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これから年末年始に向けて、おいしいものが食卓をにぎわすようになる。そこで気になるのが“食べ合わせ”だ。
食べ合わせが悪い組み合わせと聞いて、真っ先に思い浮かぶのは「うなぎと梅干し」。
しかし、これはまったくの迷信で、医学的根拠はない。逆に、今では栄養面ではすばらしい食べ合わせとされている。
だが、毎日普通に口にしている食事のなかで、栄養学的に好ましくない“食べ合わせNG”の組み合わせが意外と多くあるという。
「いつも何げなく食べている日々の食事のなかに、実は医学的見地から見て、好ましくない食べ合わせは多々あります」
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と語るのは、医師で医療ジャーナリストの森田豊先生。
一緒に食べて危険というわけではないが、栄養成分的にかなり損をする、もったいない食べ合わせということだ。しかし調理の方法や組み合わせを替えれば効率よく栄養が取れるようになるという。
最近話題になっている“食べ合わせNG”の組み合わせを医学的見地から見てみよう。
「ほうれん草とベーコンとの食べ合わせは気をつけたいですね。効率よく栄養を取るためには、一緒に食べることを避けたほうがいい。
ベーコンに含まれているリン酸にはカルシウムや鉄分の吸収を妨げる作用があります。
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カルシウムが不足すると、骨密度の低下を引き起こし骨が脆くなり、骨粗しょう症のリスクを高めることにも。
鉄分の豊富なほうれん草は、女性に多い鉄欠乏性貧血の対策にとてもよい食材ですが、不足すると貧血を起こし疲れやすくなります。
ほうれん草を食べるならベーコンと炒めるより、ごまあえをおすすめします。栄養価の高いほうれん草と胡麻が相乗効果を発揮する、最高の食べ合わせといえるでしょう」(森田先生、以下同)
旬のほうれん草にはビタミン・ミネラルが豊富。貧血・動脈硬化・高血圧予防や免疫力を高めるなどの効果・効能で知られている。ごまには老化予防作用がある。若返り、美肌、血液サラサラ効果が期待できるごまあえを、ぜひ。
■お味噌汁にはワカメとねぎよりワカメと豆腐
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「ワカメとねぎは味噌汁の定番ともいえる組み合わせですが、栄養学的には好ましくありません。
ワカメにはカルシウムが多く含まれているのですが、ねぎと一緒に食べると、ねぎの成分がカルシウムの吸収を妨げてしまいます。
カルシウムを効率よく摂取するに当たっては好ましくないのです。
栄養素が豊富なワカメを味噌汁の具にする場合は豆腐を合わせるのがおすすめです。ワカメなどの海藻に含まれるカルシウムは、豆腐に含まれるタンパク質によって吸収されやすくなります。
また、豆腐にはカルシウムの働きをよくするマグネシウムも豊富です」
ティータイムのときの紅茶の飲み方にも気をつけたいことが。
「紅茶が持つテアフラビンは強い抗酸化力を持ち、殺菌や風邪の予防に対して効果・効能があり、インフルエンザ予防効果も期待される成分です。
しかし、レモンに含まれるクエン酸によりテアフラビンの効果が薄くなります。
抗酸化力を無駄にしないためには、英国式にミルクティーか、ストレートティーを。これなら問題ありません」
お正月によく食べる紅白なます。大根とにんじんの組み合わせもじつはよくないという。
「にんじんに含まれるアスコルビナーゼという成分は、大根に多く含まれるビタミンCの吸収を妨げます。ビタミンCが不足すると疲労や筋力低下を感じます。
きゅうりとトマトも定番の組み合わせですが、きゅうりにもアスコルビナーゼが含まれていて、トマトに含まれるビタミンCの吸収を妨げるので、いい組み合わせではありません。
ただし、アスコルビナーゼは酢や熱に弱い性質がありますので、お正月の『紅白なます』は理にかなっているのです」
海産物の組み合わせでも、効率よく栄養を摂取するという観点から、おすすめできないものがある。それがホタテとイクラだ。
「ホタテなど二枚貝全般に含まれる酵素アノイリナーゼが、イクラが豊富に含むビタミンB1を破壊してしまう可能性があり、効率よく摂取できません。
ビタミンB1が不足すると、疲れやすくなったり、体がだるくなったりなどの不調を引き起こすことがあります。重症になると、手足のしびれが出ることも。
イクラとホタテのような二枚貝を食べるときは、別々に食べるか、貝類を加熱してから食べるようにしてください」
海鮮丼を食べるときには注意!
■しらすおろしを食べると肝機能が低下する恐れが
「しらすおろしが好物という方は多いでしょう。しかしこちらも好ましくない組み合わせです。
しらすに含まれるリジンの吸収を大根の酵素リジンインヒビターが妨げてしまうからです。
タンパク質の吸収を促進させブドウ糖の代謝やカルシウムの吸収を促進する働きを持つリジンは必須アミノ酸のひとつ。体を構成するタンパク質の組み立てに必要な栄養素です。
リジンが不足すると、疲労感、肝機能低下、血液中の飽和脂肪酸、コレステロール値増加などの症状が起こる可能性があります。
解決策は、しらすおろしを食べるなら、大根おろしに酢やかんきつ類をかけること。リジンインヒビターの働きを抑えてくれます」
納豆に熱々のご飯は、日本人ならではの定番だが……。
「血栓症予防に効果が期待されるナットウキナーゼは50度以上の温度で働きが鈍くなり、70度ではほとんど働きません。
熱々ご飯は50度以上になるので、医学的見地からは、あまりおすすめできません。
人がおいしいと感じるのは40〜48度のほんのりあたたかいご飯。納豆をかけるなら、50度以下のご飯にしましょう」
森田先生は、特に日本人のカルシウム不足に警鐘を鳴らす。
「全体的にカルシウム不足の日本人は、カルシウムを上手に摂取しないと骨粗しょう症になってしまいます。カルシウムを無駄なく上手に摂取してもらいたいですね」
ここで紹介した以外にも、さまざまなもったいない組み合わせがあるので、ぜひ下の表を参照して、せっかくの栄養素を無駄にしないように心がけよう。
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