「灼熱カバディ」イベントで武蔵野創「何十年先も読んでいただけるクオリティ」と自信

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2024年12月25日 19:23  コミックナタリー

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「『灼熱カバディ』完結記念! スペシャルイベント 〜能京高校カバディ部 優勝祝賀会〜」より、(左から)小林翔氏、武蔵野創。
「『灼熱カバディ』完結記念! スペシャルイベント 〜能京高校カバディ部 優勝祝賀会〜」が12月20日に東京・LOFT9 Shibuyaで開催された。イベントには「灼熱カバディ」作者の武蔵野創と編集者の小林翔氏が出演。2024年7月23日に連載が完結し、12月19日に最終31巻が発売されたばかりの同作について100人以上のファンとともに振り返った。

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イベント前半の「9年間の歴史振り返りトーク」では、2014年から1年ごとの主な出来事や思い出を2人で回顧していく。「灼熱カバディ」連載開始前となる2014年に行われた投稿企画「裏サンデー第3回連載投稿トーナメント」では、武蔵野と小林氏が初めてタッグを組んだバスケマンガ「最低のリングスター」が4位となり、連載化された3位には惜しくも届かず。このくだりでは貴重な同作の原稿がスクリーンに投影されファンを喜ばせた。

そして2015年にマンガワンで始まった「灼熱カバディ」は当初月刊連載だった。しかし主人公・宵越竜哉の入部や練習試合、合宿などストーリーが進行するのと並行してどんどん連載ペースが上がっていき、2017年には週刊化。翌2018年には作中でようやく関東大会が始まり、それまで公式戦における勝利がなかった主人公チーム・能京高校が伯麗ISを相手に初勝利を挙げる。この試合の締めくくりはファン人気も高く、武蔵野は「やっと勝ち試合が描けた」という感慨に加えて、「(伯麗ISキャプテンの)外園丈治といういい感じのキャラクターを生み出せたおかげで、敵をカッコよく描こうと思えた」と手応えを語った。

多くのファンを驚かせたのが、2021年に始まった、関東大会決勝リーグにおける能京高校対奧武高校や能京高校対英峰高校は当初描く予定がなかったこと。しかし「ファンは求めているから」という小林氏のアドバイスによってそれらの名勝負が生まれたことが明かされると、会場中から感謝の拍手が贈られた。また、連載後半では英峰高校の神畑樹や能京高校の王城正人といった選手が燃え尽きるように退場していくが、そうしたエピソードについて武蔵野は「楽しかった」という。「死にそうな奴を描くのは楽しい。(自分は)つらいと思いながら描いているけど、キャラクターのほうがつらそうだから」と独特な心情を笑顔で打ち明けて笑いを誘っていた。

ライブドローイングコーナーでは、観客が選んだ人気キャラクタートップ3の面々がサイン色紙に描かれる。この色紙を巡ってクイズ大会も行われ、作中で背景に描かれていた文字や校歌の歌詞、キャラクターが溺れた際のセリフなどの難問が連発。しかし全8問をクリアしたファン2人のうち、男性ファンが見事色紙を手にした。

イベント後半のメインテーマは、武蔵野と小林氏がそれぞれに選んだ“よくできた回ベスト3”。武蔵野は第90話「世界組7番・外園丈治」、連載版とは異なる単行本版の最終話「灼熱カバディ」とともに選んだ第167話「最終攻撃」、第168話「STRUGGLE2」について「このへんからネームの修正が入らなくなった分岐点。ねじ伏せた」と充実感を滲ませる。小林氏は第167話で見られた、マンガアプリの縦画面で読むという特性を活かした見開き表現の巧みさを称賛した。

その小林氏は第37話「バイバイ。」、第177話「透き通る熱」、第289話「灼熱」をセレクト。作品のラスボス的存在である星海高校との戦いが決着する第289話のラストで第1話冒頭と同じモノローグが再び登場することを絶賛し、「序盤から散りばめられたキャラクターや伏線がこれだけ美しくまとまったのが素晴らしい。何度も読み直していただきたい」とコメントした。これを受けて武蔵野は「それが一番の目的かもしれない。何度も読んでほしいと思って描いて、何十年先も読んでいただけるクオリティになったと思います」と自信を伺わせる。

最後に行われた質問コーナーでは、観客から寄せられた疑問に武蔵野が時間いっぱいまで次々に答えていく。強キャラクターであるはずの“世界組”ながら名前しか登場していなかった木道や三島が奥武高校に負けていたことや、メインキャラクターの多くが登場する単行本版最終回に未登場だった“ヒロ”こと右藤大元が、15年後は相棒となる佐倉学の所属チーム・彩和RHINOCEROSESのスポンサーで働いていることなど作中で描かれなかった情報が開示される。また星海高校所属の本田貴一の卒業後については、武蔵野は「のちのちわかる」と回答。意味深なコメントがファンをざわつかせた。

エンディングではいくつかの“お知らせ”がアナウンスされた。第70回小学館漫画賞の最終候補12作に「灼熱カバディ」が選ばれたという話では、過去に受賞を逃したこともあって「今回こそは」と意欲を見せる2人。武蔵野が「取れなかったら暴れる」と宣言すると、小林氏も「審査員の先生に1人ずつDM送る」と同調する。さらにマンガワンで武蔵野による新作読み切りが2月中旬に掲載されることも発表された。

その後、直筆サインが当たる抽選会が行われて閉幕……かと思われたタイミングで、描き下ろしイラストが描かれたポストカードを武蔵野が会場の全員に手渡しするというサプライズ企画が行われることに。単行本最終巻に100ページ近い描き下ろしを行った武蔵野らしい、サービス精神が発揮されたイベントとなった。

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