地獄の難易度!? リアルお坊さん企画のカードゲーム、初版が即完売 「絶対見分けつかんわ」「俺の知ってる坊主めくりと違う」

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2024年12月26日 07:30  まいどなニュース

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なぜか高いメガネ率(画像提供:磨伸映一郎さん)

実在の僧侶の写真を使ったカードゲーム『ぼうずめくり』がXで話題に。実際に遊んだ投稿主と、制作者に斬新なカードゲームの誕生秘話を取材しました。

【写真】神経衰弱をしてみると…

「本日の地獄難易度神経衰弱枠、『ぼうずめくり』」と、テーブルに並べたカードで遊ぶ写真を投稿したのは、漫画家・脚本家の磨伸映一郎(@eiitirou)さん(以下、磨伸さん)。

カードの表面には剃髪し、法衣を着た男性。全員が実在する僧侶で、作った人も僧侶という裏話に、「大晦日に家族総出でやりたいやーつ!」「俺の知ってる坊主めくりと違うwww」「絶対見分けつかんわ」「蝉丸しかいない…だと…(違」「名前も顔立ちもひとりひとり全然違うのに、誰一人として頭に入ってこねぇ…!」と反響が続々。

『ぼうずめくり』(2300円)は、承諾を得た実在する僧侶35名分の写真を2枚ずつ使用した70枚のカードゲームです。

カルタや百人一首のように読札・取札があり、読札を裏向きに重ねて山札とし、取札を表に向けて場に広げ、山札から引いた1枚と同じ僧侶の札を場から探す「ぼうずめくり」の他、「ぼうずあわせ」「それはこのぼうずですか?」の3種の楽しみ方を提案しています。

まず、磨伸さんに『ぼうずめくり』の魅力や感想を聞きました。

「馬鹿馬鹿しいかも知れないけれど、実現させるとは」

ゲームの漫画・脚本を多数手がける磨伸さんは、大阪で月1回、小説家や漫画家などクリエイターで開催される「作家会」に参加。その際に、メンバー同士で『ぼうずめくり』で3種の遊び方のうち、神経衰弱と同じルールの「ぼうずあわせ」、僧侶の特徴などを質問して誰なのかを当てる「それはこのぼうずですか?」をプレイしたのだそう。

「ぼうずあわせ」では、「あまりにも全員見た目の区別がつかないので各作家陣が『若い頃ロックに没頭してて今でも寺のどこかにエレキ置いてそうな人!』『かつて村のワルとして暴れてたものの寺に放り込まれ改心した後は予想以上に徳が高まった人』などと勝手にバックストーリーを構築して記憶の手がかりにしていた」と、かなりの注意力と想像力も必要だったそうです。

――遊んでみて、特に気になった点は?

「実在するお坊さんの眼鏡着用率が驚く程高いという見た目のインパクトも、このゲームの醍醐味かも知れません。みなさん、とても知的に見えるのに、このようなおもしろげな企画にも参加してくださる温かさ……がにじみ出ているのがまた味わいかと」

――投稿には大きな反響がありました。

「カードゲームやボードゲームといった非電源系ゲーム(アナログゲーム)のインディーズ作品は様々な意欲作が生まれ、特に一風変わった・奇抜な・一発ギャグ的な“かるた・神経衰弱系ゲーム”は一大人気ジャンルとなっています。

この『ぼうずめくり』はシンプルにわかりやすく、馬鹿馬鹿しいかも知れないけれど実際に形にするところまで進める人は今までいなかった……という事で多くの人を魅了したのだと思います」

◇  ◇

実在する僧侶に依頼し、遊んだ人からも喜ばれている『ぼうずめくり』ですが、その奇抜なアイディアはどのように生まれ、実現したのでしょうか。企画・制作した「WAYA工藝」に話を聞きました。

「修行同期の写真を見ていたら…」

「WAYA工藝」は団体職員と僧侶、2人からなるクリエイターサークルで、今年3月からメンバーの地元である北海道を拠点に始動しました。

「おじさん構文を作って遊ぶ『オジサンメッセージ』を作ったボードゲーム制作サークル『ドヤゲームズ』さんに、ボードゲーム開発について教えてもらったのがきっかけです。それから、ゲーム開発を目指しました」。道内ながらも離れた都市に住む2人とあって、打ち合わせはZoomで行っていったそうです。

当初はコンセプトをしぼらず、「それぞれ団体職員と僧侶という異なる分野で仕事をしていましたので、地元の自治体の特産品をテーマにしたボードゲームなど様々な案を出しました」

話し合いを進めるうちに、11月に「幕張メッセ」で開催されるイベント『ゲームマーケット2024秋』への出展という目標が生まれ、ゲームのイメージを固めていく話し合いを重ねていきました。

目指すは、クリスマスやお正月に家族で遊んでもらえるようなゲームで、海外から出展する人にも興味を持ってもらえそうな日本らしいビジュアルインパクトが強い作品。ゲーム開発は初めてなのでルールは単純明快に。そこで、テーマは馴染みのある仏教に決めて、企画を検討。

「『一般の方にはわからないだろうけど、僧侶同士だと後ろ頭の形だけで見分けがつく』という話から、メンバーの修行同期の顔写真が並ぶアルバムを見てみたところ、そのシュールさ、あまりの見分けのつきにくさに『これだ!』となりました」。

「面白さを伝えるには本物しかない」

「肖像権の問題が真っ先に思い浮かんだので、当初は画像生成AIを使って制作する事も検討したのですが、AI画像だと人物の違和感がすごいんです。カードに印刷された僧侶の細かな特徴を見比べて同じ僧侶のカードを探すゲームなのに、生成された画像自体の違和感が強くて探すどころじゃなくなってしまうので、あのアルバムの面白さを伝えるにはやはり本物にお願いするしかないと」

写真を使用させてもらうために、知人の僧侶ひとり1人にゲームについて説明し、無事35人から承諾を得ました。

「話を持ちかけた時は、こちらが思った以上に『面白そうなことやってるね』という反応が多かった印象です。当初承諾してくれる人はごく少数だと思っておりましたが、予想に反して『顔出し大丈夫だよ』と快諾していただけました」

協力的だった理由として、個人的な推測だと前置きした上で、「業界全体としてなにか新しい取り組みも必要だ、という気持ちがあったからかもしれないです」と話してくれました。

「記載した名前は仮名とはいえ、本物の僧侶の方々に関わっていただくからには中途半端なものを出すわけにはいけませんので、パッケージデザインやイラストなどを担当したイラストレーターの「おとみしん」さんに法衣の風合いや細部のデザインまで細かく反映してもらいました」。

こうしてできた『ぼうずめくり』は10月中に実施されていたクラウドファンディングやSNSで「実在の僧侶35名の顔写真を使用した」というインパクトで注目を集めました。

協力してくれた僧侶たちに、完成した『ぼうずめくり』を聞いたところ、「自分の顔が入ったゲームで子どもが楽しんでくれた」「次回作に期待している」と好評だったと言います。お袈裟をまとった僧侶5・6人で「ぼうずめくり」で遊ぶ様子を撮影し送ってくれた方もいらっしゃったとのこと。「これには笑いを禁じ得なかったです」。

また、今回は協力できなかった僧侶から、「奥さんにこんな面白そうな企画になぜ顔を提供しなかったのかと怒られた」「自分も出せばよかった」と後悔の念も。

イベントでは想定外の完売、そして…

目標としていた『ゲームマーケット2024秋』には11月17日のみ参加。「北海道からスーツケースに詰め込めるだけ詰めて商品を持ち込み、ゲームをお供え物風に陳列したり、僧侶のメンバーが法衣を身に着けて立ったりと、出展ブースの演出も趣向を凝らしました。

人目を引いたようで12時頃には在庫が半分に、16時の時点で完売となりました。「『ドヤゲームズ』さんや、ボドファン(ボードゲーム専門のクラファン)の担当者さん、ネットの情報からも新参出展者は30個売れれば上出来だとうかがっていたので、自分たちがこの結果に一番驚いています」

イベント終了後は、オンラインの販売サイトBOOTHで販売を開始。「X(旧Twitter)では『お正月家族で遊ぶために購入しました』『仏教や僧侶が大好きで購入しました』『他の神仏系のゲームと一緒に神棚に飾っています』などのコメントを頂けました。なかには、他の有名ゲームと『ぼうずめくり』を組み合わせた新しいルールを考えてくださった方もいらっしゃいました。皆様に好意的に捉えてくださって制作者として大変嬉しい限りです。ご家族・お仲間と集まる際に楽しんでもらえると幸いです」。

そして11月25日に、磨伸さんによる投稿が注目を集めて所謂「バズ」状態となり、1年かけて売り切る予定だった『ぼうずめくり』が見事完売し、再発注をかけることになったのです。

◇  ◇

「ゲーム作りは初めて」というハンデも、固定概念にとらわれないアイディア、熱意ある説得、デザインの力でヒット商品となったカードゲーム『ぼうずめくり』は、27日から通信販売BOOTHで再販されるとのことですが、タイミングによっては品切れの場合もあるため、その際は再入荷をお待ちください。

今回、ゲームを紹介してくれた磨伸さんは漫画『アナゲ超特急』を連載中で、ゲームに関連する創作・翻訳・執筆・企画を展開する企業「グループSNE」から書籍化。「日本におけるアナログゲーム専門会社の老舗にして、神戸の中央区に本社を置く『グループSNE』さんで、この『ぼうずめくり』のようにインディーズであろうとキラリと光るアナクロゲームを紹介する漫画を描いております。神戸からどんどん“楽しい”を発信していきたいですね」と今後はどんな商品に注目するのかも楽しみですね。

(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・谷町 邦子)

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