新しく職場に入ってきた人は、不安を抱えています。「自分はここでやっていけるのか?」「職場の人たちはどんな感じか?」「自分の力が通用するのか?」など、新しい会社に自分がどれだけ適応できるのか想像できず、縮こまってしまいます。
しかし、そういう不安を持っているということを、すでに職場になじんでしまった私たちは忘れがちです。早く戦力になってほしい、1日でも早く活躍できるようになってほしいと焦る気持ちが強くなってしまい、仕事の出来不出来にばかり目がいってしまいます。その気持ちは理解できますが、まずは相手も不安を持っているということを理解してあげるようにしましょう。
仮に新人が不安を抱えているとするならば、タイミングを見て新人の話を聞いてあげる機会を作ってみてはどうでしょう。相手の意見に耳を傾けることは、相手を尊重していることになるので、新人に安心感を与えることができます。ただ、注意してほしい点が1つあります。それは、抽象的な質問をしないということです。
大人相手に「何か不安なことありますか?」と聞いても「いえ、大丈夫です」と言われるので、
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・「新しい職場には慣れましたか?」
・「何かやりづらい点とかありますか?」
・「少し困っていることとか、あるいは『こうしたらもっとやりやすいのに』と思うことはありますか?」
など、具体的な質問をして相手の気持ちや考えていることを聞き出してみてください。向こうからはなかなか言いづらいことも、こちらから聞いてあげると話しやすくなります。
さらに、このような不安を抱えている新人が職場に適応するためには、「適度な自信」が必要になります。「適度な」とわざわざつけているのは、「過剰な」自信を持ってほしくないためです。
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職場によっては、せっかく採用できた新人を辞めさせたくないために、新人に過剰に気を遣っているケースも見られます。新人にダメ出しをせず、「いいよ、いいよ」とチヤホヤしてしまい、新人が「自分は仕事ができている」と勘違いをしてしまっていることもあります。特に、学歴が高い新人にその傾向は見られるかもしれません。このような「過剰な」自信ではなく、「適度な」自信を持てるよう、私たち教える側が手助けする必要があります。
そのために必要なのは、仕事を与えることです。
「適度な自信」は、仕事をやり遂げたという経験からしか生まれてきません。そのような達成感を得させるためにも、新人を手持ち無沙汰にせず、「仕事マップ」を通じて仕事経験を積む機会を作ってあげてください。
しかし、そうは言っても、新人の知識・技術レベルでは、与えられる仕事が少ないというのが難しい点でもあります。そこで有効なのが「雑用」です。
職場内の片付け、資料の整理、先輩の手伝い、朝一番に出社して鍵を開けておくなど、誰でもできる簡単な仕事を依頼します。ここでポイントなのが、「簡単な」仕事という点です。例えどんな雑用だったとしても、頼まれた仕事を成し遂げたという経験が蓄積されるということが大切だからです。中途採用の方にお願いするのは難しいかもしれませんが、学校を卒業したばかりの新人にはお願いしやすいでしょう。
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【お願いできそうな雑用リスト】
・書類の整理
・ゴミ捨て
・オフィスの掃除
・来客対応
・電話対応
・植物の水やり
・備品の補充
・発送物の手配
・飲み会の手配
ただ、最近の職場では派遣社員や契約社員がこういった雑務的な仕事をしていることも多いので、新人に与える雑用を探すのも難しいといったこともあるかもしれません。でも、雑用でもやることがあれば、新人の経験も増えますし、雑用を通じて学べることや、先輩たちとの接点が増えるメリットもあるので、積極的に取り組んでもらいましょう。
また、こういう雑用を新人自らが積極的に行うことで、自分の存在をアピールできるというメリットもあります。「誰かがやらなくてはいけない仕事」である雑用を、まだそれほど忙しくない新人が肩代わりしてくれることで、職場の他のメンバーの負担が減ることになります。それは新人の存在価値を上げることにつながるので、より職場に参加しやすくなるのです。
さらに、雑用は新人に仕事を教えるための「対価」であるという説もあります。忙しい先輩にこれまで培ってきた技術や経験を教えてもらうためには、それに見合った対価を提供するということです。新人が雑用をしてくれるのであれば、「仕方ねーなー。教えてやるか」という感じです。
以上のように、雑用には新人に「適度な自信」をつけさせ、新人の「存在価値」を上げ、「仕事を教えてもらう対価」の提供にもなるというさまざまなメリットがあるので、ぜひ新人ができる雑用を考えてみてください。
(関根雅泰)
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