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「iDeCoが出口でステルス増税か?」とネットで話題になっている。自民・公明両党は12月20日、令和7年度与党税制改正大綱を決定。その中で触れているiDeCoの改正では、掛け金可能額が大きく増やされた一方で、出口では“改悪”もあったからだ。
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、老後に向けた資産形成を税制優遇で支援する制度だ。加入者が毎月の掛け金を投資信託などで運用し、60歳以降に受け取る。掛け金は所得から差し引かれ、その分だけ所得税や住民税が減る仕組みで、運用時の税金も非課税になる。ただし受け取り時には課税される。NISA(少額投資非課税制度)のような完全非課税とは異なり、税金を先送りする仕組みだ。
企業年金のない会社員の場合、月額2.3万円だった拠出限度額が6.2万円に引き上げられる一方、受け取り時の税制優遇措置である退職所得控除の利用制限が強化される。制度の仕組みを知る税理士は「今後も改悪は起こり得る」と指摘する。
●拠出限度額は大幅引き上げ
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改正の目玉は、iDeCoの拠出限度額の大幅な引き上げだ。自営業・フリーランスの場合は月額6.8万円から7.5万円へと0.7万円の増額となる。より大きな変更となるのが会社員の限度額だ。企業年金がない会社員の場合、月額2.3万円から6.2万円へと3.9万円も増える。
税制改正大綱では「穴埋め型による引き上げ」と表現されている。「これまでは企業型DCに加入している場合など、他の年金制度の加入状況によってiDeCoの拠出限度額が制限されていた」とfreee認定アドバイザーで税理士法人クラウドパートナーズの村井隆紘代表税理士は説明する。今回の改正では、こうした制約を緩和。企業年金制度の有無にかかわらず、全体として拠出額を引き上げる。
「加入するかどうかは自由なので、より多くの金額で加入できるようになるという点では、ポジティブな改正だ」と村井氏は評価する。
●iDeCo出口での“改悪”
一方で、同じ税制改正大綱には表立って報じられていない改正も含まれている。iDeCoの受け取り時、つまり出口での税制優遇措置の制限強化だ。
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「これまでiDeCoを60歳で受け取り、5年後に会社の退職金を受け取る場合、両方に退職所得控除という税制優遇を適用できた」(村井氏)。通称「5年ルール」と言われていたこの5年という期間が、2025年度から10年に延長される。つまり最短の60歳でiDeCoを受け取る場合、退職金に対する優遇措置をフルで受けるには70歳まで待つ必要が出てくる。
「5年が10年に伸びたのは完全な改悪だ」と村井氏は指摘する。
●影響があるのは誰か
今回の制限強化で最も影響を受けるのは会社員だ。「iDeCoにも加入している会社員の場合、退職金を先に受け取ってしまうとiDeCoには控除が使えなくなる。逆にiDeCoを60歳で受け取ると、退職金の満額控除には70歳まで待つ必要が出てくる」(村井氏)。退職金を受け取るタイミングを自分でコントロールできる会社員はほとんどおらず、事実上、退職所得控除を二度使う道は閉ざされた形だ。
さらに退職金を先に受け取る場合の制限は一層厳しい。通称「19年ルール」というものがあり、退職金受け取りから20年経過しないとiDeCoの退職所得控除を満額利用できないからだ。55歳で会社の退職金を受け取った場合、iDeCoは75歳まで待たないと控除を受けられないことになる。ただしiDeCoの受給期限は75歳のため、実質的にこの制限を回避するのは困難だ。
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一方、自営業者の場合は比較的対応の余地がある。「例えば55歳で事業を廃業して小規模企業共済を受け取り、その後iDeCoを75歳で受給するという選択肢がある」と村井氏。受給のタイミングを調整することで、2つの退職所得控除を活用できる可能性が一応残されているのだ。
●政府の狙いは?
拠出限度額の引き上げという改善と、退職所得控除の制限強化という“改悪”。一見すると矛盾する今回の制度改正は、実は年金制度全体の資金繰り改善という同じ目的のためだろう。
現状の年金制度は、収入より支払いの負担が大きく、その悪化は避けられない。このため政府は、2つの施策を同時に打ち出した形だ。1つは掛け金増額による収入増。もう1つは、一時金での受け取りを抑制し、支出を抑える狙いだ。
「なるべく早く収入を確保し、支出は遅らせる。そういった年金財政の改善が背景にあるのだろう」と村井氏は説明する。退職所得控除の制限強化が年金受給には影響しないのも、この文脈で理解できる。
●iDeCoの改悪は今後も必至
こうした制度変更の流れをどう評価すべきか。「改悪は今後も起こるのではないか」と村井氏は指摘する。実際、今回の税制改正大綱でも、退職所得課税の見直しについて来年度以降の検討課題として明記されている。現在凍結中の特別法人税が復活するのではないかという不安も根強い。
「これは現状の年金制度で避けられない流れ。現役世代か受け取る世代のどちらかが、必ず何らかの影響を受けることになるだろう」(村井氏)。
ただし退職所得控除の制限が強化されても、iDeCoの一時金受け取り時には退職所得として扱われ、控除後の金額を半分にして課税される仕組みは維持される。これにより、通常の所得に比べて税負担は大幅に軽減される。60歳まで引き出せない制約はあるものの、老後資金を蓄える手段としてはNISAを上回る優位性がある」というのが、村井氏の見方だ。
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