身長180センチのウクライナ人女性が伝えたい、日本人の“外国人”に対する誤解

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2024年12月27日 16:31  日刊SPA!

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モデルの仕事を母に打ち明けたところ、ショックを受けていたようだ
2024年5月から6月にかけて、X(旧:Twitter)上で「#デカ女ブーム」というワードが突如流行し、連日トレンド入りする事態になった。これまでも“界隈”で一定の人気を集めてきた高身長の女性たちだが、その日常生活とは一体どのようなものなのか?
ウクライナ出身の美女コスプレイヤーとして話題のネトーチカ(アニャ)さんは、身長180センチ。当事者目線で実生活での「あるある」や、ならではの「悩み」などを語ってもらった。

今回話を聞いたのは、身長180センチのネトーチカ(アニャ)さんだ。前回の記事に引き続き、ウクライナ出身の美女コスプレイヤーとして話題を振りまく彼女に、当事者目線で実生活での「あるある」や、ならではの「悩み」などを語ってもらった。

◆東京の冬は「ウクライナ人からしたら春」

――前編記事では来日されてコスプレイヤーとして活動を始めた経緯をうかがいました。日本では東京以外に地方観光などもされましたか。

ネトーチカ:北海道は気候がウクライナに近くてとても良かったですし、秋田・青森もお気に入りです。雪景色の露天風呂も楽しみしました。

――やっぱりウクライナの方からすると日本は暑いですか。

ネトーチカ:東京の夏はクレイジーです。東京の冬はウクライナ人からしたら春みたいなものですね。オデッサは3月でも雪が降ります。ウクライナにいた頃、オデッサ生まれの私には南部出身者のプライドやアイデンティティがあったのに、日本の友人に「いや、オデッサもかなり北だよ」と言われて、ショックを受けました。

◆日本は危なそうな人しか声をかけてこない

――八尺様や「ファイナルファンタジーVII」のティファ、「バイオハザードヴィレッジ」のディミトレスク夫人といったコスプレでもバズっていましたね。すっかりネットアイドルのようなかたちで有名になりましたが、東京のような人が多い街を歩くのは大変では?

ネトーチカ:基本オタクなので、ウクライナの頃からあまり外に出歩きたくないんです。日本でもほとんど家にいます。

――本当にシャイなんですね。ナンパされたことはありますか?

ネトーチカ:ウクライナは、もともと他人との距離感が近いので普通の男性も声かけてきますけど、日本は危なそうな人しか声をかけてこない気がします。ウクライナ語で喋っているのに無視して日本語でワーワー言われて……困ります。東京は面倒くさいです。

――出不精とのことですけど、通勤電車で怖い思いをしたことも?

ネトーチカ:日本で電車に乗ると、ちょうど私の胸のあたりにおじさんの顔がくるときがあって、そういうときは危ないなと感じます。おじさんにいきなり写真を撮られてダッシュで逃げられたこともありますから。

――身長高くてちょっと得したみたいなエピソードも頂いていいでしょうか……ポジティブなものを。

ネトーチカ:高い木に登って降りられなくなった猫を保護しようと、近所のおばあちゃんやお巡りさんが手をこまねいている場面に遭遇したことがあります。「掴まえてくれません?」と言われて、猫を抱き抱えたときはスーパーマンみたいな気分を味わいました。

◆“ソビエト世代”の両親は「厳しかった」

――避難先の日本で「#デカ女」の波に乗りネット有名人になるって、なかなか数奇な半生だと思うんですが、ウクライナでもモデル活動は全くの未経験ですか?

ネトーチカ:高校の頃から24歳で来日するまで、けっこうモデルのスカウトもあったんですけど、両親が厳しかったので実際に挑戦したことはなかったです。両親は“ソビエト世代”なので、「モデルなんて結局は人身売買だ!」「いかがわしい西側の資本主義に娘が毒される!」という考え方なんです。

――え、じゃあ日本でのコスプレやモデル活動はご家族に明かしていないんですか?

ネトーチカ:母には言いました。やっぱりショック受けていましたが、両親がいるオデッサはとても遠いのでどうしようもないし、なんとなくいまは認めてもらっているという感じです。今は亡くなった父はジャーナリストということもあって倫理的に非常に真面目で厳しい人でした。母もちょっと暴力的というか……気が強くて厳しい人です。

――暴力的!? 個性的な家族ですね……。

ネトーチカ:姉もわりと母に近いタイプで、ウクライナの実家に私の居場所はなかったです。父は部屋にこもって考え事をしているようなタイプでしたから、私は父の内向的なところを引き継いでいるのではないかと。

◆ウクライナに「友達は一人しかいなかった」

――ネトーチカさんってウクライナではどんな“キャラ”だったんですか?

ネトーチカ:ウクライナでは相当鬱っぽいキャラで、なんなら友達は一人しかいなかったです。周りからは完全に鬱だと思われていました。知り合いにも「ネトーチカ、お前は鬱なのか?」とよく言われていました。ウクライナ人ってみんなパーティーとかするんですけど、私は全然そういう場に行かないから。

――それがネトーチカさんの持って生まれた気質なんですね。

ネトーチカ:ウクライナで猫を飼っていたんですが、飼い主の私の性格に似て鬱っぽかったです。5階から飛び降りようとしたことが何回かありました。死にきれずトボトボとした足取りで私のもとへ無事に帰って来てくれましたが。

――もう一体なんの話を聞かされているのやら(笑)。

◆会社でのランチは「弁当をこっそり食べている」

――ネトーチカさんって周囲からの誤解が多そうですね。

ネトーチカ:身長も高いし、こういう見た目だから、お酒が強くてクラブ的なチャラいノリが好きだと思われがちなんですが、とてもしんどいです。これもオタクのジェネレーションZっぽい話なんですが、会社でランチに誘われるのも苦手ですね。ランチに誘われたくないから弁当を持って行って、こっそり人のいないところで隠れて食べています。

――「人を見た目で判断する」風潮は払しょくされつつあるのかと思いきや、現実はまだまだなんですね。

ネトーチカ:周りの同僚などからは、「海外の人は職場でドライなんだな」と思われているんですけど、単に私がそういうキャラというだけです。社交的、飲み会好き、盛り上げ上手みたいなイメージは全て誤解です。私には当てはまりません。

◆「スラブ圏での伝統的な飲み物」の無料試飲会を開催

――こんなに見た目とギャップがあってユーモアのある人とは思いませんでした。最後に今後の展望などをお聞かせください。

ネトーチカ:昔ながらの居酒屋に貼ってあるような「海辺で水着の女性がビールを持っている写真」が大好きなので、そうしたテーマのフォトブックをいつか出したいと思っています。あとは今年の冬コミにも参加する予定です。

――ウクライナ情勢も先行き不透明ですが、読者やファンへのメッセージはありますか。

ネトーチカ:9月にウクライナなどのスラブ圏での伝統的な飲み物「クワス」の無料試飲会イベントを開催したら、とても好評でウクライナへの多くの寄付も集めることができ、本当に嬉しかったです。今後はもっと多くの日本の方に飲んでもらう機会を増やし、チャリティーにつなげていきたいです。あと、いま日本で働いている会社は建築系の事業を行なっている企業なので、いつかウクライナの戦後復興などにも携わりたいと思っています。

<取材・文/伊藤綾>

【伊藤綾】
1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。X(旧Twitter):@tsuitachiii

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