警察初動捜査を問題視=取り調べ、証拠保全など―審理長期化にも言及・袴田さん最高検検証

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2024年12月27日 07:31  時事通信社

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時事通信社

事件の約1年2カ月後にみそタンクから見つかり、犯行時の着衣とされた衣類の血痕(右)と、検察側の実験で変色した血痕=2022年11月、静岡市葵区
 警察官の取り調べは任意性を欠いた―。最高検は、袴田巌さん(88)の再審無罪が確定した静岡一家4人殺害事件の捜査・公判などに関する検証結果で、当時の静岡県警の初動捜査を問題視した。再審請求審での裁判所の訴訟指揮も、審理長期化の一因だとした。

 最高検はまず、県警の取り調べについて検証した。深夜・長時間にわたった上、勾留の長期化をほのめかし、取調室で排尿させるなどしたと指摘。「袴田さんの自白は任意性を欠いたものだった」とした。

 捜査に関しては、確定判決で有罪の決め手となった「5点の衣類」が発見されたみそタンク内の捜索や、写真撮影による保全が不十分だったと判断。袴田さんが犯人と推認される事情となった左手中指の切り傷も事件直後に撮影しておらず、「真偽の検討が困難となった」と指摘した。

 再審請求審が長期化した原因についても言及した。第1次請求審では、約8年1カ月が経過した段階で裁判所、検察、弁護人による打ち合わせが3回しか開かれず、「裁判所が積極的に審理を促進する方策が十分でなかったことが要因の一つ」と認定した。

 弁護人が証拠開示を計5回求めたのに、検察官が開示しなかったことについては、「消極的とも言える対応をしていた」と釈明。ただ、当時は通常の刑事裁判でも証拠開示制度がなく、裁判所からの開示命令や勧告もなかったとして「問題とは認められない」とした。

 一方、第2次請求審での証拠開示の対応や即時抗告に問題は見当たらなかったと判断。現状では担当検察官によって再審事件への対応に差が生じ得るため、統一的な対応ができる仕組みなどを構築すると表明した。 
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