高校サッカー選手権で2連覇を狙う青森山田 それを阻むのは静岡学園か前橋育英か ハイレベルな注目校を紹介

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2024年12月28日 07:30  webスポルティーバ

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第103回全国高校サッカー選手権大会展望 前編

12月28日からスタートする全国高校サッカー選手権大会を、ユースサッカーを取材するふたりのライターに展望してもらった。青森山田、静岡学園、尚志、東福岡、前橋育英など、国内最高峰のプレミアリーグを戦うチームが多数集まった、トーナメント表の左側半分の注目チームを紹介する。

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【青森山田はチャレンジャーを自認】

――昨年度優勝の青森山田(青森県)の入ったブロックから教えていただきます。激戦区との声も聞かれ、強豪が揃った印象です。

森田 すごい組み合わせですよね。プレミアリーグに所属するチームが4つ(青森山田、静岡学園/静岡県、尚志/福島県、東福岡/福岡県)も固まるなんて。

 一方、こちらはともにプリンスリーグ所属ですが、阪南大高(大阪府)対新潟明訓(新潟県)もかなりの好カードで、阪南大高は優勝候補だと思います。3年前にいた鈴木章斗(現・湘南ベルマーレ)のような飛び抜けた選手はいないのですが、前線の選手は誰が試合に出てもおかしくないぐらい選手層が厚い。相手の特徴に応じて、自分たちの出場選手の特徴を押し出したサッカーができるのは、連戦を勝ち抜く上でも大きい気がします。

土屋 この組み合わせは"大物食い対決"と呼んでいて、阪南大高はインターハイの初戦で大津(熊本県)に勝ちましたし、新潟明訓も県予選の準決勝でインターハイ3位の帝京長岡に勝っています。

 新潟明訓は県予選を無失点で勝ち上がった堅守が売りで、プリンスリーグ北信越1部でも上位に食いこむぐらい、チーム力が高い。チームが自信を持っている守備が、県予選でより強固になったように感じます。攻撃も左のMF桑原壮汰(3年)が帝京長岡の守備を切り裂いていて、全国でも楽しみです。

森田 夏に坂本和也監督に話を聞くと「今年はしんどいと思っていたけど、自分たちに力がないと子どもらが理解しているから頑張れる」と言われていたのが印象的です。「史上最弱世代」と呼ばれた悔しさをバネに、全国大会に進んできました。そうした世代は強い。

土屋 前年王者の青森山田と高川学園(山口県)の一戦も白熱した展開になりそうです。12月に行なわれたプレミアリーグプレーオフで高川学園を見たのですが、ロングボールと中盤での攻防でガンバ大阪ユースを苦しめていました。右のMF松木汰駈斗(3年)が効果的なクロスを何本も上げていましたし、今年も伝統のセットプレーから点が取れる。結果的に敗れたものの、G大阪ユース相手に好ゲームができて、江本孝監督も「自信になる」と言われていました。

森田 青森山田としては、初戦で高川学園みたいなパワフルなチームとやるのは嫌ですよね。

――今年の青森山田はどんなチームなのでしょうか?

土屋 去年のレギュラーはキャプテンのDF小沼蒼珠(3年)とMF谷川勇獅(3年)ぐらいで、経験値のある選手が少なくシーズン序盤は苦しんでいました。ケガ人も多く、なかなか想定していたベストメンバーが組めなかったのですが、その分背番号「10番」代、「20番」代の選手が試合に出て活躍する流れができたのが、スタメンが固定されがちだった例年との違い。選手層は厚い気がします。

 それに昨年2冠を取っていますが、正木昌宣監督は「ディフェンディングチャンピオンだとはひと言も言っていない」と口にするほどチャレンジャー精神が強い。選手たちは「雑草魂だ」と口にし、「2024年の青森山田として日本一を目指すんだ」と意気込んでいます。

【シーズン後半に成長した好チームが揃う】

森田 このブロックで挙げたいのは静岡学園。青森山田同様、シーズン序盤は苦しみ、プレミアリーグWESTで5連敗もしたのですが、シーズン後半に入ってからはチーム力が上がりました。今年はケガ人が多く、様々な選手が起用された結果、選手層が厚くなり、守備強度も高まった。大津と戦ったプレミアリーグWESTはスタメンクラスの選手が半数近くいなくても、互角以上の試合展開に持ち込んでいました(1−2で敗戦)。川口修監督も「決勝で大津にリベンジするイメージができた」と手応えを口にしていました。

 川崎フロンターレ内定のDF野田裕人(3年)も、ケガで年間を通じて試合に出られなかったのですが、彼とは違う守備が強みのDF望月就王(3年)も台頭してきました。他のポジションでも違った個性を持った選手が揃っていて、調子や相手の特徴に応じた使い分けができるのは大きい。

土屋 初戦は昨年、PK戦で負けた広島国際学院(広島県)とのリベンジマッチなので、選手も燃えているはずです。

 東福岡と尚志は、1回戦とは思えない豪華な組み合わせですよね。東福岡はシーズンを通しての成長を感じます。DF大坪聖央(3年)、DF山禄涼平(3年)が組むセンターバックがいいし、GK後藤洸太(3年)もいい。

森田 伝統のサイド攻撃が注目されますが、今年は1年かけて磨いてきた守備が売りのチームで安定感を感じます。

土屋 尚志は今季苦しんで、プレミアリーグEASTから降格もしましたが、そのなかでも3バックと4バックを使い分けるなど、戦い方の幅が広がっていったように感じました。仲村浩二監督も策士なので、選手権が楽しみです。

森田 インターハイで見た際に印象的だったのは、アンカーに入るMF星慶次郎(3年)の存在。彼が判断よく最終ラインに落ちるため、3バックと4バックを臨機応変に使い分けることができる。最重要人物です。

――そのほかに注目チームは?

森田 今年のインターハイは県予選の準々決勝で敗退したのですが、高知(高知県)はFW門田翔平(3年)とFW松田翔空(2年)の2トップを筆頭にタレントが揃う好チーム。ボランチのMF市原大羅(3年)など、昨年ベスト8に進んだインターハイの経験者が多く残っているのも強みです。

土屋 長崎総科大附(長崎県)も好チーム。GKマガリェンス・アルナウド(3年)、MF宇土尊琉(3年)、FW坂本錠(3年)と、各ポイントにいい選手が揃っています。

【前橋育英vs米子北は注目カード】

――次のブロックに行きましょう。ここの注目はプレミアリーグ所属で、日本一の経験を持つ前橋育英(群馬県)でしょうか?

土屋 昨年からのスタメンが半数以上残っていたのですが、プレミアリーグEASTは開幕3連敗からのスタート。インターハイ予選も準決勝で負けて、連続出場が6でストップしました。ただ、負けを機にキャプテンのMF石井陽(3年)を中心に「自分たちの足元を見つめ直さければいけない」とネジを巻き直した結果、秋は公式戦で7連勝。プレミアリーグEASTも6位で終え、チームとしての自信をつかんだのではないでしょうか。

 FWオノノジュ慶吏(3年)とFW佐藤耕太(3年)が点を取れるようになりましたし、シーズン当初はBチームだったDF鈴木陽(3年)がセンターバックに入ってから、公式戦で負けなくなった。小柄ですがすごく戦えて、ボールも動かせる守備のキーマンです。

森田 米子北(鳥取県)と対戦する初戦は注目カード。米子北のキャプテンのFW鈴木颯人(3年)と前橋育英の石井は中学時代、前橋FCでチームメイトだったため、大舞台での再会に燃えていました。カギとなるのは、もうひとりの前橋FC出身選手であるMF柴野惺(3年)の存在です。インターハイでベスト4になりながらもプレミアリーグWESTの後期で苦しんだのは、中盤でボールを落ち着かせる彼がケガしたから。選手権に間に合うかわからなかったのですが、練習復帰して登録メンバーにも入ったため、彼のコンディションが戻れば、より面白い試合になるはずです。

土屋 今年のインターハイでベスト4に入ったチームの中で、唯一今回の選手権に出てくるチームなので、夏からの継続性にも期待したいです。

【スタイルを継続する魅力的なチーム】

森田 このブロックで推したいのは帝京大可児(岐阜県)です。仲井正剛監督が「今年の代はいい。経験値で言えば全国上位を目指さなければいけない」と自信をのぞかせる代で、エースのFW加藤隆成(3年)やキレのあるドリブルが売りのMF明石望来(3年)を筆頭に、前年からスタメンを張る選手の多さが強み。帝京大可児らしい、ボールを大事にしながら積極的にゴールを目指すサッカーに磨きがかかっています。

土屋 全国に出るとコンスタントにベスト16まで出てくるチームで、毎年いいチームを作ってくる印象です。

森田 スタイルを継続しているので、「帝京大可児のサッカーがやりたい」と力のある選手が集まってくるのが、このチームの強みなのかなと思います。

土屋 積み重ねによっていい選手が集まり、強くなるサイクルは堀越(東京都A)でも感じます。昨年の選手権でベスト4に入ったのは大きなトピックスですが、ボールと人が動くきれいなサッカーをみんなで作り上げていくスタイルとボトムアップに魅力を感じ、その前からいい選手は集まり始めていました。

 今年はインターハイ予選のベスト8で負けたのですが、DF森奏(3年)を筆頭に昨年の4バックがそのまま残っているのは強み。キャプテンのDF竹内利樹人(3年)はケガで離脱する期間が長かったのですが、結果的にチームの自主性が出た気がします。6月末の東京都1部リーグ以降は、東京都の公式戦で一度も負けていません。駒沢陸上競技場で2試合できるアドバンテージもあるので、期待しています。

森田 堀越と初戦で対戦する津工(三重県)も推したいチームです。2年前の選手権で成立学園(東京都)との開幕戦を経験してから選手の目線が変わり、全国大会に出て満足していたところから"全国に出て勝つんだ"となりました。片野典和監督が予選時に言われていたのは応援の質の変化で、選手が一生懸命応援するようになったとか。今年はスタメンのうち8人が2年生という若いチームですが、試合に出られない3年生がスタンドで頑張っているので、そうした部分にも注目してほしいですね。

土屋 今年もまた東京勢との対戦。相手は違いますが、リベンジに燃えてそうですね。予選の勝ち上がりを見ると、2度もPK戦で勝っているんですね。

森田 守備が堅く、GK中尾楓汰(3年)は184cmの高身長を生かしたセービングが売り。3バックの真ん中に入るDF山崎蒼葉(2年)もスピードが抜群で、対戦相手の監督が「彼みたいな選手が世代別代表に入らなければいけない」と絶賛するほど能力が高く、注目です。

――他に注目チームはありますか?

森田 愛工大名電(愛知県)も予選で見た際にインパクトの強かったチームで、アグレッシブにゴールを目指すサッカーが特徴です。ただロングボールを蹴るのではなく、技術の高い選手がゴールを目指したアクションを繰り返し、ボールを失ったら素早く切り替えて高い位置で奪い返す。相手にとっては相当嫌なチームだと思います。

土屋 このブロックは明誠(島根県)や龍谷富山(富山県)など初出場のチームや、久しぶりの選手権に出場するチームが揃っているので、どこが勝ち上がってくるのか楽しみです。

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