旗手怜央が充実の今シーズン前半を振り返る「自分のプレーの善し悪しが結果を左右する」

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2024年12月29日 10:10  webスポルティーバ

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旗手怜央の欧州フットボール日記 第33回

旗手怜央は決勝戦のPK戦のキッカーも務め、今季ひとつ目のタイトル、スコティッシュリーグカップを制覇。CLでは6試合に出場して経験を積み、初ゴールも記録。充実のシーズン前半を振り返った。

第32回「旗手怜央が振り返る、鬼木達監督との思い出」>>

【足がつったリーグカップ決勝】

 今シーズンもひとつ目の星を手にした。

 セルティックに加入して4年目を迎えているが、リーグ3連覇を筆頭に、毎年タイトルを獲得する機会に恵まれている。

 今シーズン、最初に手にしたのはスコティッシュリーグカップだ。

 12月15日に行なわれた決勝戦の相手は、セルティックにとっての宿敵、レンジャーズ。3−3の同点で90分を終えた一戦は、延長戦でも決着がつかず、勝負はPK戦に委ねられた。

 個人的には、前半にあった決定機を決めきれなかったことは悔やまれるが、時間の経過とともに、自分のところで試合を落ち着かせられていたと思う。

 先発した自分は、120分を戦い終えたPK戦で、4人目のキッカーとしてペナルティースポットの前に立った。

 PK戦でキッカーを務めたのは何年ぶりだろうか。今、思い出すのは、U−22日本代表の一員として参加した2019年のトゥーロン国際大会だ。U−22ブラジル代表と対戦した決勝を1−1で終え、PK戦5人目のキッカーとして登場した僕は、GKにシュートを止められて、チームは準優勝に終わった。

 スコティッシュリーグカップ決勝の舞台で、それを思い出したわけではないけど、120分間を戦い終えたこともあって、PKを蹴る前には足がつりかけていた。

 軽く素振りしてみると、内転筋とふくらはぎに違和感があった。念のため、もう一度、足を振ってみると何ともなく、安堵してペナルティースポットへと向かった。

 慎重に慎重を重ねて、もう一度、確認しようかと思ったけど、それで足をつったら嫌だったので、これが最後のプレーだと考えて、思いきりシュートした。

 決めたあとに叫んだのは、半分が条件反射で、半分が演技だ。

 先攻を務めていたレンジャーズの4人目が、PKを失敗していたこともあって、自分が成功させて感情を爆発させれば、スタジアムも盛り上がるし、空気を引き寄せられると思った。特にカップ戦決勝などの一発勝負では、雰囲気も勝ち負けに影響する。5人目のキッカーを務める(前田)大然にいい形でつなぐためにも、効果的な行動だと思った。

 その大然がPKを決めて優勝が決まり、走りだそうとした瞬間、やはり限界に達していたのか、足をつった。駆け寄ってきてくれた(古橋)亨梧くんが足を伸ばしてくれて、少しだけ遅れて歓喜の輪に飛び込んだ。

 やっぱり、タイトルの景色も、味も、匂いも最高だ。時間にすれば、その喜びは一瞬だが、優勝は他の何にも代えがたい達成感がある。日ごろのトレーニング、チームでの練習も、個人としての練習も、さらには1日の食事、睡眠といったコンディション管理など、勝利に向けて徹底してきたことが報われたような達成感と充実感を与えてくれる。

 いつか選手を退く時、選手として残るのは獲得したタイトルの数や記録だ。タイトルは獲るか、獲らないかで大きく変わる。タイトルに大きいも小さいもない。セルティックで、またひとつ星を刻めたことを、選手として光栄に、誇りに思っている。

【CLでの経験は別格だった】

 2024年が過ぎようとしている今、ここまでを振り返れば、やはりUEFAチャンピオンズリーグ(CL)での経験は別格だった。

 大会形式が変わったリーグフェーズでは、ここまで6試合に出場している。昨季まで以上に、さまざまな国のチームと対戦して感じたのは、相手の戦い方だ。

 1−7と大敗を喫したドルトムントを筆頭に、ライプツィヒ、アタランタは力のあるチームだけに、対戦相手である僕らを見つつも、自分たちのサッカーを貫いてくる印象があった。一方でスロヴァン・ブラチスラヴァやクラブ・ブルージュ、ディナモ・ザグレブといったチームは、こちらの様子や出方を窺ってくる感覚があった。昨季までの自分たちが、強豪と対戦した時の雰囲気に似ていると表現すればいいだろうか。

 そのクラブ・ブルージュやディナモ・ザグレブと対戦して強く感じたのは、自分へのマークの厳しさだった。インサイドハーフを務める僕に対して、必ずと言っていいほどマンマークをつけて相手は対応してきた。あわよくばふたりで対応してマークを厳しくするなど、相手は僕から自由と時間を奪いにきた。それによるプレーの難しさは生じるが、相手から警戒される、もしくは恐れられる存在になれているとも思えた。

 マークがつくことによって、自分がプレーするスペースと、時間は限られてくる。そこで意識したのは、自分がボールを持っている時も、持っていない時も、相手を剥がすプレーだ。3−1で逆転勝利を飾ったライプツィヒ戦も、1−1で引き分けたクラブ・ブルージュ戦も、スコアレスドローに終わったディナモ・ザグレブ戦も、個人的にはもっと相手のマークをかいくぐり、決定的な仕事に絡みたかっただけに、その質は高めていかなければと感じている。

 ライプツィヒ戦で、CL初ゴールを記録できたことはうれしかった。初めてCLのピッチに立ったのは2022−23シーズンだった。そのシャフタール・ドネツク戦でゴールをマークしたが、試合中に相手のオウンゴールに訂正された苦い記憶もあった。

 たかが記録、されど記録。3シーズン目にしてようやく取れたゴールはうれしかった。

 得点シーンはこぼれ球に反応したものだが、自陣からパスを出したあとに、ゴール前まで走り込めたことは、自分の力だと思っている。

【自分のプレーの善し悪しが結果を左右する】

 また、今季はブレンダン・ロジャース監督から、守備に関して言われていることを強く意識している。相手のボールホルダーに対して、自分がプレスを掛けにいくことや、プレスバックすること、またセカンドボールを拾いにいくことを求められているため、そこは徹底している。一方で、攻撃については、チームとしての決まりや約束ごとはあるものの、多くを言われないのは、信頼の証だと受け取っている。

 その信頼は、出場時間にも比例してきている。シーズン当初は、60分から70分での交代が多かったが、11月2日に行なわれたスコティッシュリーグカップ準決勝のアバディーン戦(6−0)でフル出場したのを機に、最近は試合終盤までピッチにいることが多くなった。

 それに伴い自分のプレーや選択に変化も生まれている。

 第30回のコラムで、「FWに対して、走っていたのが見えていると感じてもらえるパスを出すこともある」と綴った。

 最近は、「リスクのあるパスはそれほど出さない」というプレーから、状況的に五分五分、もしくは多少のリスクがあるパスでも狙うようになった。それは結果的に失敗したとしても、ロジャース監督は、悪いプレーだと思わないのではないかという信頼を感じているからだ。

 おそらく「レオが通せなかったのであれば、仕方ない」と考えてくれるのではないか。そして「そこを通せればチャンスが生まれた」と、ポジティブに捉えてくれるのではないか。自分自身にとっても、その思考は、プレーにポジティブな効果を生んでいるように思う。

 また、周りを動かす、周りをコントロールするなど、試合の状況や展開に応じた指示も的確にできるようになってきた感覚もある。

 例えば、アンジェ・ポステコグルー監督が率いていた時のセルティックは、サイドバックが内側のポジションを取り、インサイドハーフである自分は外側に開くケースがあった。

 同様に今季のセルティックも、例えばスコティッシュリーグカップ決勝のレンジャーズ戦では、サイドバックが内側に入ってくることがあった。しかし、試合の状況や相手の配置を見て、それは効果的ではないと判断した。そのため、ハーフタイムにサイドバックの選手に「内側に入らないようにしよう」と指示を送った。

 それによって後半からは、自分が下がってボールを受けるようになり、サイドバックを効果的に押し上げ、さらにウイングの選手も高いポジションを取れるようになった。

 芽生えているのは、ピッチにいる自分の責任感と自覚だ。自分のプレーの善し悪しが結果を左右するし、結果に直結する。

 たとえマークが厳しくなろうとも、限られた時間とスペースで何ができるか。自分がさらに成長するために、次なる課題に目を向け続けている。

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