日銀は利上げ停止、FRBは利上げに反転?“落とし穴”満載の欧州経済が世界のリスクに?2025年の経済の波乱要因を分析

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2024年12月28日 07:08  TBS NEWS DIG

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日本経済を左右する欧米経済や、内外の金融政策の2025年の見通しは?エコノミストとTBS経済部デスク・解説委員の3人が経済・金融の世界で2025年に注目すべきテーマを深掘りしました。

【映像】2025年日銀は利上げ“打ち止め”か

“深い追いは禁物”だが、アメリカのインフレ率は要警戒

「2025年は様々なテーマで(金融市場が)右往左往する可能性がある」と口火を切ったのは、大和証券チーフエコノミストの末廣徹さんです。

2024年は世界経済に影響を与えるアメリカ経済は変動が少なかったものの、市場の方が細かいテーマを追うことで「見通しの方が勝手に変化していた」1年だったと指摘します。

その上で「世界中で経済成長率もインフレ率が落ち着いていることから経済環境は大きく変化しない」と末廣さん。2025年も同様に金融政策などに市場が大きく反応する状況が続きそうだと予想します。

こうした情勢は「一言で言うと“深追いは禁物”」だとして、市場の動きは経済指標や金融政策などへの過剰反応である可能性を指摘します。

「2025年は新しい経済の“均衡点”を目指して細かい局面では(市場が)荒れる可能性がある」と警告するのはTBSの播摩卓士 上席解説委員です。

播摩
「アメリカ経済は落ち着いている。ただアメリカのインフレ率が本当に2%に落ち着くのか、2025年も本当に利下げが続くのか。場合によっては方向転換で利上げに変わる局面もなきにしもあらずというのが私の予想です」

アメリカの中央銀行にあたるFRBが12月に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)は2025年の金利引き下げの見通し回数を2回と公表しました。9月公表の前回見通しの半分の回数です。

播摩
「背景にあるのはアメリカ経済の強さです。消費者物価指数(CPI)はピークから下がってはきたものの、CPIの総合指数は足踏みしていることは明白なわけです。ここから本当にFRBが目指す2%インフレに近づくことができるのかが最大の焦点です」

「トランプ次期米政権が関税を引き上げ、大型減税が続いて財政支出も増えると、インフレ要因になります」

播摩解説委員はこの点から市場関係者は2025年2回の利下げは難しいと見ている人が多い、と指摘します。

「利下げは1回だけ、あるいは1回やった後に利上げに転じなければいけなくなると、アメリカではマネーの流れは利下げ方向だというストーリーが変わってしまう。そうなると波乱要因かと思います」

日銀、利上げ停止のタイミングは2025年中か

末廣
「実はアメリカ経済が強いかどうかの見方はまだ定まってないと思っています。イノベーションが起きており生産性も上がっているという見方もあるものの、今のアメリカ経済の強さは他の国にかなり犠牲にしたものだと見ています」

「コロナ禍の前後でFRBはかなり金融政策を動かして、アメリカはいち早くインフレが収まった。けれども、それによって通貨安を日本など他国に押し付けている面もある」

「つまり相対的に強いアメリカにマネーが集まっているものの、世界全体では地盤沈下が続いている。アメリカだけが良い状況がどこまで続くのかは疑問です」

播摩
「結局インフレがどうなるかが、大きなポイントです。かつてはグローバル化で世界中から安いものや労働力を買える時代で、2%の物価目標を目指すことができた。最近は経済安全保障の観点もあってそれができなくなっている」

「仮にインフレ率3%が常態化すれば、アメリカは利下げをできなくなる。円安が続いた上でそのようなドル高要因が出れば、いつまでたっても日本の実質所得はプラスにならないかもしれない。日本にとっては暗いシナリオです」

こうした状況下での2025年の日銀の利上げについて、末廣さんは円安ではなくあくまでインフレ率に軸足を置くものになると指摘します。

末廣
「超円高のときのように、誰もが円安になってほしいと思っていれば話は簡単ですが、いまは立場によってかなり望ましい水準が変わってしまうので、日銀がどこを重視するのかは非常に読みにくい」

「ただ少なくとも円安のスピード自体は2023年や2024年と比べれば2025年の方が少し落ち着くことを考えると、日本のインフレ率も数字としては小さくなっていく。とすると日銀も利上げはしづらく、利上げ停止のタイミングは2025年中にはあると思っています」

国内政治以外にも“落とし穴満載”の欧州経済が世界のリスクに?

2025年に向けた懸念点として欧州経済を挙げるのは、TBS経済部の佐藤祥太デスクです。欧州中央銀行(ECB)は12月に3会合連続となる利下げを決め、ユーロ圏の2025年の成長見通しを下方修正しています。

佐藤
「欧州経済で足を引っ張っているのはGDPの約25%を占めるドイツと約20%を占めるフランスです。ドイツは2023年に続き2024年もマイナス成長になり、「欧州の病人」の再来だと言われています」

前回ドイツが「病人」と呼ばれたのは1990年に東西ドイツが統一された後に経済が混乱した2000年代初頭でした。今回はロシアの天然ガス供給が途絶えたことによるエネルギー価格の急騰や物価上昇などが響き、独自動車大手のフォルクスワーゲンも経営不振です。

佐藤
「フランスも中央銀行が予測している2025年のGDPの成長率を1.2%から0.9%に下方修正しました。両国とも実は経済だけでなく政治でトラブルを抱えています。特にドイツは2月に連邦議会の選挙がありますが、それに先立つ州議会レベルでは右翼の政党がかなり躍進をしています」

「フランスはマクロン大統領が欧州議会での右派政党の躍進に直面してフランス議会解散に打って出ましたが、少数与党でうまくいかずに1年で首相が3回交代。組閣できずに立ち往生しています」

末廣さんはこの不安定な状況を招いた背景の1つには、FRBの金融政策やアメリカ政府の財政出動で世界中のお金がアメリカに吸い寄せられたことにあると言います。

「FRBがインフレを抑えるために利上げをして、ヨーロッパも通貨安のまま追随する形で利上げしましたが、経済には見合わないほどの利上げだった。ユーロ圏ではインフレは収まったものの景気が悪くなり、犠牲は大きかった」

ロシアのウクライナ侵攻で続く不安定な状況や、トランプ次期政権の外交政策も政情不安のただなかにある欧州を直撃しそうです。

播摩
「欧州も中国経済も多分悪い状況が続くでしょう。アメリカだけがいい状況が2025年も続くのかどうか。そのときに日本が欧州や中国経済の影響を受けないのか、利上げをする時間的な余裕があるかというと、かなりのクエスチョンですよね」

2025年も世界ではアメリカ経済とトランプ次期政権の動向、そして地政学的要素が市場を揺らすことになりそうです。

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