連載【日本シュウマイ協会会長・シュウマイ潤の『みんなが知らない、シュウマイの実力』】第11回
餃子は家で作るけれど、シュウマイは作らないという方が多いようですが、実は餃子よりも簡単!? しかも、そのシュウマイは美味しくて愛おしい......。その体験をして欲しいシュウマイ研究家のシュウマイ潤が、シュウマイを自宅で手軽に作れる方法と魅力を教えます。
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シュウマイが餃子に比べてメジャーになりきれない大きな理由のひとつに、家庭で手作りシュウマイの文化が浸透していない点が挙げられます。私も幼少期、自宅でシュウマイを作った記憶がほとんどありません。一方で、餃子は頻繁ではなかったものの作った記憶はあります。
そもそも、なぜ餃子は家庭で作ってシュウマイは作らないのか?
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その理由は、シュウマイと餃子がいつから日本で普及し始めたことに大きく関わっていると、私のシュウマイ研究においては考えられるのですが......長くなるので、今回は私の周辺の人々に対する意見をもとにしたひとつの推測をお伝えします。
自宅で餃子は作り、シュウマイは作らないという人の多くは「シュウマイのほうが作るのが難しい」
と言います。しかし、そういう人の多くはシュウマイを作った体験自体がなく、イメージでシュウマイの手作りを難しくしている印象が強いのです。その先入観が手作りシュウマイを敬遠させているのだと、私は推測しています。
ですが、シュウマイを実際に作ってみると、驚くほど簡単。ネットやレシピアプリを検索すれば数多くのレシピが現れ、ほとんどがシンプルな構成であることに気づくはずです。そのポイントを大まかにまとめると――。
まず、材料がシンプル。
・シュウマイの皮
・豚肉
・玉ねぎ
・片栗粉などのつなぎ
・塩胡椒などの調味料
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があれば、基本の豚肉シュウマイは完成します。
次に、作る工程もシンプル。
・玉ねぎを刻む
・豚肉、玉ねぎ、つなぎ、調味料を混ぜる
・皮で包む
・蒸す
で完成。
ひとつコツがあるとすれば、具材を混ぜ込む際、玉ねぎに事前に片栗粉などのつなぎをまぶすと、玉ねぎの水分が閉じ込められ、水っぽさが出ず、旨味がギュっとしまった仕上がりになります。
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包む(中華の料理人は「握る」とも言います)作業も実は簡単。
皮の上に具材を置き、周りをギュっと握ってしまえば完成。多少不恰好でもいいんです。余程バランスが悪くなければ、蒸し上がりは不思議とシュウマイの形に仕上がります。しかも4、5個包む経験を積むと、なんとなく要領がわかってきて、意外と"さま"になるシュウマイに仕上がるのです。
包む作業もコツがあるとすれば、道具を活用すること。特に具材を皮にのせる際、ありもののスプーンなどで代用しがちですが、ぜひ「木べら」を使って欲しいです。スプーンだと豚肉などの具材が張り付いてしまったりしますが、木の材質だとスッと剥がれ、キレイに仕上がります。
そして何より、加熱調理自体がとても簡単。もちろん電子レンジでもできますが、ハードルが高いと思われがちな中華せいろも、要は鍋のお湯を沸かすだけでOK。蒸す時間さえ間違えなければ、餃子のように焼き加減に気を使ったりする必要はなく、むしろシンプルな作業のみで調理できるのです。
中華せいろは管理に手間がかかるというイメージの人も多いですが、使用後しっかりと乾燥させ、カビを発生させないことを徹底すれば、取り扱いは難しくありません。
なにより、手で包んだばかりのシュウマイを中華せいろで蒸しあげた味は、どんな名品のシュウマイにも負けない、肉と玉ねぎが融合する旨味、アツアツならではの食感、凝縮された風味。これこそシュウマイ!という、料理の魅力を体感できるはずです。
中華せいろがなければ、フライパンと蓋(ふた)、キッチンペーパー、刻み野菜などで代用することも可能。せいろに比べて若干、水分が残りがちですが、蒸したてのシュウマイの醍醐味を十分味わうことができます。
最近では、たこ焼き機でシュウマイを蒸し焼きにする方法も。この場合は"焼き"のカリッとした香ばしさと、蒸したシュウマイのジューシーさが融合し、これはこれで自宅で作るシュウマイの魅力のひとつと言えるでしょう。自宅でシュウマイパーティーをする際はオススメです。
そして、改めてシュウマイを手作りすると、シュウマイ自体の知られざる魅力と価値が見えてきます。思ったより簡単なのに、想像以上に美味しい――。
シンプルな具材が織りなす味の奥行きや、旨味の重層感。皮と具材との食感のコントラスト、蒸し料理ならではの香りと食感。自分が作ったからこそ、シュウマイに秘められた魅力に気付きます。
一方、自分で作ってみると作り手の立場が分かり、名品と言われるプロたちが作るシュウマイはもちろん、スーパーやコンビニに並ぶ、市販のシュウマイの価値にも改めて気付きます。
実は昨今、餃子専門家や餃子の皮メーカーの方からの話では、餃子ですら家庭で手作りする機会が減っているそうです。餃子もシュウマイも、手作りでその料理の愛を育み、その価値に気付くことは同じ。これは日本の包む食文化全体にとって、由々しき状況だといえます。
後手に回るシュウマイが、餃子に塩を送る余裕なんてないだろうと言われそうですが、大きな視点で考えれば、餃子もシュウマイも同じ家族。どちらも包み込む大きな心で、手作り文化を育てる機会を増やしていきたいと、シュウマイを応援する代表として改めて思います。
文・写真/シュウマイ潤