ダイキン工業が節電に気を使いながらエアコン暖房を上手に使う方法を紹介している。
○"10年に一度"レベルの「年末寒波」到来
気象庁は12月19日に、北日本から東日本・西日本の日本海側などに「低温と大雪に関する早期天候情報」や「低温に関する早期天候情報」を発表した。12月28日頃以降、冬型の気圧配置が強まり寒気の影響を受け、かなり気温が低くなり、全国的に寒さが厳しくなる見込みだという。
冬の家庭における家電製品の中で最も多くの電力消費の割合を占めるのが「エアコン」。さらに、家計調査より、2人以上世帯で最も電気代が高いのが冬の1〜3月期(2020年1〜3月期から2024年7〜9月期)。節電のためには、消費電力の割合が大きいエアコンを上手に使うことが重要となる。
○約7割が電気代を気にしてエアコンの使用控えを検討
自宅の暖房器具としてエアコンを使っている人を対象に「今年の冬は電気代を意識して、エアコンの使用を控えようと思いますか?」と質問したところ、約7割が「とても思う(27.3%)」「やや思(40.8%)」と答えた。冬の期間も多くの家庭でエアコンが使われているなか、エアコン使用者の多くがエアコンの使用控えを検討している状況だ。一般的に、冬は夏よりも電気代が高くなると言われており、冬の電気代に不安を感じている人が多いことがうかがえる。ただ、暖房器具の過度な使用控えはおすすめできないという。WHO(世界保健機関)は、寒さによる健康影響から居住者を守るための室温として18℃以上を強く勧告している。効果的な節電に取り組みながら、我慢せずエアコンを使うことが重要といえる。
○肌寒さを感じると設定温度を上げる人が7割超
エアコンは、暖房時に設定温度を1℃下げると10%の節電になるといわれている。これについて知っているかどうかを尋ねたところ、全体の約8割の人が「知らなかった」と回答した。
そんな中、今回の調査では冬にエアコン暖房使用時にも寒さを感じる人のうち、約76%は肌寒くなるとエアコンの設定温度を上げていることが分かった。エアコン運転中の肌寒さには、設定温度以外にもいくつかの原因が考えられる。例えば、室内の湿度の低下で体感温度が下がることや、暖かい空気は上昇し冷たい空気は下降する性質によって発生する「温度ムラ」で、足元に冷たい空気が溜まってしまうことなどが挙げられる。設定温度を上げた場合でも肌寒さは和らぎますが、エアコンの消費電力の増加につながる。設定温度を上げる以外にも肌寒さへの対応方法があることを意識することも大切。洗濯物を部屋干ししたり、加湿器や加湿機能付き空気清浄機を使ったりして加湿すると、体感温度を高められる。また、エアコンの風向を下向きにしたりサーキュレーターなどで空気を攪拌したりすると、足元に冷たい空気が溜まりづらくなる。こうした工夫は、エアコンの設定温度を必要以上に上げずに肌寒さを抑えることに役立つ。
○節電への取り組みの実施率は半数以下
冬にエアコンを使う際に気を付けていることについて聞いたところ、次のグラフの通り、エアコンの節電に取り組んでいる人は少ないことが分かった。最も実施率が低い「室外機周辺を掃除する」は1割未満で、実施率が最も高い「フィルターを掃除する」でも半数を下回っている。
エアコンの節電における基本的なポイントは、室内機、室外機ともにスムーズに空気を吸い込んだり吹き出したりできる状態を保つこと。そのため「フィルターを掃除する」「室外機周辺を掃除する」ことはとても重要だという。また、熱を運ぶ量によってエアコンの心臓部である圧縮機にかかる負荷が変わるため、圧縮機への負担を減らす使い方も大切。例えば「スイッチのオン・オフを控える」「風量を自動に設定する」ことなども工夫のひとつ。また、体感温度を高めるために「加湿器を使ったり洗濯物を部屋干ししたりして湿度を上げる」工夫や、室内の熱を逃がさないように「カーテンなどで部屋の断熱性を高める」工夫もおすすすめだという。
エアコンが部屋を暖める仕組みを知り、自宅にあった節電方法を意識することも大切。電気代が高騰しているなか、まもなく家庭の電力消費が年間のうちで最も増大するといわれる冬本番を迎える。今回の調査では、多くの人がエアコンを使用している一方で、節電に効果的な使い方を実施できている人は少ないことが判明した。節電に効果的な使い方をするには、エアコンが部屋を暖める仕組みや節電につながる理由を一緒に理解し、納得感を持って取り組むことが重要と言えそうだ。
○エアコンの「暖めるしくみ」
冬、部屋が「寒い」と感じるのは空気中の「熱」が少ないから。この熱を増やして部屋を暖かくするのがエアコン。エアコンは、「室内機」と「室外機」がパイプ(配管)でつながっていて、暖房時には屋外の「熱」を室内に移動させて部屋を暖かくしている。エアコンの室内機と室外機の中には、熱を空気の中から集めたり、空気中に逃がしたりする「熱交換器」が入っている。そして、パイプの中には、熱を運ぶ「冷媒(れいばい)」というガスが循環している。まず室外機は屋外の空気を吸い込み、空気中の熱を熱交換機で集める。集めた熱は冷媒が受け取り、室内機へ運ばれ、温風として送り出される。空気中の熱を集めて運んで放出するのに必要な「冷媒」を循環させているのが、室外機に内蔵された"エアコンの心臓"ともいえる「圧縮機」。圧縮機はエアコンの消費電力の約80%を使っている。エアコンが熱をスムーズに集めたり逃がしたりできる状態をつくり、圧縮機にかかる負担を抑えることが、節電にとって重要なポイントとなる。
○室外機まわりをスッキリさせる
空気の熱を集める室外機にとって空気の通り道は大切。室外機周辺に障害物があり、吸込口や吹出口がふさがれてしまうと、熱を効率的に集めることができず、無駄な電力消費につながる。障害物がない場合も、冬は室外機の周りに雪が積もって、吸込口、吹出口をふさいでしまうこともある。室外機の周辺はすっきりと余計なものは置かず、障害物は取り除くように、とのこと。
○フィルターにホコリをためない
エアコンの室内機は部屋の冷たい空気を吸い込み、暖かい空気にして送り出すことで部屋を暖かくしている。エアコンのフィルターにホコリがたまっていると、熱交換器を通る空気の量が減り、熱を送り出す効率が下がる。その分、電気代がかかってしまう。空気の通り道をふさがないよう、2週間に1回を目安に、フィルターの定期的な掃除をすることが推奨される。エアコンのフィルターを1年間掃除しないと、消費電力が約25%も無駄になると言われている。
○「エアコンの心臓」にかかる負担を減らす節電の工夫
空気中の熱を集めて運んで放出するのに必要な「冷媒」を循環させているのが「圧縮機」。圧縮機は室外機に内蔵されている。節電には、エアコンの消費電力の約80%を使っている圧縮機の負担を抑えることが大切。
○スイッチのオン・オフは控えめに
エアコンのスイッチを入れた後、圧縮機は室内をすばやく暖めるため、勢いよく動いてより多くの熱を運ぶ。室内が適温になったら、その状態を維持できる程度に力を落として安定運転を続ける。そして、室温が下がってくると、圧縮機はまた動きを強める。スイッチのオン・オフを繰り返すと、圧縮機への負荷が
高まる頻度が増え、その分、多くの電力を消費するという。ダイキンの実験では、30分程度の外出なら一度オフにするより「つけっぱなし」の方が節電につながる結果となった。
○「風量自動」で効率的に運転を
節電しようと風量を弱めに設定していると、熱交換器を通る空気の量が減り、室内に送り出す熱の量も減ってしまう。その分圧縮機に負担がかかり、余計な電気を使ってしまう。風量を自動にしておくと、エアコンはスイッチを入れたあと、どんどん熱を室内に運び、すばやく部屋を暖かくする。必要な分だけ室内の熱を増やしたら、あとは部屋の温度を維持できるように安定運転を続ける。風量自動は、より効率的な運転で圧縮機の負担を減らす。エアコンは基本的に「風量自動」を心掛けたい。
○エアコン暖房のムダを防ぐ環境づくり
冬のエアコン暖房のムダを防ぎ、効率的に使うには、お部屋の環境づくりが大切。ここではエアコン暖房時の節電につながる部屋の環境づくりのポイントを紹介する。
○部屋の温度ムラを抑える
暖かい空気は上昇する性質があり、暖房中は天井付近と床付近の温度に差が出る「温度ムラ」が起こりやすくなる。室内機で吸い込んだ空気の温度から室温を判断しているエアコンは、天井に暖気がたまっていると「設定温度に達した」と判断して、床付近が肌寒くても運転をゆるめてしまう。エアコンの設定温度を上げれば足元の肌寒さも和らぐが、その分消費電力は増加してしまう。無駄な電力消費を抑えるためには温度ムラを改善することが大切だという。
○風向はできるだけ下向きに
少しでも温度ムラを抑えるには、風向は「水平」ではなく「下向き」にするのがおすすめだという。暖かい空気は軽いため、上昇する性質がある。下から暖かい空気が自然に上がるようにすることで、温度ムラを抑える効果が期待できる。
○空気清浄機などを活用して空気を撹拌
風向を下向きにしても、時間とともに温度ムラはできてしまう。より温度ムラを抑えるには、空気清浄機やサーキュレーターなどの活用もおすすめだという。エアコンと向かい合わせに置き、天井方向に風をおくる。室内の空気をかきまぜれば、さらに温度ムラがやわらぐ。
○湿度を高めにする
空気には、温度が上がると湿度が下がる性質があり、エアコン暖房で部屋を暖めたときにも湿度は下がる。また、湿度が低いと体感温度が下がり、同じ温度でも寒さを感じやすくなる。エアコンの設定温度を上げれば暖かくなるが、消費電力の増加につながる。洗濯物を部屋干ししたり、加湿器や加湿機能付き空気清浄機を使ったりして、部屋の湿度を40%〜60%程度にするのがおすすめだという。なお、加湿機能付き空気清浄機を使うと、室内の温度ムラを抑えることにも役立つので、一石二鳥になる。
○熱を逃がさない
熱は暖かいところから冷たいところに移動する性質があり、暖かい室内から寒い屋外へ、少しずつ逃げて行ってしまう。熱がたくさん逃げるほど、エアコンは多くの熱を運んでこなくてはならない。これも消費電力の増加につながるという。
室内の熱が逃げやすいのが窓。カーテンは断熱性の高いものを選んだり、上部や下部にすきまができないよう、天井から床いっぱいまでたっぷりと垂らしたりすると保温効果が高まる。また、実はカーテンの色も節電への効果が期待できるという。暖色系でまとめられた部屋は、寒色と比べて暖かく感じるといわれている。カーテンの色で体感温度をあげて、暖房の設定温度をおさえるのも、節電の冬を快適に過ごす工夫のひとつとなる。(Yumi's life)