がプロに入って同じチームというのが初めてなので、すごく楽しみでもありますし、ライバルでもあるので、負けないように頑張りたいと思います」。

 来季こそは先発ローテーションに定着したいところ。「今年は規定投球回を目標にして24イニングしか一軍で投げられていない。そこの目標をまず1年越しですけど、達成できるように頑張りたいと思います」。来季に向けた戦いはもう始まっている。

取材・文=岩下雄太

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