伊東純也と中村敬斗のピンポイントクロスはフランスでも指折りレベル 前半戦のベストプレーは?

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2024年12月23日 07:20  webスポルティーバ

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リーグ・アン前半戦総括「日本人選手4人」の現状
伊東純也&中村敬斗(スタッド・ランス)

 今シーズンからルカ・エルスネル監督が指揮を執るスタッド・ランスにおいて、絶対に欠くことのできない戦力となっているのが、日本代表の伊東純也と中村敬斗のふたりだ。

 チームは15節を終えた時点で10位に位置するが、シーズン序盤は6戦無敗の快進撃を見せるなど好調をキープ。そのなかで伊東と中村は、基本布陣の4-3-3または4-2-3-1の両翼を担い、攻撃の中心として躍進の原動力となっていた。

 果たして、シーズン前半戦の活躍ぶりはいかなるものだったのか。あらためて、ふたりがこれまで残した爪痕を辿ってみる。

 まず、加入3年目の伊東は過去2シーズン同様、新監督の下でも不動の右ウイングとしてプレー。日本代表のワールドカップアジア最終予選を戦いながら、ここまでのリーグ戦すべての試合でスタメン出場を続け、出場時間はGKイェヴァン・ディウフに次ぐ1316分を記録する。

 しかも、前線の選手にもかかわらず、途中交代した試合は6試合のみで、9試合がフル出場。このスタッツだけを見ても、いかに伊東がチームに不可欠な存在かがよくわかる。

 そのなかで、伊東は3ゴール3アシストをマークしている。ゴール数についてはすでに昨シーズンと同じ数字となっており、残り試合数を考えると、加入初年度に記録した6ゴールを上回るペース。同じくアシストも、昨シーズンの7を超える可能性は高いと見ていい。

 伊東のスタッツで特に目を引くのが、チーム内におけるキーパス(ゴールにならなかったシュートにつながるラストパス)の割合が33.9%を記録していることだろう(第13節終了時点)。ちなみにこの割合は、ヨーロッパ5大リーグの選手のなかでトップを誇る。逆に言えば、現在のスタッド・ランスの攻撃は、伊東に大きく依存していることを意味する。

 実際、伊東がこれだけのスタッツを残せる背景には理由がある。

 ビルドアップからボールを保持して攻撃することをベースとするエルスネル監督のサッカーのなかで、基本的に伊東は右サイドの大外レーンを担当。カウンター時には自慢のスピードを生かして一気にドリブル突破で打開し、敵陣でボールを保持する時は、自らが起点となってコンビネーションプレーからチャンスメイクする。

【伊東なくして成立しない攻撃】

 ただ、それだけでは相手の厳しいマークで潰されかねない。だが、伊東はそうならないために、相手のマークを外すべく自由にポジションを変える。

 それによって、対峙する相手DFは単純なマークだけでは伊東を捕まえきれなくなってしまうだけでなく、右サイドに空けたスペースを1トップのウマル・ディアキテが有効活用。今シーズンは、本来フィニッシャーのディアキテが右サイドからチャンスを作るシーンが増え、相乗効果が生まれ始めている。

 そしてもうひとつ、最大の武器とされるクロスボールの精度がより高まっていることも、伊東が活躍できている要因として挙げられるだろう。日本代表の試合でもすっかりお馴染みとなっているが、伊東が繰り出すクロスボールのピンポイントぶりは、リーグ・アンのなかでも指折りのレベルにある。

 たとえば、第8節のオセール戦の後半アディショナルタイムに中村のゴールを演出した絶妙なクロスは、その典型例だ。そのほかにも、決定機逸に終わったピンポイントクロスも数多く、スタッド・ランスの攻撃パターンのなかで伊東のクロス供給は最大の武器となっている。

 まだ伊東不在の試合がないので断言こそできないが、少なくともスタッド・ランスのチャンスメイクは伊東なくして成立しない、というのが現状と言える。

 一方、リーグ・アンのなかで最も著しい成長を見せている選手のひとりが、ここまで6ゴールをマークしてチーム内得点王となっている中村だ。

 今シーズンは左ウイングのレギュラーとして定着している中村は、これまで出場した15試合のうち14試合に先発。出場時間も1171分を記録し、すでに昨シーズンの出場時間1389分に迫る勢いだ。同じポジションのライバルとされるデンマーク代表のモハメド・ダラミーが負傷により長期離脱を強いられていることもあるが、ここまでの活躍ぶりからすれば、もはやその影響は大きくはない。

【中村の覚醒ぶりを示したゴール】

 中村が覚醒するきっかけとなった試合が、9月15日に行なわれた第3節のナント戦だ。開幕から2試合連続で先発出場していた中村だったが、その試合は代表ウィーク直後とあって、これまで唯一のベンチスタート。左ウイングには、開幕戦から急成長ぶりを見せていた下部組織出身のヤヤ・フォファナ(20歳)が先発した。

 中村がそのフォファナに代わって途中出場したのは、1−1のタイスコアで迎えた後半73分。すると、後半アディショナルタイムに伊東のアシストから値千金の決勝ゴールを流し込み、それがその後に始まる連続ゴールの口火となった。

 続く第4節の相手は王者パリ・サンジェルマンとの一戦だったが、その重要な試合でも先制ゴールを決めると、第8節のオセール戦まで5試合連続ゴールをマーク。ヨーロッパの主要リーグにおける日本人の連続試合得点記録を更新した。

 そのなかでも圧巻だったのは、第7節のモンペリエ戦だ。まずは前半25分、敵陣ペナルティエリア手前で相手DFのクリアボールを回収した中村は、そのままドリブルで中央に流れて右足一閃。何もないところから独力で生み出したそのゴールは、中村の覚醒ぶりを示すものだった。

 さらに後半57分には、左サイドから狙いを定め、伊東のようなピンポイントクロスを右足で供給し、ディアキテのゴールをアシスト。その絶品クロスも、今シーズンの中村の進化を証明するプレーだった。

 もともとシュートテクニックと決定力を武器とする中村だが、今シーズンはさらに磨きをかけた印象だ。

 とりわけシュートシーンの落ち着きは目を見張るものがあり、シュートする時にほとんど力みを感じさせない。おそらく加入2シーズン目とあって、リーグ・アンに順応したのだろう。持っているシュートテクニックを試合のなかで発揮できていることが、そのまま決定力アップにつながっている。

【両翼に欠かせない日本代表コンビ】

 加えて、シュート以外のプレーでも進化を続けている点も見逃せない。

 中村が左サイドでプレーする場合、カットインプレーが得意技とされてきた。だが、昨シーズンの後半戦から披露するようになった縦突破からの左足クロスの回数が増えた。

 縦に行くと見せかけてから切り返し、タイミングを図ってから供給する右足クロスというバリエーションも加わった。これにより、対峙する相手DFは複数のプレーを警戒しなければならなくなり、得意のカットインプレーの効果もより大きなものになっている。

 とはいえ、5試合連続ゴール後はペースダウン。第11節(ル・アーヴル戦)に6ゴール目を記録したところで打ち止め状態が続いている点については、本人も不甲斐なさを感じているかもしれない。とりわけ、第15節のモナコ戦の決定機逸は痛恨だった。

 ただ、その主な要因はチームの調子が下降していることにあり、全体的に見れば中村のシーズン前半戦のパフォーマンスは申し分のないものだった。

 いずれにしても、スタッド・ランスが後半戦に巻き返せるかどうかは、両翼を担う伊東と中村の日本代表コンビの活躍にかかっていることは間違いなさそうだ。

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