12月5日、シャープはヘルシオシリーズの新ラインアップとしてウォーターオーブントースター「ヘルシオ トースター」(実売価格:3万3000円前後)を発売した。同製品には、パンの“ふわふわ度”を選べる業界唯一(同社調べ)の機能を搭載している。強敵の多い高級トースター市場における販売戦略について、シャープ Smart Appliances & Solutions事業本部 国内キッチン事業部 調理企画開発部 課長 中島優子氏に聞いた。
ヘルシオは、過熱水蒸気を活用した「ウォーターオーブン」として2004年に誕生した。その後、2016年に同ブランド初のトースター製品として「ヘルシオ グリエ」を投入。新規顧客層に向けてリニューアルしたのが今回の「ヘルシオ トースター」となる。
「極上のトースト」を焼くことにこだわった同製品は、過熱水蒸気量をコントロールすることで、パンの“ふわふわ度”を選べる業界唯一(※)の機能「おいしさ食感マイスター」を搭載している。
こうした新規性がパン好きの人に評価されたこともあり、当初予定していた月産台数2000台を約3倍に増産しているという。
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●パンの“ふわふわ度”を選べる
ヘルシオ トースターは、過熱水蒸気を熱源として調理する従来のヘルシオの特徴に加え、パンのふわふわ度を選べる新機能を追加している。
一般的にパンは焼き立てが最もおいしいとされ、それはパン内部の水分量が多いからだという。ヘルシオ トースターは水蒸気をさらに100度以上に加熱させた過熱水蒸気を熱源にすることから、パンの内部に水分を閉じ込めながら外側はサクッと焼き上げることができる。
さらに、過熱水蒸気の量をコントロールできるエンジンを搭載することで、焼き色に加え、食感のふわふわ度も選べるようにしている。焼き加減は5段階、ふわふわ度は3段階の選択が可能で、合計15通りを選べる。
焼き加減を3、ふわふわ度を2に設定すると、外はサクッ、中はふわっとしたバランスの良い加減に。ふわふわを1にすると少しかために、3にすると中がもちっとした食感になる。
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ふわふわ度が選べるメニューは、「トースト」「厚切りトースト」「ピザトースト」「フランスパン」「ロールパン」「クロワッサン」の6種類で、常温・冷凍ともに対応可能だ。「とにかくパンをおいしく焼くことにこだわった」と中島氏は強調する。
「社内の人間も一度使うと魅了されてしまうほど、パンがもちもちとおいしくなります。日本にフランスパンを伝承したフィリップ・ビゴ氏が創業した『ビゴの店』の方にも、ヘルシオ トースターで焼いたフランスパンを食べてもらい、おいしいと評価をいただきました」
市販の揚げ物や焼き物も、過熱水蒸気により外はサクサク、中はふわふわのレンジでは得られないおいしさになるという。また、もちと焼き芋は2通りの焼き方が選べる。
パン以外にも、料理やスイーツなど幅広く使えて多機能だが、操作性はシンプルに設計している。デザインは黒1色でキッチンへのなじみやすさを重視。清掃性にも配慮し、底をフラットにしてヘルシオ グリエよりも清掃しやすくした。
●トーストの好みは人それぞれ違う
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ヘルシオ トースターを開発するにあたり、「消費者がトースターに求めていることを再考したこと」が現在の仕様につながったという。
まずトースター市場を見ると、1万5000円以上の高級トースターの領域が伸長している。新製品も登場しており、バルミューダは2024年2月にリベイクトースター「ReBaker(リベイカー)」(公式サイトで2万5300円)を、ツインバードは2023年11月にパン職人の浅井一浩氏と共創した「匠ブランジェトースター」(同2万5800円)を、それぞれ販売している。
さらに、社内で「トースターに求められている点」をアンケートしたところ、「トーストのおいしさ」に最も票が集まった。より深堀りすると、「トーストのおいしさへのニーズ」が多様であることが分かったという。
「トーストに求めることを聞いてみたところ、外は香ばしく中はやわらかいバランス重視が46%と最多でした。一方で、『パンに応じて焼き方を変える』と回答した人が43%もいて、少数ですが『その日の気分で好みが変わる』『全体的に香ばしいのが好き』『全体的にふんわりが好き』といった声もありました」
市場のトースターを見ると、焼き色の調整はできてもパン内部のふわふわ度を調整できる機能は見当たらない。ニーズが多様であるにもかかわらず、それに応えられていないことが見えてきたのだ。
「炊飯器は食感による炊き分けが当たり前になっていますが、パンに関しては焼き分けをする概念が薄いように思います。でも、実はトーストの好みは人それぞれで、パンの種類によって焼き加減を変えたい人は多くいる。焼き分けができれば、高価格帯でもニーズを満たせると考えました」
●高級トースター市場は強敵ぞろい
ヘルシオは発売から20周年を迎え、一定のブランド認知率や信頼度を獲得しているといえる。「おいしさ」「健康」「簡単・便利」の3つを特徴として訴求しており、ウォーターオーブン「ヘルシオ」の累計販売台数は280万台(2023年11月末時点)を超える。
一方で、高級トースターの領域に絞ると、ヘルシオの印象は薄くなる。高級トースターの代名詞ともいえるのは、バルミューダが2015年に販売した「BALMUDA The Toaster(バルミューダ ザ・トースター)」(公式サイトで3万3000円)で、累計販売台数は国内外で180万台(2022年末時点)を超える。
何度かリニューアルを重ねて2023年10月に販売した最新製品は、スチームテクノロジーと、より細やかになった温度制御でパン本来の味と香り、焼きあげ時における食感のコントラストを最大限に引き上げるよう設計されている。2024年2月に販売した「ReBaker」もパンの調理にこだわり、焼き立てを再現するリベイクモードなどを搭載する。
ツインバードの「匠ブランジェトースター」も、常温・冷凍のさまざまなパンを全自動でリベイクする機能に特化。温度センシングと独自の火力調整プログラムで温度バランスを実現し、パンのおいしさを引き上げる。
パン職人の世界大会「iba cup」で総合優勝経験を持つパン職人の浅井一浩氏が監修を務め、約3年の開発期間を経て誕生した自信作だという。発売から3カ月弱で年間の目標売り上げ台数を達成し、これまでに2万台以上を販売、想定以上のヒットになっているようだ。
●競合とどう戦うのか
各社が「究極においしいパン」を目指して妥協なしの製品を販売するなか、ヘルシオ トースターはどうやって支持を獲得していくのか。
「高級トースター市場がチャレンジングであるという認識はあります。一方で、当社製品の優位性は、過熱水蒸気を使ってパンの内部に水分を閉じ込めるため、時間がたっても乾燥しにくく最後の耳までおいしく食べられること。かつ、好みの焼き加減の選択ができることです。この点を訴求して、実際に体験してもらえる機会を多くつくることで価値を伝えていけたらと考えています」
シャープは2024年10月に、期間限定で「HEALSIO CAFE(ヘルシオカフェ)」をオープンし、ヘルシオ トースターで焼いたパンを提供した。また、量販店でも販売員向けに製品の体験イベントを実施し、好評を得たという。
そうした戦略が功を奏したためか、予約販売でも一定数を売り、結果的に当初の月産台数2000台を約3倍に増産している状況だ。
今後のマーケティング施策として、庫内が過熱水蒸気で満たされた後、パンが焼き上がる特徴的な様子を再現した展示を行ったり、製品利用者の体験談を公式サイトやSNSで発信したりして、価値を訴求していく方針だという。
「体験してもらうと価値を実感してもらえることが多く、『こんなにおいしいパンは食べたことがない』という声もありました。現状は、同製品を体験された店員の方のおすすめで購入を決める、またはヘルシオ グリエを利用していて新製品も購入するという方が目立ちます」
幅広く認知と信頼を得ている「ヘルシオ」ブランドを押し出しつつ、体験価値を丁寧に届けていくことができれば、ヘルシオ トースターは高級トースター市場で存在感を発揮する製品になるかもしれない。
(小林香織)
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進化系コインランドリーが続々(写真:ITmedia ビジネスオンライン)55
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