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米の卸売業を営むミツハシ(横浜市)が、旅行ガイドブック『地球の歩き方』と共同開発したおにぎりが好調だ。
“ご当地グルメ”をテーマに、これまで「北海道とうきびご飯」「家系ラーメンの〆ご飯 味濃いめ」「広島お好み焼きおにぎり」「四国 鯛めしおにぎり」(価格は150〜170円前後)の4種類を販売。定番にとどまらない“攻めた”グルメも織り交ぜて商品化している。
2024年6月から2カ月ごとに商品を入れ替えながら、関東を中心に約500店のスーパーマーケットで販売し、計画比の4割増で売れているという。
どのように人気商品を生み出しているのか。開発の舞台裏をミツハシ 炊飯事業本部 炊飯営業部 開発課の小谷田篤氏、地球の歩き方 観光マーケティング事業部 ソリューション室 室長代理の半田智志氏に聞いた。
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●両社の狙いがマッチして、コラボが実現
ミツハシが『地球の歩き方』とのコラボを企画した背景には、「米の消費量を増やしたい」狙いがある。米の1人当たりの消費量は1962年度をピークに減少傾向で、ピーク時は年間118.3キロだったのが2023年には50.9キロまで落ち込んでいる。
市場環境は厳しいが、米の喫食機会を増やしたいとご当地グルメをおにぎりにするアイデアを考案。旅行ガイドブックとしてのブランドや信頼を確立している『地球の歩き方』と連携することで、より手に取ってもらいやすいと考えたという。
早速、編集部に打診すると、二つ返事で実施が決定した。『地球の歩き方』の半田氏は「企画意図が当社の方針や思いにマッチした」とその理由を話す。
「当社は2022年5月から『地球の歩き方』のライセンスアウトを本格的に開始しており、ライセンス商品を通じて、消費者の日常生活に入り込んでいきたい思いがあります。日本人の主食であるお米でつくられる『おにぎり』は、日常に入り込むという観点でおもしろいなと。
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また、ご当地グルメをおにぎりで再現する企画も、『地球の歩き方』の国内シリーズを拡大していく当社の方針とも重なり、ご一緒したいと思いました」(半田氏)
●「王道」から「攻めたモノ」まで展開
商品開発にあたり、『地球の歩き方』の編集者が知り尽くした地域=ガイドブックを販売している地域のご当地グルメを扱うのが基本方針だ。国内版の発行はコロナ禍で始まった新事業で、今では累計発行部数が99万部(2024年10月時点)を超える大人気シリーズに成長している。
そもそも、スーパーで販売されているおにぎりの具材は「鮭」や「明太子」などベーシックなものが中心で、コンビニのようなユニークなメニューはあまり見かけない。そうした背景を踏まえ、本コラボでは王道だけでなく、“攻めた”グルメも織り交ぜている。
例えば、第2弾として販売した「家系ラーメンの〆ご飯 味濃いめ」は、「横浜市」のガイドブック発売に合わせて地球の歩き方編集部が発案。横浜発祥の「家系ラーメン」は麺を食べた後の締めとして、ご飯にスープをかけて食べるのが定番だという。その際、ニンニクを入れるなどアレンジを楽しむ人が多く、同商品でもニンニクの量を増やして、濃厚な味わいを再現した。
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第3弾の「広島お好み焼きおにぎり」は、広島出身の編集担当が本場の味を追求した一品。オタフクソース社が広島お好み焼き向けに開発した「オタフクお好みソース」を使用し、いか天入り天かすやそばを混ぜ込むなどして、広島お好み焼きの風味を再現した。
●累計販売数21万個超えの反響
こだわりの強さゆえ、開発は通常の倍以上の時間がかかるそうだが、その分、満足度の高い商品を世に送り出すことができていると小谷田氏。売れ行きは想定以上だという。
販売数は、約2カ月間の販売で「北海道とうきびご飯」(150円前後)が8.1万個、「家系ラーメンの〆ご飯 味濃いめ」(150円前後)が5.4万個、「広島お好み焼きおにぎり」(170円前後)が5.2万個となる。2024年12月から販売中の「四国 鯛めしおにぎり」(170円前後)は約2.7万個(12月25日時点)が売れており、累計は約21万4千個にのぼる。好調な理由を両社は、どう分析しているのか。
「まず、ミツハシさんの商品力が大きいと思います。その前提があり、私たちも遠慮せずに意見を伝えるなど互いに妥協のない商品づくりをしています。消費者にもそれが伝わっているのではないでしょうか」(地球の歩き方 半田氏)
「最も大きな要素は、『地球の歩き方』のブランド力だと思います。今回、通常のおにぎりと異なり、売り場で目を引くオリジナルのパッケージを採用しており、商品の品質が保証されている印象を与えられたことが購買意欲を高めたのだろうと。ただ、定番と攻めたものを比較すると後者のほうが売れ行きが鈍く、ここは難しさを感じています」(ミツハシ 小谷田氏)
全ての商品で計画値よりも良い売り上げとなっているが、味を想像しにくい「家系ラーメンの〆ご飯 味濃いめ」と「広島お好み焼きおにぎり」よりも、想像しやすい「北海道とうきびご飯」と「四国 鯛めしおにぎり」のほうが売れ行きが良いという。
●第5弾は栃木の「しもつかれ」を商品化
それでも、あえて攻めたご当地グルメを採用するのは、まだ知られていない料理を知ってもらう機会を提供したいためだと小谷田氏。2025年2月に販売予定の第5弾は、「さらに攻めている」と意気込む。
「第5弾は、栃木県のソウルフードである『しもつかれ』をおにぎりで再現します。鮭の頭や大豆、大根、ニンジンなどを酒粕で煮込んで作る料理で、もともとは2月の初午(はつうま)の日に食べられる行事食でした。一方で、独特な酸味と風味から大きく好き嫌いが分かれ、商品化にはハードルがありました」(ミツハシ 小谷田氏)
ネットで「しもつかれ」と検索してみると、「まずい」というワードが検索欄に並ぶ。栃木では学校給食で提供されるほど親しまれている郷土料理だというが、見た目やニオイへの苦手意識から食わず嫌いの人も少なくないとか。
こうした状況でも、地元住民にも納得してもらえる味を目指して試行錯誤を繰り返した結果、編集者も太鼓判を押す仕上がりに。酒粕の風味が広がり、「しもつかれ」が持つうまみが凝縮された商品が完成したという。
このチャレンジングな商品には、消費者からどのような声が届くのか。両社のコラボおにぎりは2025年4月以降も継続販売が決まっている。
(小林香織)
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