GPUとCPUは「維持」と「待ち」が多かった2024年

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2024年12月26日 16:11  ITmedia PC USER

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1月初旬、パソコンSHOPアークに貼られた「ROG-MATRIX-RTX4090-P24G-GAMING」のポスター

 グラフィックスカードのトレンドはNVIDIAのGeForceが作る――長らく続く常識は1年を通して揺らぐことがなかった。


【その他の画像】


各年のアキバまとめ


・2023年 前編


・2023年 後編


・2022年 前編


・2022年 後編


・2021年 前編


・2021年 後編


●GeForceはSUPERシリーズで堅調をキープ そして次の世代に向かう


 ウルトラハイエンドクラスは、2022年10月に登場した「GeForce RTX 4090」が不動で存在感を放ち続けている。1月には液体金属を採用した水冷式カード「ROG Matrix Platinum GeForce RTX 4090 24GB GDDR6X(ROG-MATRIX-RTX4090-P24G-GAMING)」が約60万円で登場するも、発売日に売り切れるショップが続出。自作PCにかける予算の天井を破壊する力を誇示した。


 ハイエンドクラスは1月中旬に登場した「GeForce RTX 4070 SUPER」搭載カードを皮切りに、1月末に「GeForce RTX 4070 Ti SUPER」、2月初旬に「GeForce RTX 4080 SUPER」が加わり、新たな顔ぶれで売り場をにぎわせている。


 それぞれ“SUPERなし”のGPUよりワンランク上の性能を誇り、その後のハイエンド市場を牽引したが、入荷直後の反響は“SUPERなし”カードの価格や供給具合によってまちまちだった。


 9万6000円弱〜13万円超で登場したGeForce RTX 4070 SUPERは「少し頑張れは上の4070 Tiに手が届く」と様子見され、16万3000円弱〜23万円前後で登場したGeForce RTX 4080 SUPER搭載カードは「高騰と枯渇が目立つRTX 4090と違って、現実的に選べるウルトラハイエンドとして」順調にヒットを飛ばしている。


 以降もM.2 NVMe SSDスロットを備えるRTX 4060 Tiカード「Dual GeForce RTX 4060 Ti SSD OC Edition 8GB GDDR6」や、NoctuaとASUS JAPANがコラボした「ASUS GeForce RTX 4080 SUPER 16GB GDDR6X Noctua OC Edition」など、話題を集めるグラフィックスカードは複数登場したが、新たなGPUが加わることはなかった。それでも「ゲーム用途なら圧倒的にGeForceです」という評は変わらない。


 そして秋頃になると、ハイエンドクラス以上の品薄傾向は深刻になっていった。電気街でも定着した感のある11月下旬のBLACK FRYDAYセールの折には、「RTX 4070 Ti SUPERより上のカードは全然入ってこなくなりました」とのショップの悲鳴も聞かれるようになった。


 ある店員氏は「2025年の年初には次の世代のウルトラハイエンドが出るというウワサもあります。実際それを待っている人もいるみたいですが、困るのはハイエンドクラスを望む人達。次が出るにしても間が空くはずなので、その間に選べるカードが売り場からなくなる可能性がありますから」と話していた。


●Radeonも現行世代を維持する流れ 年末に気を吐いたIntel Arc


 Radeonの新GPUも上半期に集中していた。1月下旬にはメモリを16GB搭載したミドルレンジクラスの「Radeon RX 7600 XT」カードが5万9000円弱〜6万3000円弱で複数登場。ハイエンドクラスでは3月初旬に「Radeon RX 7900 GRE」搭載カードが9万6000円弱〜11万円弱でデビューしている。


 ただし、いずれも既存のGPUを補強するラインアップにとどまり、市場に大きなインパクトを与えることはなかった。6月に2万9000円弱〜3万7000円弱で登場したメモリ8GB版の「Radeon RX 6500 XT」カードも同様に反応は静かだった。


 1年を通した話題を集めたのはIntel Arcだ。5月にファミリー初の白基板モデル「Intel Arc A770 ROC Luna OC Edition」がSPARKLEから5万2000円弱で登場し、7月にはギガバイトからもArc A380搭載カードが売り出され、ベンダーの選択肢が広がった。


 また、同月にはメモリを16GB積んだ「Intel Arc A770 Challenger SE 16GB OC」がASRockから5万3000円弱で登場し、「大容量メモリがこの値段で買えるとあって、動画編集などを目的とした層を中心にじわじわ売れている」といったポジティブな声がよく聞かれた。


 さらに12月には、新世代のミドルレンジGPU「Intel Arc B580」を搭載したカードが複数社から5万円弱〜5万3000円弱で売り出されている。発売直後は「非ゲーム層のニッチな需要だと思います」と入荷点数を絞るコメントがいくつかのショップから聞かれたが、間もなくして「案外よく売れている」との評判が広がるようになった。


 2月下旬に再編して誕生したパソコン工房 秋葉原パーツ館は「前世代よりゲーム性能が上がっていて、動画エンコードもしつつゲームも楽しみたいという人にはちょうどいい選択肢といえますね」と評価していた。


 次は、CPUと対応するプラットフォームのトレンドを振り返ろう。


●Intel CPUは紆余曲折しながら「Core」から「Core Ultra」の時代に


 Intel CPUは、年初にCoreプロセッサ(第14世代)の通常タイプと低消費電力版が出回り、先行して2023年10月に登場した“末尾K/KF”モデルと合わせたフルラインアップが展開されるようになった。


 そのまま好調を維持するかと思いきや、第13世代CoreとCore(第14世代)の不具合問題が長引いているうちにブレーキがかかり、後述する「Ryzen 9000」シリーズ登場前の7月頃には「IntelとAMDの売れ行きはちょうど5:5」という声が多くのショップで聞かれるようになった。


 打開の兆しは10月だ。新世代CPU「Core Ultra 200S」シリーズと、対応する「Intel Z890チップセット」を搭載するLGA1851マザーボードが売り場に並ぶようになると、各ショップは熱気を帯びる。


 最上位CPU「Core Ultra 9 285K」(11万6000円弱)を中心にマシンを一式組もうと考えるユーザーが集まり、CPUと共に「ROG MAXIMUS Z890 EXTREME」や「Z890 Taichi AQUA」などの17万円前後のウルトラハイエンドマザーボードが取り合いとなった。


 しかし、285Kの入荷量が初回から少ない上に、再入荷の目処が立ちにくい状態が続いたことで、「IntelでハイエンドPCを組もうとすると、予算以外の不安材料が生じてしまう」(某ショップ)という印象が年の瀬まで尾を引くことになってしまう。


 それでも、消費電力の低さや以前より高いクロックで安定動作が望めるCUDIMMのサポートなどの強みから着実に支持を広げており、年末にかけても「ROG STRIX Z890-I GAMING WIFI」(8万5000円弱)や「MEG Z890 UNIFY-X」(12万3000円前後)など、対応マザーが登場しては話題を集めている。


 なお、AI処理に特化したプロセッサーであるNPUを内蔵した新世代CPUに合わせて、製品名に「AI」が入ったマザーボードが目立ったのもプラットフォーム全体を通しての動きといえそうだ。AIを冠する製品の売れ行きはまずまずながら、「AI学習に関してはまだ様子見の人が多い印象ですね」との評価が多かった。


●年間を通してX3Dシリーズが輝いたRyzen


 1年を通して、コンスタントに新製品が投入されたのはAMDのRyzenだ。まず2月には、Socket AM5対応のAPU「Ryzen 8000G」シリーズが3モデル登場した。とりわけ下位の「Ryzen 5 8500G」はGPUにRadeon 740Mを内蔵して3万円弱となり、「最低限の性能でゲームも楽しみたい層に人気」とまずまずの評価を受けていた。


 8月になると、新世代となる「Ryzen 9000」シリーズが下位から販売開始し、お盆明けには最上位の「Ryzen 9 9950X」(初回12万円前後)を含む4モデルがそろう。


 それから1カ月強遅れた9月末には、対応する「AMD X870E/X870チップセット」を搭載したマザーボードも登場し、USB4などの新機能がフル活用できる環境が整った。当時の反応は「USB4対応を求める人はまだ少なく、それより底値になったAMD X670E/X670マザーと組み合わせる人が多い印象です」(TSUKUMO eX.)というコメントに象徴される。


 一方で、年間のRyzen人気を牽引したのが2023年4月に登場した「Ryzen 7 7800X3D」だ。L3キャッシュを96MB搭載し、ゲームパフォーマンスの高さと年明け早々は6万円を切る割安さから、Intel Core優勢の状況でも一番売れるCPUに挙げるショップが珍しくなかった。価格は夏頃から高騰し、9月には8万円弱までになったが、それでも存在感を保っていた。


 そしてRyzen 9000世代のX3Dモデルが待ち望まれる中で、11月初旬には「Ryzen 7 9800X3D」が8万7000円弱で登場した。販売開始直後から飛ぶように売れ、「1つの型番のパーツとしては2024年一番の人気」との評価が各ショップから聞かれた。


 以上のように、グラフィックスカードは主流を張るGeForceが静かにシェアを維持し、CPUはCore UltraやRyzen 9000シリーズの登場などで沸いた1年だったといえる。大きなシェアの変動はなかったが、自作PC市場のトレンドを見るとビジュアル面でも動きがはっきり見て取れる。後編ではそこに着目したい。



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