「焼き鳥器なのに煙が出ない!」――。応援購入サービスの「Makuake」で、話題になっている商品がある。「真剣にふざける」をモットーに革命的なモノづくりに挑戦する企業、ガードナー(福岡市)が開発した「YAKITORiLL(ヤキトリル)」だ。
Makuakeで行っている先行販売(12月25日まで)では、既に目標を大幅に上回る金額を突破。購入者からは「煙が出ないのですごく使いやすい」「手羽先や厚揚げなど、いろいろ焼けるのも便利」などの声が届いている。
ヤキトリルはどのようにして誕生したのだろうか。開発のきっかけや狙いを、開発者の椿拓巳さんに聞いた。
●「串パ」文化を日本の食卓に
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ヤキトリルは、焼き鳥だけでなく海鮮や菓子類など、串にさせるものなら10段階の火力を調節してさまざまな串焼きが楽しめる商品だ。オーブントースターのようにコンセントにさせばすぐに使えて、片付けるときは油受けのトレーを洗うだけという手軽さも特徴だ。
この商品にかける思いとして、椿さんは「鍋パ(鍋パーティー)、タコパ(タコ焼きパーティー)に続く新たな“パ文化”として、串パ(串焼きパーティー)を日本の食卓に広めていきたい」と語る。
開発のきっかけは焼き鳥屋の閉店だった。焼き鳥好きの椿さんが通っていた店がコロナ禍で閉店。その際、「家で手軽においしい焼き鳥がつくれないか」と考えたことが始まりだった。
試作品をつくることになるわけだが、同社は自前の工場を持っていない。ということで、社員はホームセンターなどで必要な材料を調達して、自ら手を動かしていく。ヤキトリルについても、DIYで試作品をつくるところから始めた。
煙が出ない仕組みは、開発の初期段階で発見した。「熱源を具材から離れた上部だけに持ってくることで、煙が出ないことが分かった。ラッキーだった」と振り返る。なぜ熱源を上だけにしたかというと、あえて串を自分で360度手動で回転させる仕組みにしたことで、上下に熱源を置く必要がなかったからだ。
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全自動で串が回る仕組みも検討した。しかし手間がかからない分、楽しさが感じられなかった。焼き鳥を自分たちで焼く行為が思ったより楽しかったので、あえて手動にして焼き鳥を楽しむ体験重視の方向にシフトした」という。
●約3年かけてついに発売
開発期間は約3年で、同社の他商品と比較して長い時間を要した。どのような苦労があったのだろうか。
同社にとって、ヤキトリルは初めての家電商品だった。ということもあって、まずは家電について調査するところから始めた。現在の形になるまで、ヒーター管の選定から火力調整まで、トライアンドエラーにかなりの時間をかけたという。
こだわったポイントは、焼き時間を極力短縮すること。また、片付けのしやすさを意識したり、よりおいしく食べられるために独自のスパイスまで開発したり。やりたいことを妥協せずに全て盛り込んだ。
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焼き鳥は1本焼くのに20〜30分かかると、複数人で使う場合には待ち時間が長くなってしまう。一度に12本焼ける横長タイプも検討したが、スペースの関係で却下した。
最終的に、スーパーでも購入できるような一般的な焼き鳥サイズなら1本10分以内で1度に6本焼けるところまで完成。火力は10段階あるが、基本的に焼き鳥は最大火力で焼き、パンなど焼けやすいものを入れるときは弱めるなど調節が必要だ。
気楽に使ってもらえるよう、片付けのしやすさにもこだわった。油受けのトレーを着脱式とし、使用後はすぐに洗えるようにした。「モニター調査でも、手軽に片付けられると高評価だった」
オリジナルの「ヤキトリルスパイス」は、何十種類ものスパイスをグラム単位で調合しながら「鶏肉に特化した」ものを独自開発した。
●体験ができる場も検討
Makuakeで好調な結果を残したヤキトリル。今後は一般販売を予定しているが、展示会への出店や、スーパーなどで試食販売の機会も検討しているという。
「無人でヤキトリルだけ置いて、モニターに手順を掲載する。ふらっと来た人が串焼きを体験できるような場をつくりたい。実際に使ってもらって、楽しさを体験してもらいたい」といった狙いがあるようだ。
コンセントにさせばすぐに使えて、片付けも含めて手軽にできるヤキトリル。10段階の火力を調整しながらどんなものが焼けるのか。反響次第で、串パ文化が広まるかもしれない。
(熊谷ショウコ)
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