久保建英の年内最終戦は「謎の采配」で不発 左サイドでの起用にはレアル・ソシエダの文化的背景があった

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2024年12月22日 14:30  webスポルティーバ

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 12月21日(現地時間)、レアル・ソシエダ(以下ラ・レアル)は敵地でセルタと戦い、2−0と敗れている。

 ラ・レアルの久保建英は、2024年ラ・リーガ最後の試合で先発を外れている。後半20分から途中出場したが、時すでに遅し、の感もあった。しかも、久保は左サイドで投入され、クロスで好機を作り出したが、(最後の10分は右に回ったものの)不発に終わっている。

「なぜ左サイドで使うのか?」

 先発から外れたことが意外だっただけでなく、起用ポジションについての疑問も噴出した。もちろん、本人も控えには不満だったはずだし、左サイドを主戦場にはしたくないかもしれない。

 しかしながら、バスクという土地には"慣習"が残っているのだ。

 かつて、バスクは英国サッカーの影響を色濃く受けてきた。たとえばアスレティック・ビルバオは、クラブ名からして英語表記である。1990年代にラ・レアルが初めて契約した外国人選手は、アイルランド代表で、リバプールで名声を高めていたジョン・オルドリッジだった。

 民族的な矜持があるのだろう。スペインという国のなかにあっても、バスクは「独立した民族、歴史に誇りを持つ」(フランコ独裁政権下では、バスク語の使用の弾圧など、長く迫害を受けてきた)という意識が根強くあり、サッカーのスタイルも、スペインよりも英国風と言える。当時の英国風は、キック&ラッシュで押し込み、鋭い弾道のクロスを、高く強いヘディングでゴールに叩き込む。これぞ至高の風景だったわけだ......。

 英国風を踏襲したラ・レアルでは、右からは右足でのクロス、左からは左足のクロスというクラシックなウイングタイプが生き残ってきた。1980年代、ラ・レアルはラ・リーガで連覇しているが、当時のエースは、左サイドを引き裂き、クロスを供給し続けたレフティ、ロペス・ウファルテだった。そしてヘスス・マリア・サトゥルステギが、神がかった跳躍からヘディングでゴールを決めていたのだ。

 2002−03シーズン、レアル・マドリードと優勝を争ったチームも、右に右利きのバレリー・カルピン、左に左利きのフランシスコ・デ・ペドロがいて、中央にはダルコ・コバチェビッチが構えていた。クロスをどんどん打ち込むスタイルで、センターフォワードが合わせる。この構図が伝統になってきたのである。

【左利きが左サイドで起用される背景】

 2012−13シーズンにチャンピオンズリーグ出場を勝ち取ったチームも、右に右利きのシャビ・プリエト、左に左利きのアントワーヌ・グリーズマン、中央に長身でヘディングを得意としたイマノル・アギレチェを擁していた。

 その後、ラ・レアルは、ミケル・オヤルサバルのようにどのポジションでもできる選手や、アンデル・バレネチェアのように左サイドを得意とする右利きのアタッカーも輩出するようになった。受け継がれてきた伝統のスタイルは、ダビド・シルバのような天才との融合もあって革新された。ただ、久保が来るまでの右サイドアタッカーは、やはり右利きのポルトゥ(クリスティアン・ポルトゥゲス・マンサネラ)だったのである。

「ウファルテの再来」

 加入当初、左利きアタッカーというだけで、久保をそう崇めるメディアやオールドファンも少なくなかった。ウファルテはクラシックなウインガーとして当時は随一だったが、久保はプレーメイクも、自らゴールもできるモダンな選手で、連係による広がりがあるスケールの大きなアタッカーと言える。それぞれ、持ち味が大きく異なる。

 しかしバスクという公式に当てはめれば、久保が左サイドで起用されるのは、その是非はともかく、そうした文化的背景があるのだ(ちなみにビジャレアル時代のウナイ・エメリ監督も、ラ・レアルの下部組織出身者だ)。

 セルタ戦で、イマノル・アルグアシル監督は、後半から1トップに長身のアイスランド代表FWオーリ・オスカールソンを投入していた。久保を左サイドでクロッサーとして利用する狙いだったのだろう(その証拠にオヤルサバルが1トップの時は、基本は右サイドで起用している)。伝統への回帰というのか。この一戦に限って言えば、采配は失敗だったが、左サイドから久保の1本のクロスが合うことも考えられた。また、それによって久保が右サイドに移った瞬間、さらに混乱も起こせたかもしれない......。

 個人的には、久保の理想的ポジションは、アレクサンダー・セルロートと組んだトップの一角で、トップ下のダビド・シルバに支えられていた昨季の形であると考える。しかし、現チームで同じことはできない。そこで、ファーストチョイスは右サイドでの起用になるだろう。しかし、試合の入り、時間帯によって、左サイドも選択肢にはなるはずで、それが相手にもダメージを与える場合もある。

 バスクの地で引き出された久保の才能が、2025年により大きく開花することが望まれる。年明け一戦目は、スペイン国王杯、ラウンド32のポンフェラディーナ戦だ。

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