コロナ禍以降、外食の機会が減り、自宅でおいしい食事をとることを重視する人が増えました。なかでもお米をおいしく食べたいと考えている人は多く、「炊飯器」「土鍋」「羽釜」などと検索すると多数の炊飯関連商品が出てきます。
【画像】マグカップみたいな取っ手がついた土鍋「おまぐはん」(1万9800円〜)使い方、調理例
一方で、「土鍋や羽釜は炊くのが大変」「保存がしにくい」などのイメージから、なかなか手が出せない方も多いようです。しかし、このような「思い込み」にこそ、ビジネスチャンスは眠っているのです。
●「思い込み」を逆手に取った土鍋の開発
応援購入サイトMakuakeでこれまでの応援購入総額が1億円を超えている、取っ手がついた土鍋ごはん「おまぐはん」という商品があります。火加減の調整が必要なく、簡単に料亭風の炊き立てごはんができる優れものです。
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旅館や飲食店などで味わう機会も多い土鍋ごはん。炊飯器よりもお米がおいしく炊けるというイメージを持たれている方も多いでしょう。実際「おまぐはん」は、陶磁器の販売を手掛ける横鹿(長崎県佐世保市)代表取締役の横石浩成氏が、旅館に卸している土鍋を、自宅でも簡単に使えるようにしたいと考えたことがきっかけで開発されました。
これまでの土鍋は、「手間がかかっているからこそおいしくできる」という印象が強く、なかなか一般家庭には普及しませんでした。
そのため、「おまぐはん」のマグカップのような親しみのあるデザインと、火にかけるだけという手軽さで本格的な土鍋ごはんが楽しめるという画期的なアイデアに、多くの支持が集まりました。
●「手間をかけずに土鍋ご飯が食べたい」を実現したことがヒットにつながった
プロジェクトの応援コメントでも「私にぴったりの土鍋が見つかりました」「こういうのがあったらいいなと思っていました」などの声が多数寄せられています。調理の簡単さはもちろん、これまではあまりなかった0.7〜1合という手軽なサイズで、デザインもかわいらしいことから、高評価を得ているようです。
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「おまぐはん」が注目を集めたのには、多くの人が「土鍋ご飯を楽しみたい」と思いながら、「手間がかかる」と諦めていたことが背景にあります。それをいとも簡単に解決したことで、たくさんの人から支持を得ることができたのです。
新商品や新サービスを考える際には、今あるメリットを伸ばす、もしくはデメリットを軽減するという方向性で考えがちです。しかし、常識や思い込みにとらわれず、一見難しそうだと思われる要素を両立させること、つまり「トレード・オフ」ならぬ「トレード・オン」の考え方が重要です。実はヒットしている商品やサービスには、「AなのにB」といった通常なら成り立たないと思われている二つの要素を両立させたものが多いのです。
「両方を求めるなんてわがままだよな」と思ったところに、ヒットの種が隠れています。自分の心にある「わがまま」に気付いたら、それを何とか形にできないかと考えることが重要だといえるでしょう。
●著者プロフィール:朝倉亮
株式会社マクアケ キュレーション局 キュレーター
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鳥取県出身。それぞれ100年以上続く木工所と農業関連の企業を営む両親の元で生まれる。株式会社マクアケ入社後、キュレーターとして数多くのプロジェクトに携わる。
2021年10月より中四国拠点の責任者として、主に中四国地域のプロジェクトサポートを行う。
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