2024年ベストバイは「Apple Vision Pro」 2つの新体験に満足も、「アプリ」と「重量」は改善してほしい

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2024年12月26日 10:51  ITmedia Mobile

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Apple初のゴーグル型デバイス「Apple Vison Pro」

 筆者は2024年に買って最も満足した製品に「Apple Vison Pro」を選んだ。Vision ProはAppleが2023年6月5日に発表した同社初のゴーグル型デバイスだ。かぶると目の前に絶景が広がるようなデバイスで、指と視線でコントロールする。日本での価格は59万9800円(税込み、以下同)からと個人向けの製品としては高価だ。


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●諦めていたかぶり物になぜ再び手を出したのか


 頭にかぶるタイプの製品は他にもある。実際、筆者は過去に「Samsung Gear VR」を体験したことがあり、対応するSamsung製のGalaxyを装着するだけで、映像コンテンツやゲーム空間の中に入り込んでしまったかのような体験ができる。その手軽さを気に入り、スマートフォン「Galaxy S7 edge」とともに購入した記憶があるが、やはり対応するスマートフォンがなければ使えないし、実際に体験していたこは映画鑑賞にとどまっていた。商品自体はいいコンセプトだったのだが、できることが限られていたのと、仕事には活用できないと感じた。


 それ以降は頭にかぶるタイプの製品を諦めていた筆者だが、頭にかぶりながらもできることがそれと比べて多く、外界をふさがないデバイスが世に出てきた。それがVison Proだ。購入から約半年が経過した現在でも、別次元のデバイスだと確信できる。AppleはVison Proを「空間コンピュータ」と表現するが、空間上だけでコンテンツを楽しむというよりは、まるで現実空間にアプリケーションが浮かび上がり、外界を見ながらコンテンツを楽しめる、というのが一番の魅力であり購入の理由にもなっている。


 外界の映像は前面のカメラで撮影し、内部のmicro-OLEDディスプレイ(両目で約2300万ピクセル)に表示され、かぶったままでも外の様子を確認できる。実際に映像が表示されるまでの遅延は体感的に少ないと感じ、目は覆っていても口元がふさがれないため、かぶったまま水が飲める。ただ、鼻の部分をギリギリまでふさぐため、ストローがなければコップがぶつかって、飲みづらい感はある。


●キーボードは視認しやすく、古い写真は立体視可能に


 使い方についても気に入っている。Vision Proは従来のゴーグルデバイスのようなコントローラーは不要で、指でアイコンやウィンドウに視線を合わせて、それを人差し指でつまむようにしてタップしたり、ウィンドウを動かしたりできるのが基本的な操作方法となる。


 といっても、キーボード入力は手で行いづらいため、Webで何かを検索をしたり、メールを返信したりする際はBluetoothキーボードの「Magic Keyboard」を利用している。ただ、Magic Keyboardはバックライトがないため、手元が暗い場所では扱いづらいが、新しいvisionOS 2へのアップデートにより、明るい場所でならMagic KeyboardをVision Proで認識し、よりはっきりと表示でき、見やすくなった。


 visionOS 2へのアップデートではもう1つ満足した体験があった。それは画像の立体的な表示だ。Appleは「空間写真」と呼んでいる。アップデート前までは「空間ビデオ」対応のカメラやiPhoneで撮影した画像しか立体的に表示できなかったが、アップデート後は2D(平面)画像を自然な深度と立体感を持つ空間写真に変換可能になった。


 過去の記事でも伝えたが、実はVision Pro発売のタイミングで愛犬が天国へ旅立った。あらかじめiPhone 15 Pro Maxで撮影しておいた愛犬の動画がVision Proで臨場感が増し、自然な背景ボケも相まって、まるで今は亡き愛犬がよみがえったかのような感動を得られた。


 ここでの話題は動画に尽きていたのだが、iPhone 15 Pro Maxに機種変更する前に空間ビデオ/空間写真非対応のiPhone 14 Pro Maxで撮りためていた平面の写真をVision Proで立体的に見ることが可能になったわけだ。Vision Proでの空間写真は正面だけでなく横から見ても立体的で、空間ビデオ同様に愛犬との思い出が生き生きとよみがえるかのようだ。


●メリットがある一方で、困っていることも


 ここまでは買ってよかったことだが、対応するアプリの少なさが使用上のボトルネックとなっている。Appleの「iPhoneやiPadのアプリがそのまま使える」という触れ込みとは違い、購入から半年が経過した現在もApp StoreにGmail、Google マップ、YouTubeなどのGoogle系アプリ、Netflixなどはない。


 かぶると外界も手元も見えづらくなり、映画鑑賞やゲーム程度にしか活用できなかったVRゴーグルと比べて、Vision Proはできることが多いと感じるが、Vision Proでさらに多くのアプリを体験したいとも思うところ。現状は映画ならPrime Video、メールなら標準のメールアプリ、会議はZoomといったように使い分けではいるが、それでもGmailやYouTubeなどGoogle系のアプリはVision Proにも欲しいところだ。


 使用する際に最も困るのは重量だ。Vision Proの約600gは重たい部類に入る200g台のスマートフォンが約3台分に相当する。Vision Proは後頭部と側面に接する太いバンドで安定性を高める「ソロニットバンド」に加え、頭頂部と後頭部に接する2本のストラップで安定性を高める「デュアルループバンド」が付属する。


 どちらかといえば、ソロニットバンドの方が安定するが、それでもディスプレイやカメラが備わり、目を覆う前方部分に重量が偏ってしまい、使っていると次第に頭が疲れてくる。だからこそ、といっては語弊があるかもしれないが、「バッテリーのみの使用で最大2時間、動画再生なら最大2.5時間」という連続駆動時間がそれほど気にはならない。


 実際のところ、Vision Proとソロニットバンドの組み合わせで、2.5時間以上連続で使用したことがないためだ。逆にそれほど頭に負担がかかり、使うのをためらうときもある。価格以前に、「対応するアプリの少なさ」と「重量」の2点を改善できなければ、Vision Proの未来はないともいえそうだ。



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